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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

空を飛んでみようと思った俺は屋上から一歩を踏み出した。

作者: 黒糖

この話には少し鬱やホラー要素があります。

苦手な方はご注意下さい。

その日は朝から散々だった。


・仕事でミスして叱られる

・車が突っ込んできて避けたら足を挫く

・犬にすごく吠えられて噛まれそうになる

・なぜか家の前で狸が死んでいる

etc……


元々運がいいほうではなかったが、さすがにこれだけ続くと堪えた。

こんなこといつでも起こると人はいうだろう。

自分でもネガティブな思考の持ち主だと思う。


そんなわけで人生が嫌になった俺はどうせなら最後に空を飛んでみようと思い、ちょっとそこのコンビニに行く感覚で屋上にきた。

下を見ると真下は人が通らないようなスペースだから誰もいないが、少し離れた所では人が小さく見えた。

思わず某ジ◯リの大佐の台詞を言いたくなるくらいには。


ボーっと道行く人を眺めていたときにふと隣を見るといつの間にか女性が俺の横に立っていた。

全然気がつかなかったので驚きすぎてそのまま落ちるかと思った。

自分から飛ぶのはいいけど、突然落ちるのはさすがに嫌だ。


「こんなところで何をしてるんですか?」


いつもだったらコミュ障の俺は絶対に話しかけたりしないが、テンションがおかしくなっているのか思わず話しかけていた。

俺こそこんなところで何をしているんだって話だが。


女性は俺が話しかけたことに驚いた顔をしたが、少しするとポツリと話始めた。


どうやら彼女も俺と同じように色々と嫌なことがあってここに来たらしい。

しばらく話しているうちに随分と暗くなっていたので俺は彼女に別れを告げその日は家に帰ることにした。


次の日もやっぱりたいして良いことなく一日を過ごした俺は昨日の彼女のことが気になり、仕事が終わったあと同じ屋上に向かった。

そこにはすでに彼女がいて、俺たちはお互いの今まで辛かったことなどを時がたつのも忘れて話した。


そんなやりとりが数日続くうちに俺はいつしか彼女に会うために屋上へ通うようになっていた。

そしていつものように彼女に会った日、俺は意を決して自分の想いを彼女に伝えた。


「俺は君と話したお陰でもうここから飛びたいだなんて思わなくなった。そしてこんな俺の話を聞いてくれた君のことを好きになったんだ」


彼女は俺の言葉を聞いて初めて会った日のように驚いた顔をした。

しばらくすると彼女の頬に涙が伝った。


「やっぱりこんな俺じゃダメかな?」


すると彼女は何度も首を横にふった。


「違うの。私も貴方と一緒にいるのは楽しいし、貴方の気持ちはすごく嬉しかった。でもその気持ちには答えられない…だって」


そこで言葉を止めるとフワリと宙に浮かんだ。


「だって私はもう死んでいるんだもの」


そういうと顔を覆って泣きながら語りだした。


「ずっと一人でいるのがつらくて、初めは貴方を道連れにしようと思った。でも貴方は毎日ここにきて話しかけてくれた。貴方と話すことが私の楽しみになっていたの。どうして生きている内に出会えなかったんだろう…」


泣く彼女に俺は伝えた。


「俺は例え君が生きていなくても君を愛しているよ。だって俺は()()()に救われたんだから」


そう言って彼女の手をとった。

幽霊だから触れないかと思ったが触れることはできた。

彼女の手は氷よりも冷たく、生きていないのだと実感した。


「…その気持ちはすごく嬉しいわ。でもやっぱり貴方は生きている人と結ばれるべきよ。だって貴方はこんなに素敵な人なんだから。私の分まで貴方は生きて」


そういって悲しそうな笑顔を浮かべた。


俺は彼女の言葉に少しだけ考えた。

だが答えはすぐに出た。

いや、考えるまでもなかった。


「どんな形でも俺は君と一緒にいたいよ」


それだけ伝えると俺は彼女の手を取り、この屋上から新たな一歩を踏み出した。

彼がどっちの意味で一歩を踏み出したのかは読者の皆様の想像にお任せします。

でもきっと彼女と一緒ならどちらを選んだとしても幸せなのです。


※誰かこの小説のジャンルが何になるか教えて下さい…。


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