最後のミッション:いざ、告白
おはようございます。
語り手は明日谷大和君、一人称は「俺」ですが……
今度こそ、影は浄化した。何者だったのか、私たちにはわからない。わかっても重大な問題ではない。私は変身を解いて、俺に戻る。愛良ちゃんが目を開けた。
「愛良ちゃん」
「大和君、ここは?」
「ここは夢の世界ですよ、愛良」
愛良ちゃんは自分そっくりの愛良に対し、ただ口を閉じてみている。
「すぐお別れになりますけれど、あなたを陰から支えてよかったと思います」
「あ、あなたですか。私がピンチな時に声をかけてくださったのは」
「ええ、そしてこちらにいる由良」
由良は手を振る。
「お姉ちゃんと違う」
「君のお姉ちゃん、確かに、私に似ているもんねえ。あ、でも君を守っているんだからね、後はそこにいる大和君も」
由良が俺を指さす。
「や、大和君」
「あ、愛良ちゃん……」
俺たちの間に温かい風が流れ込む。汗をかく、僕も、愛良ちゃんも。由良が俺に抱き着こうとするが、愛良に止められた。
「大和君、あ、あのね。私、何かに乗っ取られながらも、ずっと聞いていたよ。大和君が怒って、私を呼んでいた」
「愛良ちゃんには怒っていないよ」
「わかってるよ。大和君、みんな、ありがとう」
愛良ちゃんが僕に抱き着いた。顔が真っ赤だ。ものすごく震えている。熱い。言いなさい、言うんだ。カナセから馬鹿にされるぞ。
「あ、愛良ちゃん、お、僕は」
好きだと、言え。
「大和君、わ、私は」
あ、愛良ちゃん? 震えている、もしかして……。
「「好き」」
痛みが取れた、気持ちが大きく跳ね上がり、花火がなった。僕は、とうとう告白したんだ!
「愛良、やったね、とうとう告白できたね」
「これで遠慮なく、大和様とお付き合いができますわ」
由良に愛良が、愛良ちゃんに抱き着いた。わさわさと後ろから音がする。振り向くとマナテにカナセ、なぜか姉に美鈴までいた。
「やるじゃん、大和。みんなドキドキしてみていたのよ」
「姉ちゃん、美鈴、どうしてここに」
「私が連れてきたのです」
し、士鶴姫が忍び姿でいらっしゃる。
「この環境を解決するために、留奈さんに美鈴ちゃんにも手伝ってもらいました」
「大和さん、これで私も堂々と告白できますわ、大好きです」
マナテがくっつく。
「マナテ、須田愛良がいる前でやめろ、そ、それに大和ごときをみんなが好きになるなんて、う、浮気するだろ」
「かわいいこというんだね、カナセ」
美鈴がカナセのわき腹を軽くつっついた。
「ぼ、僕はかわいいことをいっているんじゃない。現実を言っているんだ。ったくみんなして大和に甘い考えを持ちすぎだ。こいつを浮気野郎にしたいのか? 僕は見たくないぞ、あっちこっちにうかうかするこいつの顔など」
カナセは僕をにらみ、頬をつねる。顔が桃色だ。
「な、ならないよ」
「今はそうでも、将来はわからないだろ。せっかくぼ、僕の中で好感度は高くなったのに、下がっちゃったよ」
カナセは親指と薬指の間を広げた。
「カナ君、まさかあんた、大和を好きなの?」
姉が言うと、彼女の顔が真っ赤に染まり、固まった。
「とりあえず、まずは美術館前に戻しましょう。待っている人もいますし」
姫がおっしゃると、由良たちはうなずき、僕と愛良ちゃんを元の世界へ戻した。手をつないでいた。
「お前ら……ふう、よかった。戻ってこれたんだな」
広が焦った顔を浮かべ、目の前に立っていた。
「広、お前、大丈夫だったか?」
「俺は大丈夫だよ、お前と愛良ちゃんが絵の中に吸い込まれたときは驚いて、色々やったんだけどな……まあ、戻ってこれてよかったよ。後、お前ら付き合ったんだな」
広が笑う。僕らは手を握ったままだ。お互い、離そうと全く思わない。広が深く頭を下げる。
「ど、どうしたんだよ、頭を下げて」
「お前らには本当にありがとうと、英ちゃんが言ってさ」
「英ちゃんって英子? どうして?」
広は頭を上げる。
「俺にもわからない。英ちゃんは大和と愛良ちゃんが付き合うの、嫌だったみたいだけどな。でも付き合ってもらわないと、英ちゃんにとって良くないことが起きるらしいんだと。俺にもわからないけどね」
広は俺たちに背を向けた。
「じゃあ、俺もちょっと用事ができたから帰るわ。デートの邪魔をする奴は誰もいないからさ」
広は走って帰った。俺と愛良ちゃんは互いの目を見る。恥ずかしい。
「愛良ちゃん」
「大和君……」
後ろの絵はにこっと微笑んでいた。
お読みいただきありがとうございます。
明日で一部最終回となる予定です。
告白って、命を使いますよね。