第19話 錬金術師は魔弾を放つ
「何者だてめぇ」
「ただの通りすがりだ」
再装填を済ませた私は、答えながら発砲しようとする。
ところが、その前に銃声が轟いた。
胸部が破裂し、痛みが背中へと突き抜けていく。
吐血した私はぐらついて倒れる。
その際に見た。
盗賊の一人が持つ拳銃が、硝煙を漂わせていた。
どうやら腰だめで撃たれたらしい。
盗賊達の笑い声が沸き上がる。
「イカれ野郎が。正義を気取りやがって」
「確かに正義気取りだ。否定はしない」
私は肘で地面を叩いて上体を起こすと、魔弾を込めた散弾銃を発砲する。
また数人が炎上した。
彼らは燃える魔弾の餌食となって力尽きていく。
驚く盗賊達は、反撃とばかりに銃を撃つ。
私は胴体に弾を食らいながら立ち上がった。
血に汚れた手で散弾銃の装填をする。
使うのはやはり燃える魔弾だ。
発砲を止めた盗賊達は、油断なく銃を構えている。
銃撃で倒れない私を見て忌々しそうにしていた。
「防弾装備か。面倒な奴だ」
「…………」
どうやら誤解されている。
被弾した私は出血しているが、それらは外套に染み込んでいる。
夜間の暗さで盗賊達には見えていないだろう。
私は銃撃の痛みを意識から外して問いかける。
「なぜあの三人を追っていた」
「奴隷にして売っ払うためだ。不用心に歩いていたからな」
「彼らに落ち度はないのだな」
「不用心なのが悪い。二度も言わせんな」
「そうか」
私は小さく頷くと、散弾銃を持ち上げた。
引き金にかかった指を動かそうとして、額に突き飛ばされるような衝撃を覚える。
膝に力が入らなくなり、後ろに仰け反って倒れた。
頭部の内容物が体外へ流れ出る感覚がある。
呼吸が止まり、目が裏返りそうになった。
またもや盗賊達の笑い声が聞こえてくる。
少し遠くに聞こえるのは、聴覚に異常が生じているのかもしれない。
嘲笑を受ける私は構わず両手を動かす。
散弾銃はまだ握っていた。
指も思い通りに動きそうだ。
確認作業をする中、盗賊の一人がここぞとばかりに拍手をした。
その手には硝煙を発する拳銃があった。
先ほども私を撃った男だ。
「馬鹿が! 調子に乗るからそうなる――」
遮るように銃声が響き渡り、盗賊の言葉が途切れる。
私は首を回して成果を確かめる。
盗賊の半笑いの顔が固まっていた。
きょとんとした目は、不思議そうに私を眺めている。
彼の顔面と首には無数の散弾が埋まっていた。
そこを中心に火炎が発生する。
拳銃持ちの盗賊はあっけなく崩れ落ちて絶命した。




