惚れている子が異世界のお姫さまだって?
お読みいただきありがとうございます。
大和君の一人称は「俺」で、
人前だt「僕」に変わります。
では今日もお楽しみくださいませ。
愛良ちゃんが白いドレスに身を包み、眠っている。
「彼女がどうしてここに」
「悪い魔女によってお花に閉じ込められたの。だから彼女を起こすために、お花を咲かせたうえでキスが必要なんだ。キスは私がやる。大和君を他の女の子に渡したくないもん」
由良が鼻息を荒げ、俺を見下ろす。俺は愛良ちゃんの唇を由良に取られたくないと強く考えた。
「いやいや、女の子が女の子にキスをするって、お、おかしいでしょ」
「そんなことありませんよ」
マナテがカナセの頬にキスをし、下半身をさすった。棒のようなものをつかむしぐさに、カナセの顔が少しずつたるむ。
「大和君。お姫様は私がするの。大和君は私を支える。決してお姫様とキスをしない。いいね。大和君とキスをしていいのは私だけなんだから」
「勝手に決められても」
由良は俺の手を握った。
「マナカナ、魔法を唱えて」
「「うん」」
双子は声を合わせて扉を作った。青白く輝く空間が現れる。
「さ、行くよ、大和君」
俺と由良、その後についてきた双子たちは真っ白な部屋にいた。10メートル先に真っ黒なベッドがあり、両手をおなかに当てて寝ている一人の女性。愛良ちゃんそっくりの女の子だ。由良が近づくと、彼女は小刻みに揺れた。由良が愛良ちゃんの前に立つ。見下ろしながら、膝立ちをする。
「ちょっと、大和君」
このままだと、由良が愛良ちゃんにキスをしてしまう。俺は由良の手を後ろからつかんだ。
「ご、ごめん。でも、やっぱりだめだ。由良がキスをしたらだめだ」
由良はつーんとした表情になり、大の字になって、
「大和君にはこんな女と絶対にキスをさせないよ」
「由良、お、女の子が女の子にキスをするなんておかしい。それにお、おとぎ話では男が女にキスをしたら、お姫様が目覚めるものだ」
俺は由良をわきに置き、愛良ちゃんの口を見る。どうした体、体、動いてくれ。どうして体よ、お前は動かないのだ。動いてくれ。情けない。これでもお前は男か。
「マナカナ、大和君を縛って」
双子は俺を目に見えない縄で縛った。
「王子様がいるのに、女とキスをするのは嫌」
愛良ちゃんそっくりのお姫様が目を開けた。由良をにらんでいる。由良もお姫様をにらみ返した。お姫様は願う。
「さあ大和様、私と誓いのキスを」
「だーめ、大和君はすでに私としたんだから」
「なんですって、私は大和様をずっと待っていましたのよ」
お姫様が俺に近づこうとするも、由良が立ちふさがる。
「二人とも」
「愛良ったら、悪ふざけが過ぎるよ」
「ええ、あの二人、とっても仲が良いのですよ。愛良さんが由良さんと大和さんをからかうために、あのようなことをしたのですわ」
事情が呑み込めない。由良とお姫様はお互いの頬をつね、ポカスカ音を立てて取っ組み合いのけんかを始めた。俺はただ、黙ってみていた。止めたくても止められない。本能が叫んでいる。今、入ったら確実にこの世からいなくなると。
1時間後――。由良と愛良は俺の腕にしがみついている。両手に花。お、女の子に囲まれるって、実際に味わうといいかも。左右から激しい火花が散っている。どうにかしてほしい。
「由良、どうして俺を呼んだんだ」
「呼ばないと、スピカに行けないもん。それより愛良、何ふざけたことやっているのさ」
「大和様とキスをしたかったの。大和様、どうぞ」
「だめーーーーっ」
愛良ちゃんが俺の唇にキスしようとしたら、由良が手を広げて守っている。誰か笛を鳴らさないと、試合は終了しない。二人とも、あきらめていいんだよ。
「愛良ちゃん、君は一体。そ、それに名前は愛良ちゃんでいいの? 僕、何がなんだかわけがわからない」
愛良ちゃんは俺から離れた。指を鳴らすと、由良と色違いの衣装を着た。
「改めてまして、私は愛良。由良とともにアイドル活動をやっています。大和様、あなたのお姿は須田愛良を通し、見ておりました」
「あ、愛良ちゃんとどんな関係なの?」
俺が一歩前に出ると、由良がぎゅっと引き留める。
「私は愛良にとって守護霊みたいなものです。外見は同じでも内面は違います。大和様、早く須田愛良に告白をなさってください。でないと、ほかの男性に取られてしまいます」
他の男性――という言葉に、頬から汗が流れ落ちる。
「由良、いくらあなたが大和様に好意を抱いても無駄。なぜなら大和様は須田愛良、いえ、私が大好きなのですから」
「そんなことないもん、大和君は私のことが大好きだもん。私は大和君と結婚をする、いや、しているんだもん!」
け、結婚って。愛良が「ほほほ」小声で笑った後、由良を指さした。
「由良、夢の世界なら成り立つよ。しかし大和様は夢でなく、現実の世界からお越しいただいたお方。現実はきちんと『段階』を踏まなければ、結婚に至らない。夢だから『お付き合いの過程』を省略できる」
愛良が再び俺の腕を握った。
「大和様、今から子作りをなさいましょう」
「やだ、大和君は私のもの。愛良なんかに渡さない」
「私も混ぜてください」
マナテが後ろから俺を抱きしめた。む、胸が大きくて背中がしびれる。でも、ぎゅううっとしめつけてい、息ができない。
「カナセ、た、助けて」
俺の口から言葉が漏れた。
お読みいただきありがとうございます。
夢は現実にある「面倒な展開」を省いて、
いきなりゴールできますよね。
現実は「面倒な展開・試行錯誤」があるから、
いろいろ気づき、成長しているなあと実感できます。
今、辛いなあ~思うことも成長している証です。
次は愛良が変身をするようです。