由良が「ゆううつ」な気持ちになった、何があるんだ?
こんにちは。語りは明日谷大和君です。
普段の一人称は「俺」です。人前だと「僕」になります。
ではお楽しみください。
あんたは男だろうか、女だろうか?
単に知りたかっただけ。俺は最近、自分が男なのか女なのか、わからなくなっている。男であることに変わりはないのだが、キラメキドーターズとして女に姿を変えると、男の気持ちが吹っ飛んでしまうんだ。いや、俺が「明日谷大和」なのかすらも疑ってしまう。
ひとつでも疑いが混ざると、湿った雲を吸い込んで大きくなり、ついに台風となって考えが乱れてしまう。そういう時、俺はダンス教室で激しく踊るんだ。踊れば気持ちよくなる。
「いいね、ヤマトゥ、EEZは領海ね」
今、ダンス教室で向井楽太郎先生ことDJラムから、指導を受けている。
「くるくる回ってジャンケンポンスカンターレモン汁、大会でライバルを意識して回れぇぇぇぇぇ」
ラム先生の髪の毛が黒から真っ赤に変わる。俺は意識が吹っ飛び……気づいたらまっすぐ立っていた。
「OK、踊りはキレッキレでいいYO、バット、あと一つ足りないものがある。愛LOVEあなた」
先生は俺に気づかせるように、わざと変な言葉を使う。そのため、翻訳に時間をかける。
「好きな子にすべてを見せるつもりで踊れ。オンリーワンでなくナンバーワンになって、人は胸騒ぎスマップ解散は残念ねえ」
「ナンバーワンですか」
「そう、お前が踊る本質はそこにある」
よくわからないけれど、気持ちは楽になった。夜のダンス教室を後にし、家に帰ると美鈴がニコニコしながら、俺の手を握る。
「やまにぃ、今日は由良さん来るかな?」
赤いミニスカートに桃色のTシャツ。美鈴が外でよく遊ぶときに着る服だ。
「来るんじゃない?」
留奈姉までやってきた。青いTシャツにデニムの短パン、素足だ。
……俺の服装? 白いTシャツに紺色のハーフパンツだけど。
「姉ちゃんに美鈴、期待しないほうが」
「やーまと君」
由良が机の引き出しから飛び出てきた。姉と妹は驚き、互いに抱き着く。
「由良ちゃん」
美鈴が由良に手を振る。
「やまにぃと一緒にいれば、由良ちゃんが来ると思った。大正解」
「かわいい~美鈴ちゃん。大和君、今日もお仕事だよ。惑星プロキオンのゼウシアムって闘技場でライブ活動があるんだけれど、あのね……」
由良は視線を落とした。月が雲に隠れる。
「嫌な予感がするの」
「それなら辞めれば」
姉が由良の頭をなでる。
「やめないよ、ただ、いつもはワクワクするのに、今日は嫌な予感がするんだ。だから大和君、留奈ちゃん、美鈴ちゃんがいると安心する」
由良は俺たちの手をつなぎ、アルムへ連れていく。由良の後ろ姿を見ると、愛良ちゃんの姉である「由良」にほぼそっくり。違うのは髪の毛の色くらいか。
「あれ、アルムじゃない」
古代ローマをほうふつさせるコロシアム、土作りの建物が多く、からっとして暑い。空は積乱雲が西から立ち込め、反対側は雲がほとんどない。
「留奈ちゃん美鈴ちゃんが来てから、マナカナの力が上がったんだ。今まではアルムである程度、力をもらってから飛んでいたのに、今回はアルムから力をもらわなくても、直接私の力で飛べるようになったんだよ」
由良が腰に手を置いた。由良の隣に光が現れ、人が出てきた。
「みなさ~ん」
士鶴姫だ。くのいち姿でお越しいただいたようだ。後ろにマナテとカナセはいない。
「由良、今ここに着いたのですか?」
「うん、愛良とマナカナは先に来ているよ」
姉と妹は姫様の御姿を見ている。姉妹に目を合わせなさった。
「初めまして、大和さんのお姉さん、妹さん、私はアルムの世界にある『ドリーム国』でお姫様をやっている士鶴と申します」
お姫様という仕事ってあるのか。初めて聞いた。
「お姫様? 全然見えないね、留奈姉」
「しっかりしているのね、お年はいくつ?」
姉の質問に、姫は首を横にかしげなさる。
「私はいつ生まれたのかわかりません。体は人間でいう12歳あたりを保っていますが、気づいたら私はここにいて、姫としてお仕事をしています。皆さんと歩き回るのも、姫としてのお仕事です」
ニッカニカ微笑みなさる姫、本当にかわいい。
「お待ちしておりました、アルムのお姫様方」
お読みいただきありがとうございます。ラム先生は一つ間違えています。
EEZは排他的経済水域で領海と意味は違います。両者の違いとして、EEZ内では経済に絞って、沿岸国の主権が及ぶ国で、領海は政治を含んでいます。
言葉は一つずつ定義をしないと、混乱するので注意してください。
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○に関する内容をふんだんに含んでいます。