お化け屋敷は怖くても、化け物は怖くない(クイズ付)
おはようございます、語りは須田愛良ちゃんです。一人称はすべて「私」です。
では、ごゆるりとお楽しみください。
入口の扉が勢いよく閉まる。豪華な壁、大きなシャンデリア、黄金の刺繍入りカーペット、真正面から人を吸い込むような階段。
「ようこそ屋敷へ。私は古谷恵麻。今よりそちらをもてなし侍り」
老婆の声が天井から鳴り響き、目の前の扉が開く。
「お姉ちゃん」
「私、お化け屋敷なんて嫌いなのに」
姉も私も片手をつないで、部屋に入る。
「かの部屋に一人の女、首くくりて失せぬ。愛す者あれど、浮気し交わりぬ。恨み油についた火炎蛇、清姫や真名子のごとく男の骨溶かし、女食らいて、さらに足りず。後ろにエサアリ」
ふう、ふう。息が聞こえる。
「振り向くの、やめよう、振り向いたらいけないって、私の心が言っている」
姉が声を震わせながら言った。
「う、うん」
私たちは前に向かって歩く。だんだん声は聞こえなくなった。もし後ろを振り向いていたら、今頃私たちはどうなっていたのだろう。考えないようにしよう。後ろを向いたら終わりだ。
フリムケバヨカッタノニ。
ね、ねえ、誰か今、何か言わなかった?
木製の扉があり、開くと、部屋は真っ黒。ただ目の前に光り輝く小さな鏡が置いてあるだけ。
「士鶴ちゃん! あなた、どうしてこんなことを」
鏡から声が聞こえ、私と姉がじっと見る。紫の炎を身にまとった象が、くのいち姿の少女を鼻で縛り、巫女姿の女の子が拳を握る。
「愛良ちゃんを地球から消すって?」
私の心臓が大きく揺れた。姉が小さな鏡をとる。症状の胸や股間からギシギシギュギュッと縛る音が聞こえる。辛そう。
「少女は魔物につかまりぬ」
老婆の声が響き渡る。鏡が懐中電灯のように光り輝く。光の先に、大和君が紫色の鎖に縛られている。
「魔物言う。明日谷大和を救いたければ、すぐ須田愛良をよこせと。須田由良言う。わかったと。須田愛良の魂失せ、由良に大和、己の行為を呪いたり。黄泉に訪れ、愛良蘇生の儀式行いぬ。3つの言葉と5つの歌が愛し合い、愛良生き返りぬ」
姉があたりを照らす。看板がかけられていた。看板の右隣に鉄製の扉がある。看板と扉に何か書いてある。
・扉
あ 黒き広場に浮かぶ点々落ちにけり
い もうもうとした青と白の電撃戦
う 闇に蠢け厚く熱き命
・看板
A 流れ星 飛行機に光 与えけり
B 土よ土 生きる源 我にくれ
C 白波の ざあざあ泣いて すっきりさ
D 雑草と 野に咲く花よ 気高し
E 積乱雲 かみなりならし あの世でも
・扉の鍵
あ―
い―
う―
早くほどいて、大和君を助けないと――。
<正解は後日発表>
鎖が消え、大和君を放ち、私たちが駆け寄る。
「人形!」
「おや、おかしいね」
人形の口から老婆の声が響き渡る。
「話に矛盾あり。はあ……怪物罵り、まさに愛良を戻さんと」
うううう。後ろから声、振り向いてしまった。血の気が全くない女性たちが歩いている。上半身は真っ白な顔、胴体は緑色、下半身はみな蛇だ。
「お姉ちゃん」
「逃げるよ」
私と姉は手を握ったまま逃げる。
「大丈夫、私と一緒に踊りましょ。あなたの中にあるくすんだ気持を追い払ってあげるから」
鏡の向こうにいる女の子は象に扇子を向け、踊り始める。どこが出口なのかわからない。
スタスタタタタタタダダダダダドドドドドゴゴゴゴゴ――
「どこまで逃げればいいの?」
「わからない」
にゃ~ん。銀色の猫が5メートル前にいた。右に向かって消える。
「ついていくよ」
私たちが猫を目指して走る、後ろからお化けが追いかけて来る、猫が左に曲がる、心臓が痛い、腹が痛い、後ろがうるさい、おっとっと、お菓子はおいしい。
わんわんわん、にゃ~
犬が片足を使って、手招きをしている。大きな扉が開いている、急いで入り、ドアを閉める。ひい、ドアが暴れている。
……ううう~ずるい~にげるな~再稼働反対~逃がさぬ~許さぬ~アベ政治許さない~呪ってやる~殺してやる~ぱよぱよちーんく~おおあおお……
恨みつらみの嘆き声、もう聞きたくない。言葉が汚水となって、私たちの心臓へ注がれていく。
「にゃん!」
「アンアン!」
犬と猫がとても明るい声を出した。私たちが振り向くと、真っ黒な人がいた。顔が見えない、人の周りにまばゆいほどの光。
「こっちへ、早く」
私たちは急いで真っ黒い人に向かって走った、ドアが壊れ、私と姉は白い光に吸い込まれる――。
う!
お読みいただきありがとうございます。お化け屋敷は怖いです。書いた日がお盆で、夜中3時になると、正体不明の連中からよくたたき起こされます。あなたはどうでしょう?