第10話 錬金術師は本能に襲われる
浮浪者や犯罪者らしき者達が、私に奇異の視線を向けてくる。
見慣れない人間に興味を抱いているのだろう。
半面、こちらに無関心な者も少なくなかった。
俯きがちに歩みを進めるうちに、ことん、と音がした。
何か硬い物が地面に落ちたらしい。
見れば潰れた弾丸が転がっている。
私の体内からせり出したようだ。
全身が血だらけなのは、あちこちを撃たれたからである。
先ほどから痺れのような痛みを感じていた。
歩くたびに強まるので気になるが、悶絶するほどではない。
人間ならば間違いなく致命傷であるも、私は自分が死なないことを直感的に確信していた。
体内を抉る弾丸を指で摘出しながら進んでいく。
(ひとまず収穫があって良かったな。一歩前進だ)
レドナリア商会の店長は、遺骨を奪った傭兵と接触していた。
店には不在で、自宅の場所を聞きそびれたが、それくらいはすぐに特定できる。
商会の店長をやっているのだから、さぞ良い暮らしをしているに違いない。
この街の住人に訊けば、簡単に判明するだろう。
店長は傭兵達の行き先を知っている。
まずはそれを明らかにしたい。
傭兵達が遺骨を所持しているはずだった。
彼らの依頼主に届けられる前に奪還したいが、おそらく間に合わない。
とにかく行方を明らかにするのが先決だった。
今後について考えを巡らせていると、進路に三人の男達が立ちはだかってきた。
商会の警備員ではない。
薄汚れた衣服で粗暴な顔つきをしており、手にはそれぞれナイフや拳銃を握っていた。
男の一人が下卑た調子で話しかけてくる。
「レドナリア商会で強盗をしたな。知っているぞ。手に入れた金を寄越せ」
「何も奪っていない」
私が即座に答えると、別の一人が激昂した。
「嘘をつくな! そんなわけねぇだろうが! さっさと出さねぇと、只じゃ済まさねぇからな……」
三人の男達は暴力の気配を滲ませる。
言葉だけの脅しではなく、本当に実行するつもりだろう。
次の私の答え次第で動き出すに違いない。
(どうしたものか)
出方を迷っていると、突如として心臓が大きく脈動した。
鼓動が速まり、それに伴って呼吸も浅くなる。
「な、に――っ!?」
驚愕した私は、しかし目眩を覚えて膝をつく。
口端から唾液が垂れるのを止められず、堪らず地面を睨み付けた。
歪む視界の中、頭の中で男達の声が反響していた。




