オバケーキが出す生クリーム攻撃で体がぬるぬる動けない(語り:愛良)
語りは愛良で、一人称は「私」です。
ではきらめく世界をお楽しみください。本日もお読みいただき、ありがとうございます。あなたに良きできごとが起こりますよう、心からお祈りします。
「ねえ、ねえ、大和君はどうなったの?」
由良が私の手を強く握る。
「何も見えません、このお店に入ってから、光はおろか、闇すらも見えない。透明になっているだけ」
姫がおっしゃる。
「あいつ、消えるのか」
カナセがちらちら私やマナテ、由良を見て、うろうろと動き回る。マナテはただ口を開けて立っているだけだった。
「カナセ、落ち着いて」
「わかってるよ、愛良。あいつが消えたら、からかう奴がいなくなるから嫌だ。姫様、大和は大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思います。おそらくこのお店の中に、理世ちゃんのお母さん、お父さんもいるのでしょう。何が起きているかわからないし、私たちが二人に声をかけることもできない」
「大変です、ドーターズ」
金髪のお姉さんが私たちを呼ぶ。
「クスミが現れました。お菓子のデパート『カシ38』にてあちこちにクリームをまき散らし、暴れています。ドーターズ、お願いします」
私たちがたじろぐと、姫様がおっしゃった。
「行ってあげてください。キラメキドーターズの目的はアルムの世界に光を与えて元気をもたらし、大和さんたちを含む、人々の未来を少しでも良い方向へ導くことです。カナセも彼女たちについていってください。マナテはここにいたほうが良いでしょう」
マナテは固められたクッキーのように立っている。カナセはシフォンケーキのような妹の胸をもんだ。しかし、彼女は動かない。
「お前、あんな奴が好きなんだな。双子でも心は大違いだ。僕はあいつのどこに惚れるのか、さっぱりわからん」
「惚れるにレシピはないの、カナセ」
私たちは変身をして、すぐさまクスミがいるカシ38前に向かった。3階建ての高さを持ったケーキ。ホイップを絞る袋が両手となり、あちこちクリームを飛ばしている。
「ケーキさん、やめろお」
アスナが叫ぶと、オバケーキはアスナの顔にクリームをかけた。どろどろ顔からクリームがしたたり落ちる。ぞくっと来る。
「やばい、あ、あそこが痛い」
カナセがアスナをちらちら見ながら、下半身を手で押さえる。
「カナセ、何、顔を赤く染めているの」
「わからないよ。アスナを見ていたら、なんか恥ずかしい気持ちになったんだ」
べちゃ。カナセの顔と下半身にクリームがしたたり落ちる。
「ひゃあああ、汚い。う、うあああああ、ぼ、僕は」
カナセがクリームを舐めながら、ごろごろ転がった。
「何をなめっているの」
「甘くておいしいんだよ、このクリーム」
アスナは「あへらぁ」とろけた表情を浮かべ、微笑んでいる。
「二人とも、いい加減にしなさい。あのケーキを浄化させるよ」
「う、うん」
アスナがぶるぶるぶる首を横に動かし、クリームを地面に落とす。二人で囲み、カナセはクリームを私たちにぶつけないよう、蹴りを袋手に放ち、方向を変えた。
「今だ、二人とも」
「さあ、さあ、踊って楽しもう、ケーキさん、ケーキケッキブンジョウジョウ」
「上昇~♪」
オバケーキも踊り出す。ホイップクリームを袋手からあちこち放ち、私たちにかかってしまう。おばケーキがクリームで文字を書いた。
「もっと踊りたい。早く踊ろうよ。じゃないと消えないよ」
わかっているんだけど、クリームに体を固められて動けない。ナデシコが出す炎じゃないと、私たちは固められる。甘い、いや、どこにクリームが流れているの、そこはだめだって。た、助けて、大和様、お、お尻にあそこと口が……
「いでよ、きらめく炎、溶かしてしまえ」
な、ナデシコ。帰ってきてくださったのですね。彼女が踊りながら炎を出すと、クリームはもちろん、ケーキの形をしたクスミまでもが跡形もなく消えた。
