ヤナミが見せる闇の俺(大和の視点+暗号の答え)
語り手は明日谷大和君、変身をする前の一人称は「俺」で、人前だと「僕」に、「キラナデシコ」に化けると「私」に代わります。
ではきらめく世界をお楽しみください。本日もお読みいただき、ありがとうございます。あなたに良きできごとが起こりますよう、心からお祈りします。
「起きな」
誰かが俺の頬を叩く。目を開けると、真っ暗な世界だった。一人の女が立っていた。光がどこにもなく、地面や空もわからない。なぜ彼女ははっきりと色が区別でき、見えるのだろう。
「お前は確か」
上半身は浴衣、下半身はチャイナドレスを着た女、ヤナミが俺を見て微笑む。サングラスをかけていない。瞳は誰かに似ている。だが、誰かは出てこない。
「いいざまね。この世界でキツイことは言わない。大和、愛良と付き合うのはやめな」
腹と頭が熱くなるり、体が震える。
「なんでお前にそんなことを」
「言う権利ならある。どうして闇に飲み込まれ、心臓を刺されて血が流れたかわかる?」
ヤナミは立ち上がる。スリットからふとももがちらりと見える。は、はいていない。
「あなたが浮気をしたからよ」
「浮気?」
「この世界にいる女が好きになりすぎた。親しい関係を抱くならまだしも、恋心を抱いたらおしまい。お前はここにいるべき人じゃない。愛良はお前がどんな活躍をしているか、夢を通して見ている」
頭の痛みは治まるものの、へそ下3センチから震えが止まらない。
「大和」
ヤナミが俺の手を強引に引っ張った。後ろからふう、ふうと息を吐き、青い体、いや、キラナデシコにそっくりな影、目だけは黄色く光っており、右手には先が尖った扇子を握っている。
「こいつは」
「お前の心に潜むクスミだ。クスミはもう一ついて、愛良の部屋の前にいる。大和、あいつを早く浄化して。あいつを消さないと、愛良がお前に呪い殺されてしまう。私たちもね」
「あ、愛良ちゃんが」
両脚が震え、手も乱れ、心は燃えている。
「はあ、大和なんかと協力はしたくないけれど、愛良を守るため、仕方ない。早くナデシコに化けろ」
クスミは扇子をナイフのように握り、俺を誘うとする、ヤナミが何かで扇子をはじいた。
「早く変身をしろ」
「輝け、私の希望――」
俺はナデシコに姿を変えた。私はクスミと向き合う。
「私も手伝う、他人事じゃないからね。大和、じゃなかった、キラナデシコ、あいつと一緒に踊りな」
「踊れと言っても」
クスミが扇子で私を斬る。血は出ていないものの、代わりにきらめく何かがぽたぽた落ちた。
「こんな奴、今まで相手にしたこともないわ。」
ヤナミが胸を刺される。胸の谷間からどぼどぼ黒い泥が落ちる。
「ヤナミ」
「私はいいから、早く踊って浄化しろ。もたもたしている間に、愛良が死んじゃうのよ」
私はうなずき、扇子を強く握り、右手を下から上へ、左手を左から右へ動かし、左足で半円を描き、右足を軸にして周り、クスミに近づく。クスミは微笑み、私をさす。痛いのに、痛みを感じない。光の粒がどんどん漏れている。
「さあ、一緒に踊りましょ」
ヤナミがクスミの体をつかみ、ささやいた。私はうなずき、踊る。光が漏れているせいかしら、いつもなら踊るうちに体が熱くなり、素敵な人に抱かれる気分となるのに、今は全くならない。脳をほれぼれさせる熱い何かが押し寄せてこないの。
「一人だし、きらめく力が刺されていたら、それほど力が出ないか。どうしたらいい、どうしたら」
ヤナミはつぶやき、私と一緒に踊る。クスミは「あう、あう」首を何度も横に振り、固まっている。
『歩かずに山を咥えると自由となった。いくら?』
「今の声は」
愛良だけど、私が知る愛良とは何かが違う。私の中にいる彼は騒いでいる。どこから声が聞こえたの?
「ナデシコ、踊りを止めない」
ヤナミに言われ、私は踊り続ける。
「『歩かずに山を咥えると自由となった。いくら?』の答えは7よ、歩かずはある数、山は音読みでサン、だから3、自由はじゆうから10でしょ。これでいいの?」
うおおおおおおおおおおおおおおお。目の前にいる『私』が悲鳴を上げる。すると、闇だった場所に景色が戻る。愛良と由良が口を開けて立っていた。愛良の手には丸い鏡を持っている。
「二人とも、早く変身を」
「な、ナデシコにヤ、ヤナミ」
「早く」
二人は変身をする。
「暗き心に明るい光を、キラアスナ」
「枯れた心に花を咲かせよう、キラナデシコ」
「乾いた心に愛と潤いをもたらす、キラココア」
「我ら、キラメキDaughters」3人合わせて、久しぶりに言う。
「ナデシコ、大丈夫、私たち3人の力で、あのクスミさんを浄化させてしまいましょう」
私たちはうなずいた。ヤナミはじっと私たちを見ている。
「じゃあ、みんなで歌いましょ。トッキメッキ ココロにファー」
「ファー、隣の席で ちらりと見る 可愛い女の子」
3人で声を合わせ、踊り、クスミを囲んだ。奴はおおう、おおうと言いながら失せた。と、愛良が持っていた鏡も消えた。
「この次はそういかないよ。キラメキDaughters」
ヤナミが舌打ちをして消えた。彼女に違和感を抱いた。
「ナデシコ、大丈夫ですか?」
ココアが私の胸を抑える。
「アスナ、二人で歌を歌いましょ。癒しの歌、くるくるライトニングを。その後、デート再開ですよ」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
次回は新しい話として、デートの続きになります。とはいえ、簡単にデートをさせてくれないのです。なぜなら……お楽しみ下さい。