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キラメキDaughters(ドーターズ)  作者: 千賢光太郎
3話:夢からいきなり現実に戻されたら、運気が落ちてひどい目にあった
9/55

いきなり現実に戻された。ツキが落ちて苦しい

語り手は明日谷大和君で、一人称は「俺」です。

人前だと「僕」に変わります。家族の前では「俺」です。

ではごゆるりと楽しい時間を味わってください。

挿絵(By みてみん)


「やまにぃ、朝だよ」


目を覚ますと、エプロン姿の美鈴が立っていた。髪の毛を二つに縛り、ぱっちりした瞳。熟したリンゴのような頬、太陽を反射する白い歯、水玉模様の「あめあ~め」ブランドTシャツと、フリルが付いたピンクのスカート。小学校6年生に入り、ブラジャーを着用した。高校1年生の姉より胸が大きい。


「やまにぃ、どこ見ているのよ。おねーちゃん。やまにぃがね、私のおっぱ……」


時計を見ると、午前7時だった。


「由良、由良はどこだ」

「由良って誰? もしかして彼女ができたの?」

「あ、あ、違う」


口の中がねばねばした唾液に満たされて気持ち悪い。体も重たく感じる。


「早く着替えて、朝ご飯を食べな。遅刻するよ」

「うん。ありがとう」


俺は美鈴の頭をなでた後、自分の頭を押さえた。朝食をとるため、居間につく。姉はテレビを見ていた。ある男性議員の女性差別発言を取り上げていた。


――子供を産まないメスは女としての資格すらない。


「本当、ひどい議員。大和、あんたもあんな発言をしたらだめだよ」

「わかっているよ、お姉ちゃん。そういえば夢の中で、金髪の女から男は死ねって言われた」


あれ、死ねじゃなくて消えろだったっけ。まあいいや。どっちも同じ意味だし。俺がため息交じりに言うと、姉と美鈴はじいっと見る。


「だったら死なないよって言いなさい」

「やまにぃ、もしかしてショックを受けているの?」


女って生き物は……いいや、今日は早く学校へ行こう。自転車に乗る。


「大和、ヘルメットを忘れている」

「あ、ああ」


姉はママチャリに乗った。美鈴は歩く。


「やまにぃ、どうしたの、具合でも悪いの?」

「いや、違うんだ」

「もしかして由良って人に何かあったの?」


ごくりとつばを飲み込む。


「由良ってあの子だっけ? ほら、スーパーであんたが手を振った」

「あの子は須田愛良ちゃん、由良は違うんだ、お、俺の最近できた友達」


二人がじいっと俺を見る。外は晴れているのに、心の中は濃霧だ。


「もういいだろ」


俺は二人に手を振り、立って学校まで漕いだ。10分後、学校にたどり着く。


「おはよう、大和」


同じく自転車を乗っていた風間広が、俺の肩を叩く。


「おはよう、いい天気だね」


俺はうなずいた。太陽が広を照らす。自転車をこいで汗ばんでいるのに、体はまだ重たい。


「大和、俺さ、来週ぽえぽえ7のライブに行くんだ」

「嘘、僕も行きたい」

「当日券を買うしかないよ。予約はもう完売したし」


ぽえぽえ7(セブン)とは7人組のアイドルユニットで、先月オリコンシングルランキングで2位をとった。ほんわかした雰囲気を売りとしており、彼女たちが歌う曲は癒される。


「いいな、僕にも教えてほしかった」


二人でともに歩きながら、教室にたどり着いた。他の友達にも声をかける俺たち。


「悪い、教えようと思ったんだけど、チケット即売した後だからさ。当日券があればいいけれど、みんな押し寄せて来るからなあ。取れるかどうか……」

「広君もぽえぽえ7のチケットが当たったの?」


愛良ちゃんが広に声をかける。俺は彼女に顔を向ける。


「よくとれたね、愛良ちゃん」

「大二郎に取ってもらったの」

「大二郎って?」


口から勝手に言葉が出た。


「わ、私の幼馴染だよ」

「愛良、大二郎君ってまさか、背が高くて坊主頭のかっこいい人?」


愛良ちゃんの友達、名前は保科由美(ほしなゆみ)が尋ねる。


「そうだよ。大二郎ったらぽえぽえ7中毒でさ、二人分取れたから、一緒に行かないかって誘われたの。ぽえぽえ7は嫌いなアイドルじゃないから、行きたいなって言って、彼がとってくれたんだ」


へえ~と由美がつぶやく。もう一人の友達が言った。


「私はあまり好きじゃない、特にあまったるいところが」

「それがいいんだよ、英子。ああ、早く当日にならないかなあ」


幼馴染の大二郎君と一緒にいる――。

俺の中で焦りと怒りの炎が音を立てて燃える。頼む、収まってくれ。


「大和、落ち着けよ」


広が俺を見る。


「広、じっと見つめられても困るよ」

「悪い、お前の顔が青ざめて、焦っているのと具合が悪そうに見えたからさ。倒れそうになったら迷わず保健室へ行けよ」


俺は笑顔を作ってうなずいた。


「英子、ぽえぽえ7はね~」


心が重たい。愛良ちゃんが激しく喜ぶ姿を見るにつれ、自分だけが取り残された気持ちだ。

青春の一コマです。

おや、アルムの世界では激しい鳴き声が聞こえます。

とんでもないことになっているそうですよ。

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