いきなり惑星シリウスでイチゴを摘んでこいと言われた
語り手は明日谷大和君、一人称は「俺」で、人前だと「僕」になります。
きらめく世界をお楽しみください。本日もお読みいただき、ありがとうございます。あなたに良きできごとが起こりますよう、心からお祈りします。
銃から鉛玉でなく、「ようこそ、大和君」煙で描かれた文字が現れた。
「アルムの世界にようこそ、明日谷大和君」
し、心臓が少しだけ止まったよ。
「私があんたを殺すと思ったのかい」
「そ、そりゃ思いましたよ」
「そんなことをしたら、由良が黙っちゃいないよ、な」
由良はうなずき、キイキイ揺れる椅子に座る。
目の前にいる女性は目と鼻筋は細く、身長は俺よりも高く、わずかにしわが見え、髪の毛に白髪がない。
「私は古谷恵麻。あ、これは地球、いや現実での呼び名だった。大和君、今から由良に付き添って、惑星シリウスに向かい、光るイチゴを摘んでほしい」
行く前提なのか。俺はまだ何も決めていないのに。
「力を抜いていいよ。非常にとても簡単なお仕事だから」
恵麻はニヤリと微笑む。おばさん、何かを隠しているな。
「ほら、大和君。簡単なお仕事だから早く行こうよ」
「由良、ちょっと待て。恵麻さんは『非常にとても』と言った。怪しいでしょ」
恵麻は後ろを向き、魔法を唱える。すると一部の空間が真っ白くなり、キラキラ輝きを放つ。
「大和が由良のパートナーでよかった。由良をよろしく頼む」
「師匠、愛良は?」
「愛良」という言葉に俺の心臓が揺れる。
「愛良はスピカにいるよ。由良、大和と一緒に行っておいて」
「うん!」
由良は俺の手を強く握り、真っ白な扉に入る。時間にしてわずか3秒。
あたりは畑、何かを植えている。灰色の雲が俺らを覆うように近づいてきた。
「地球にこの技術があれば、世界旅行し放題だな。ところで由良、一つ聞きたい。愛良って」
「勇者様だ」
羽の生えた子熊たちが由良にかけよる。あいつらしゃべった。しかも日本語。
「わーい、勇者様だ」
「勇者様が来たぞ、みんな、歌うぞ。勇者様がやってきた♪ 遠い世界からやってきた♪」
熊たちは由良の手を握り、ある熊はスカートをめくり、ある熊は胸を堂々と触っている。子犬や猫も混ざった。
「やめろよ」
俺が熊たちを由良から放す。
「何をする、この怪物が」
「怪物を今すぐ追い出せ」
「まって、大和君は怪物じゃない」
由良が言うものの、怪物たちは襲い掛かってくる。爪で引き裂くな、痛い、痛いって。
「やめて、やめなさいってば」
と、熊たちの頭上におもちゃのハンマーが落ちる。痛い、あ……
今、俺の前に一人の女の子がいる。一部の髪の毛がピョンとはね、やさしい表情を浮かべ、きらきらした瞳、桃のような柔らかそうな頬、紅色の唇、俺が通う雪丘中学校の制服を着ている。
――大和さん、大丈夫ですか。あなたにも攻撃を与えてしまってごめんなさい。これからあなたの力が必要となります。そのとき、輝け、私の……
「きゃああああああ」
目を開けると、由良が吹っ飛ばされていた? あ、あれ、あの子は由良なのか。髪の毛の色や服が違う。
「いたた、あ、大和君、起き――」
風が俺を押し出し、木々、青い空を包み隠す真っ黒い雲、キラキラな川、ゆれる風景かわる光景かたまる情景、くらくら頭が痛い。
「大丈夫」
由良の声をした女の子が俺を撫でる。
「ゆ、由良なの?」
「今は由良じゃないよ。あ」
うおおおおおおおおおおおお。赤青と光る何かが雄たけびを上げる。
「なんだあれ」
「師匠の言っていたイチゴよ」
イチゴは竜巻を身にまとい、俺たちめがけて風を放つ。俺と由良?は吹っ飛ばされ、10メートルほど空高く舞い上がる。落ちる!
――今です。輝け、私の希望って
「輝け、私の希望?」
視界が真っ白く染まり、泡立てた石鹸を体に塗るように、服が溶け、上半身は近世の女性が着るような白の衣、胸に赤いリボン、血の色に近い袴、白いニーソックス、髪の毛は長く、先端が腰にあたり、色も赤く変わる。目の前の由良?が見とれている。
私はいったい? 由良が私の隣に立ち、私の口から勝手に言葉が出る。
明日谷大和君、一人称は「俺」で、人前だと「僕」に、姿を変えると「私」に変わるようです。ややこしいと思われるでしょうが、人前と己の心の中と、姿が女の子の状態では、態度も違うというものです。この後、彼らはどんな行動をとるのか、次のお話をお楽しみください。
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