大和君が闇にのみ込まれちゃった(愛良の視点より+暗号)
いつもは明日谷大和君が語りますが、ここでは大和君が恋い焦がれる女の子「須田愛良ちゃん」が語ります。彼女の一人称は「私」です。大和君は現在、……な目に会いました。ではお読みください。
私は須田愛良。今、体が重たい。さっき、楽しい夢を見た。
「大和君――」
彼が夢に現れた。私はどんな姿をしていたかわからない。そういえば、杖を持っていた。私と彼はどこかのお城を歩いていた。敵が剣を握って襲ってきた。彼がかばってくれた。私はうれしかった。魔王が現れ、彼がとどめを刺してくれた。とてもかっこよかった。彼が鏡を見たら、闇へ落とされた。私は彼を助けられなかった。
ギシィ。
午前3時。嫌な夢。寝ようとしても、頭が冴えて眠れない。かといって、体はふらふらする。のどが渇いたから、布団から出て、下に降り、冷たいお水を飲む。
ごぽごぽ。
お水を飲むとき、ゴクゴクって聞こえるはずなのに、ごぽごぽって聞こえる。熱のせいだね。
ギシ、ギシィ。
階段を上がる。大きなお月様が私を照らし、影が後ろから追いかけてくる。
きいぃ、ばたん。
自室に入り、ドアを閉める。なぜ私はあんな夢を見たのだろう。彼を想ってからか、二人でいる夢を見るようになった。3日前に見た夢は、今思っても驚く。私の隣に彼はいて、いきなり光り輝き、女の子に化ける。私は何かを叫び、女の子になった彼とともに、化け物と戦って勝つと、私は彼に抱き着いた。
「大和さん、大好き」
目の前に現れた、かわいい女の子が私から彼を奪う。彼女は彼の膨らんだ胸をもみ、耳たぶをかみ、甘い言葉で彼にささやく。彼の顔がほころび、私は手、胸、足が震えた。私は何も言えず、歯を強くかみしめるだけだった。
フォフォフォオウ。
風が吹き、月が緑色に輝いている。寒くなった。布団に入って、もう少し寝よう。
どんどん。
誰、こんな時間にドアを叩いたの?
「お母さん、お父さん、お姉ちゃん?」
答えがない。いたずらね、ドアを開けてみよう。
――愛良、開けてはだめです。
ドンドン。
今、胸から声が聞こえた。私が危ないとき、見えない人が私に訴える。
ぬらっ。
月が何かに覆いかぶさり、隠れた。私はゆっくり後ろを向く。月はある。それだけ。
ドンドンドン。
「誰? 私をからかっているの?」
私はドアに耳を立てて聞いた。人がいるなら笑い声が聞こえるはず。カラスやスズメは鳴いていない。
ひゅるるるうぅ。
風が叫ぶだけ。
ドドン、ドドン、ドン。
ドアが暴れ出した。風もさっきより荒れ、雲が月を避け、ぼんやりと光の輪が浮かび、ますます緑が濃く、心が泣きたがっていると気づいた。
ずどどどずどずどどどずどど。
何が起きているの? 私の心がただ叫んでいるだけ? それとも何かに引きずりこまれている? お父さん、お母さん、お姉ちゃん、助けて。私はまだ死にたくない。大和君に告げることなく死んでしまうの、私?
『歩かずに山を咥えると自由となった。いくら?』
ドアの向こうから女の子の低い声が聞こえ、静かになった。風の音も聞こえない。
――答えてあげて、でないと大和様が。
心から声が聞こえる。大和様って、私が言ったの? それとも私に誰かが伝えたの? 大和君が危ないの?
『歩かずに山を咥えると自由となった。いくら?』
いいかげんに答えちゃだめだ。考えないと。私は心の中でささやく。
<答えは省略、後日発表。答えは何か、愛良ちゃんと一緒に考えてみてください>
うおおおおおおおおおおおおおおおおおお。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。次回はどうなっていくのでしょう。