表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔弾の錬金術師は復讐に生きる ~亡き最愛の妻は吸血鬼だった~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/104

第13話 錬金術師は手がかりに従う

 空が白み始める寸前、私は街中にある豪邸のそばにいた。

 黒い鉄柵で敷居を囲む立派な建物。

 レドナリア商会の店長の住まいである。

 周知と比べても立派な佇まいで、さぞ金がかかっていることだろう。


 この場所については、スラム街の住人に硬貨を握られることで簡単に判明できた。

 数人の証言を取っているので間違いない。

 地域でも有名とのことであった。


 建物の陰に潜む私は、無言で辺りを確認する。

 見える範囲には誰もいなかった。


 次に耳を澄ませてみせる。

 付近の建物内には住人がいるも、こちらに気付いた様子はなかった。


 私の姿は半ば闇に溶けかかっている。

 現在は深夜と早朝の境目といった時間帯だ。

 もう少し経つと明るくなるが、まだ月明かりだけでは心許ないほどである。


 ただし吸血鬼の私は、まるで昼間のように見通せる。

 神経も研ぎ澄まされていた。

 すっかり食事を忘れて動き回っているというのに、疲れもまったく感じられない。

 むしろ絶好調と言える具合だろう。


(吸血鬼としての特性が強まっているのか?)


 焼け落ちた自宅で蘇った時より、肉体が強靭になっている気がする。

 吸血衝動を耐え抜いたことで、種族的な深度が進んだのか。

 私としては人間性を保つための行為だったのだが、皮肉な結果になってしまったものである。


 私は妻を愛していた。

 しかし、吸血鬼という種族そのものは嫌悪していた。


 昔、サラは人間を見下して餌にする一族の方針に抗議したらしい。

 その末に集落から追放されて、頼れる者もいないまま彷徨った末に行き倒れて、偶然にも私と出会った。

 彼女はそれ以来の仲である。


 吸血鬼の種族的な観点からすると、サラこそが異端なのだろう。

 種の本能と習性を否定する彼女は愚か者とされたそうだ。


 私個人の意見を言うなら、サラの考えには確かな善があると思う。

 だから強く共感したし、吸血鬼という種には否定的だった。

 彼らにも生存のためという正当性があるのだろうが、やはりどうにも受け入れがたかった。


(まさか仲間入りするとは思わなかったがな……)


 自嘲する私は、外套をめくって装備を確認する。

 腰と背中には散弾銃がくくられていた。

 通常のものと、銃口を切り詰めたものだ。


 それぞれ魔弾は装填していない。

 あれは貴重品で、いざという時まで温存したかった。

 当分は必要にならないだろう。


 スラム街の男から奪った拳銃とナイフは、胸とズボンのポケットに収めてある。

 予備の弾薬は少しだけだ。

 乱発はできないが、また誰かから奪えばいいだろう。


 私は今から商会の店長を襲撃し、遺骨に関する情報を引き出すつもりだった。

 ここで次の手がかりを見つけておきたい。

 あまり難航すると、手遅れになってしまう恐れもあった。


 問題の吸血衝動も今のところは感じられない。

 いや、僅かに燻っているかもしれない。

 気のせいだろうか。

 よく分からない。

 理性的な行動を心がけるしかないだろう。


 私は敷地内を改めて観察する。

 芝生の庭は誰も巡回はしていなかった。

 豪邸自体も消灯している。


(侵入者を知らせる装置くらいはあるかもしれないな)


 生憎と隠密技能は持ち合わせていない。

 何にしても強引に突破することになりそうだ。


「――行くか」


 私は拳銃を持って駆け出した。

 助走を付けて加速し、距離を見て跳躍する。

 鉄柵を飛び越えて芝生の庭に着地した。


 その瞬間、けたたましい音の警報が鳴り響く。

 やはり何らかの装置が仕掛けられていたらしい。

 予期していたので動揺はしない。


 私は豪邸に向かって走り出すと、カーテンの閉じた窓に向かって体当たりした。

 ガラスを割りながら室内に転がり込む。


 立ち上がったところで鋭い声が投げかけられた。


「誰だ!」


 吹き抜けとなった二階の踊り場に、寝巻きを着た中年の男がいる。

 驚愕の表情でこちらを見ていた。

 彼が商会の店長だろう。


 私を目にした彼は、なぜか室内の奥へ逃げ出そうとする。

 その前に散弾銃を発砲した。

 銃撃が踊り場の策を粉砕し、店長の進路上に突き刺さった。

 あと二歩か三歩でもずれていれば、胴体が引き裂かれていただろう。


「ひいっ」


 店長が凍り付いた。

 そして、錆び付いたように、ゆっくりと首を回して私を見る。


 私は散弾銃を下ろさずに告げた。


「少し話がある。時間をくれないか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