呪われた王様と洞窟探検(クイズつき)
お読みいただきありがとうございます。
語り手の明日谷大和君、一人称は「俺」で、人前だと「僕」です。
前回はひどい話でした……
王様は何度も頭を下げている。ゴジラもシンから驚くマナテと美鈴の笑顔。カナセが住宅を壊すように歩いてきた。
「カナセ、無事だったの」
「うん、王様の見えないところでは兵士が頭を下げていたんだ。国王の儀式を終えてから、王様が一気におかしくなったって」
俺はやせ細った男の人に尋ねる。
「国王の儀式とは何ですか? あ、すみません、あなたのお名前を」
彼は頭を下げた。
「私は陛下がお生まれになってから仕えている、タケルと申します。陛下に潜むくすんだ煙を光で追い払ってほしいため、あなたたちを招きました。それがあの様、お許しください」
タケルは深々と頭を下げた。兵士らも頭を下げる。
「一つ聞いていいでしょうか、王様は女の子ですか?」
「いいえ、男です。男として大切なものが、くすんだ煙にとられたのです」
王様は両手で手を覆って、涙を流していた。
「陛下は先月、国王になられました。この地下で儀式を終えた後、晴天の空から紫色の雷が陛下の頭に当たり、性格が変わりました。『王様の命令は絶対!!』発言し、私たちは不自由な生活を強いられたのです。私の体は本来、痩せていません。『この国にある力はすべて俺が奪う』言われた後、最小限の行動しかできなくなったのです」
「すまない、タケル」
王様は声を絞り出すように言った。タケルは話を続ける。
「時折、陛下が優しいお姿に戻られます。お体を拝見したとき、あそこがなくなっていたのです。陛下は来月、隣国から同い年の姫と結ばれます」
政略結婚――姉が小声でつぶやいた。
「今、王様の周りに邪悪な影がうろついています。こいつを追い払わないと、民は疲弊し、私たちの生活にまで響いてしまい、国が滅びます。そこであなたたちの助けをお借りしたいと思いましたら、あいつに力を封じられてしまいました」
タケルは少し頭を下げた。静かな祈り声が聞こえて振り向くと、服を着た姫が祈りをささげなさる。
「この真下に力があります。重たい石にさえぎられ、出られないようです。重たい石はふたをしています」
ペンを取り、簡単な図をお書きなさった。
「儀式が行われた場所だ」
「王様、私たちをそこに連れて行ってもらえませんか」
愛良が尋ねると、王様は震えながらもうなずいた。
「みなさん、ついてきてください」
タケルの後に従い、俺たちは庭の地下にある洞窟へ向かった。彼がたいまつに火をともす。
「あれ、入れない」
由良に愛良が見えない壁に挟まれ、進めない。俺にカナセ、王様にタケルだけが入れた。
「この国の女子は巫女が多い。影にとって祈りをささげる巫女は邪魔でしかない。だから奴は対策をとったのか」
タケルが『途中で』立ち止まる女性陣を見る。
「大和にカナ君、タケルさんたちを支えるんだよ」
「どうしてカナセが入れるの?」
マナテが頬を少し膨らませ、見えない壁を叩く。
「普段の行いに決まっているだろ」
「後でお仕置き」
ヒッという声が響き渡った。
「お仕置きしないでよ、マナテ。優しいから」
「大和さ~んの前ではしませんよ」
マナテが微笑むと、カナセはむっとなって、俺の頬をつねった。
「お前、マナテにも手をかけるつもりか。豚国王のように」
「「「カナセ」」」
姉、妹、マナテの3人が声を合わせる。
「僕は豚とさげすまれて当たり前だ」
国王が力なく笑った。俺はカナセの背中を叩く。
「ほら、行こう」
「わ、わかった。たいまつを貸せ、僕が持ってやる」
たいまつを握るカナセ。あたりを警戒しながら大股で歩いている。
「早いです」
王様が「はあ、はあ」息を漏らしながら小幅で歩く。雪だるまを思い出す体つきだ。
「痩せればいいだけでしょ」
カナセが皮肉を述べると、
「カナセさん、当初国王はやせていました。国王の儀式を終えてから1日でこのような体型になられたのです」
「1日で? ありえない」
あたりからもやっとした影が王の周りをうろついている。
「カナセ、耳を貸して」
「はぁ?」
「いいから」
俺はちらりと後ろを見てうなずいた。カナセに適当なことを言った。内容はここじゃ言えない。あんたの後ろに影がいて、聞かれたら困るからだ。ごめんな、あんた。俺の発言にカナセは強くうなずく。
「僕は王のそばにいる。タケルさん、王の前を歩いてもらえないでしょうか」
「いいですけれど」
俺は王様の後ろに回り、紫色の影と進む方向に何度も目を配った。
「いて、なんだこれ……クイズだ。王様、答えを頼む」
「これは確か……問題が変わっている!」
問題:小人を大王に変えよ。
例:e-i=三
では e+i=?
<以下、クイズを解く、答えは後日>
「や、やるじゃないか、大和」
「王様や僕らの命もかかっているからね、頭が必死に働くんだよ」
「その心持で須田愛良に告白しろよ」
カナセが一歩踏み出した。
「愛良ちゃんは今、か、関係ないだろ」
「関係ある。マナテがいつも寝言で言っているんだ。大和さん、そこをいじっちゃだめとか。お前がはっきりしないから、マナテまでお前を好きになっている。僕は本当にわからない。どうしてマナテや愛良、由良がお前みたいなやつを好きなのか。マナテが都合のいい女になるような気がして、僕は嫌だ。お前に言っても仕方ないか」
マナテが……あの時『大和さんは大好きです』言ったのは『建前』でないのか。
「カナセ君は好きな人、いるのかい?」
タケルさんが尋ねる。
「い、いないよ。僕が好きな人物はきちんと叱ってくれながらも、引っ張ってくれる人だ。後、かわいくて僕をいじってくれて……い、今のは関係ない」
関係ない、関係ない……言葉が響き渡る。
「好きな人がいるのはいいことだ」
王様が何度もつばを飲みながら言った。
「余はあったこともない女と結婚だ。相手も同じ。余の顔を見たら蔑むだろう。心底嫌だと感じるだろう」
通路がますます暗くなる。
「余は生まれてから自由を味わったことなどない。気づいたらパーティーにお稽古、勉強の毎日だ。民を見ていると、時々うらやましくなる。王は王で辛い。明日の生活を一番に考える民がうらやましい」
カツーン、カツーン……音だけが響く。
「コ、コウモリとかいないんだね、この洞窟」
「モンスター一匹すらいない『聖なる』環境です」
俺は別の話題を切り出した。紫色の影が王様の体に入り込みそうな雰囲気だった。
「あれが墓か」
カナセが指をさす。
「墓前にある像で国王引継ぎの儀式を行います」
手を握れと像が言い、思わず握る。
「何をやっているんだ、大和。お前が握っても王様になれないぞ」
「悪い、カナセ。何か知らないけれど、思わず握りたくなったんだ」
「くはは、ひざまずけ、王様の命令は絶対!!」
お読みいただきありがとうございます。
またひどい話になりそうです。
王様の弱さは広い目を見ると誰を表すのでしょう。
次の話>> を踏んで、続きをお楽しみください。