「も、もう、ケーキは勘弁」
同じくクリームにまみれたヤナミが真っ赤な顔を浮かべ、消え去ろうとする。
「待って、ここにいる私があなたに何か言いたいの、ヤナミ」
ナデシコは変身を解いて、大和様に戻った。
「お前の声がなかったら、今頃、俺たちは真っ暗な部屋で食われていたかもしれない」
「何を言っているの、あなた。真っ暗な部屋って何? 変なこと言わないで。ああ、べとべとする。お風呂、お風呂」
ヤナミは消えた。
「大和様、無事だったのですね」
私は彼に抱き着いた。右にはアスナ、後ろにはマナテが抱き着いている。大和様、固まってかわいい。
「ああ、ずるいです、私も」
姫様が正面から大和様に抱き着きなさった。
「お前、赤ちゃんはどうしたんだよ」
カナセが口をバナナのように曲げ、尋ねる。
「わからない、僕が愛良ちゃんと一緒に暗い部屋から明るい部屋についたら、ここにいたんだ。マナテが僕の名を読んで、カナセたちが危ないから早く助けに行けって。僕も何が何だか、よくわからない」
疑問が浮かび、伺った。
「姫様、大和様を飛ばした先は地球だったのでしょうか?」
「確かに地球へ飛ばしました。でも、色々おかしかった。初めに私が大和君を飛ばす場所は必ず、大和君の部屋です。なのに公園だった。次に私は力を使える。大和君がどこにいようとも見渡せる」
「士鶴ちゃん、も、もしかして」
大和様は梅干しと唐辛子を混ぜて食べた表情を浮かべる。
……おほほ、何その例えって、いや、さっきまでオバケーキと戦っていたので、例えをなるべくお菓子や食べ物にしたほうが、あなたに通じるかなと思いましたの。
「ああ、大丈夫です、大和君がいかがわしいサイトを見ているのも、私は知っていますし、ちらっと見てしまいましたから。あ、大和君がカナセと同じものを握って、な、何かを出して」
大和様の全身がホワイトクリームに染まった。オバケーキは倒したはずなのに。
「は、話を戻します。大和君が自室にいなかった。私が見渡せない空間があった。私たちが知らない『何か』が介入しているのでしょう。こんなこと、ありえなかったのに」
姫様は大和様を中心に歩き回りなさった。
「私、よくわからない、さっぱりわからない」
アスナが人差し指を口に加える。
「私たちは今のところ、わからなくていいのよ、アスナ。とりあえず変身を解いて、お風呂に入りましょ。体がクリームにまみれ、べとべとして気持ち悪いですもの。大和様も」
「僕はいい。愛良ちゃんが心配なんだ」
「姫様~」
金髪のお姉さんが大声で姫様を探す。
「はい、どうかなさいましたか?」
「名前非公開さんから連絡です。理世も須田愛良も無事だ。大和は安心して地球に戻って来いと」
「それ、本当なの?」
「大丈夫ですよ、愛良ちゃんが見えますか?」
姫様は魔法をお唱えになり、大和様に画面を見せた。愛良ちゃんが着替えて、大和様は固まっている。あなたなら女の子が着替えている姿を見てしまったとき、どうします?
「士鶴ちゃんはこういうのも見ているの?」
「必要な時しかみませんよ。いつも見ているほど、私は暇ではありません。さあ、安心して皆さんで露天風呂へ入りに行きましょう。宗田風呂はサイダーの味がする炭酸風呂ですよ」
さあ、これからお風呂です。私たち、今日もみんなで体のコミュニケーションをとりますよ。
……暗号の答えはどうしたって? 私はあなたが何を言っているかわからないので、今、私服へ着替えたばかりの須田愛良に語ってもらいますわ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
暗号の答えは明日になります。問題は解けましたか?
問題文は前回のお話を読んでください。
愛良ちゃんは無事です。
二人は真っ暗な部屋を歩いていました。
声が聞こえるのですよ……。
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