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中編

 鳥のさえずりに目を覚ますと、栗毛色のサラサラとした少年が目に入る。指でつつけばプニプニの頬、長いまつ毛、綺麗な形をした唇、少年なのに品のあるその肢体に、わたしはほうっとため息をついた。

 

 モテたいのに少年、添い寝してくれてるのは少年、付き従うと誓ってくれたのは手が出せない範囲のショタ。くそうと思いながらほっぺをプニプニしてると、リクはやっと起きてくれた。


「おはようございます、ミナ様」


 茶色い瞳と目が合って、ほにゃりと、微笑まれる。


「おはよ、リク。すこやかな朝ね」


 リクはわたしの胸を見て、プニプニと触ってきた。

 しばらく堪能したあと、じっと自分の手のひらを見つめてから抱き着いてきた。


「……ここは極楽という言葉がふさわしいでしょうか」

「へ?」

「極楽、極楽――プニプニは気持ちが良いのですね。知らなかった極楽がここにある……」


 わたしの胸に顔をうずめて幸せそうにするリクに、いい加減にしろとほっぺをつねると痛そうにして離れてくれた。


「……お忘れかもしれないので再度言います。昨夜は周辺にマイナス解放したじゃないですか。ミナ様に経験値がどれくらい入ったか確認してみます?」

「ねぇ、それどうやって見るの?」

「【ステータス解放】しますね……腕力・魔力・体力・知力・脚力・魅力がそれぞれに1。経験値500。約10体ほどの野生動物が罠にかかったみたいですね」


 視線を下に向け、くいっと指をリクが上げると黒い何かが持ち上がった。大から小まで肉食動物らしきものが多かった。これだけのものが周辺に居たとしたら、地上でテント張って寝なくて良かったなと心の底から思う。


「ねぇリク。わたしステータス1しかないんだけど、これに経験値使っていくほうがいい?」

「いまは魔法の解放が先かと思います」

「なぜなの?」

「使える魔法が複数あると、それをミナ様とわたしが使えるからです。ステータスだと上限があり、それを上回る相手に襲われると手も足も出せません。その点、魔法なら不測の事態に対処できます。ミナ様が持ちうる魔法は、初歩的なモノから禁断魔法まで幅広いので」


 ちなみに、マイナス解放は禁断魔法に入るらしい。

 わたし大丈夫かと身震いした。


「でもさー、野生動物から逃げるときとかヤバかったじゃん?わたし、逆に食べられそうになったんだけど」

「わたしがミナ様を抱き上げて移動しますので、不安要素は皆無かと……ではマイナス解放の解除を行いますね」


 ハンモックの上でリクにお姫様だっこされ、あっという間に地上に降りた。たしかにこれでは、リクにお世話になった方がよさそうだ。


「リク。マグナの世界について教えてくれる?」

「シールドマグナの世界では女神が原始の管理者でしたが、もう一人の管理者を女神がお創りになられたのがルドルグ様だとお聞きしておりますね」


 異空間からパイナップルが出てきた。硬い外側をリクが器用にそぎ取ると、ドーナツ形にしてお皿に持ってくれた。これの出元がうちの冷蔵庫からだとすると忍びない。いつかは母に出世払いしなければ。


「むぐむぐ、おいしー」


 ヨーグルトが出てきたので、リクがそれの使用をどうしようかと悩んでいると、わたしがパイナップルにどばっとかけてやった。甘味が加わったので美味しさがパワーアップした気がする。お皿に盛り、フォークでつついて二人で食べた。そういえば、リクって、人間か。食べても大丈夫なのか聞いてみると、食べなくも支障はないらしい。ただ、わたしに合わせて食べているみたいだ。


「いつかは、ご馳走を食べさせてくださいね」

「ん?」

「……なんでもありません」


 ギュルルル……あ、お腹痛い。食べたら出るのは自然現象だけれどさ。


「あの、あのさ、リク。ト、ト、トイレとかどーしたらいーの」


 現代人なのに外でしろって言われたら恥ずかしさで死ねるかも


「トイレ解放で異空間を創れますよ」

「マジで!」

「わたしが創りましょうか?」

「待って、わたしが創って、リクが入ってみてちょーだい!見えるか見えないか死活問題、ここ大事!」


 経験値を使ってトイレ解放すると、神聖な光が降り注ぎ、視界いっぱいに溢れる。目を開けると、工事現場にありそうな簡易トイレがそこにはあった。


「あんなに神々しかったのに簡易トイレ……この際、見えないなら何でもいいか。さぁ、行ってリク!」

「仰せのままに、ミナ様」


 ノブを手に取り、時計回りにひねるとそこには見慣れた洋式のトイレがあった。


「ひゃ~~♪やったやったぁ♪トイレトイレ♪あ、トイレットぺーパーが」

「経験値1につき1つを支払う形となります」

「何気に世知辛い……じゃ、じゃあ、リクそこで用を足してみてくれない?あ、洗浄先はどこなのかな」

「ミナ様のお家にある、下水処理場に繋がるようにしております」

「……あんまりファンタジーを感じないね」

「経験値10足すと、流したものは瞬時に消え去る解放となりますが。ちなみにトイレ解放はこのあと何度も使用できます」

「けっこうサービス良いんだね」

「お風呂解放もおススメします。簡易トイレとセットで合体させると、経験値100ほど無くなりますが」

「持ってけドロボー!」

「仰せのままに、ミナ様」


【トイレ、お風呂合体 解放】


 これがあれば異世界来ても怖くは無さそうだ。 

 リクが用を足してる間に、わたしは大きな建物をグルグル回ってみた。使用してるとこや音さえも、見聞することはない。これは良いモノゲットしたぜと、ホクホクした。


「リク、音姫も付けて~~」

「了解です。経験値1使います」

「ありがと!」


 念には念をね!











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