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キラメキDaughters(ドーターズ)  作者: 千賢光太郎
5話 現実世界はわくわくしないが、ドキドキはする
18/55

現実に戻ると、両親が帰国していた。父さんとの会話

■ 現実に戻ってきたら、両親が待っていた


「大和、大和」


低くて軽い声に目を覚ます。もじゃもじゃ頭、四角い眼鏡、ごつい鼻、こげ茶色に焼けた肌、分厚い唇。


「父さん」


「大和、帰ってきたぞ」


父:明日谷幸男(あすやゆきお)が抱き着く。俺も抱き着く。

――親子でBLかって、やめてくれ。3か月ぶりに帰ってきた父さんだ。優しくて時に厳しい父が、俺は好きだよ。あんたはどうなんだ? 


「父さん、母さんはどこにいるの?」


「下で留奈と話をしているよ」


俺は階段を下りる。胸まで届く黒い髪の毛、少しずんぐりとした鼻、新しい時代を見つめる瞳、赤いバラが持つ明るさを2段階落とした唇。シャベルを握ったまま、姉と妹と盛り上がる母:明日谷幸子(あすやさちこ)


「大和、フランスは面白かった」


バシバシ、音を立てて俺の肩をたたく。アルムの世界でのトレーニングより、母の話を聞く方が疲れがたまるって、どういうことだ? 姉と妹はワクワクしながら話を聞いているが、俺にはついていけない。


「母さん、大和と食事に行っていい?」


「男は男同士でいってきなさい。じゃあ今日の晩御飯は私と留奈と美鈴で食べているわ」


「ああ、そうしてくれ。あさってはみんなで食べに行こう」


父が運転する車に乗る。


「大和、お前、ずいぶんさわやかな表情をしているな。そんなにお父さんと会いたかったのか」


「いや、そうじゃないよ。いい夢を見ただけ」


「夢か。お前はもう夢精をしたの?」


車が止まる。


「父さん、いきなり何を言い出すんだ」


「いいじゃないか、男だもん。俺は覚えていないけれど、小学校6年生のとき、夢精して、それからいろんな本や動画を見たぞ。お母さんには恥ずかしいから内緒な」


「い、言わないし」


信号は赤。歩行者信号がパカパカ光る。


「お前、好きな女の子、いるのだろ、留奈が言ってたぞ。その子、家に連れてきてもいいからな」


信号は青に変わった。


「そ、それは」


「性格がブスじゃない限り、歓迎する。顔は別にブスでもいいからな。性格だぞ、性格」


時速60キロを出す。


「その子は美、美人だし」


「いいねえ。明日谷家の血を継ぐのは留奈でも美鈴でもない。大和、お前だけだからよ。お父さんの願いとして、結婚してきちんと子供を産み、孫を見せてほしいものだ」


信号が黄色になり、車は突っ走る。


「ま、まだ早いよ」


「俺らが生きている業界は早いから、つい、同じ調子でしゃべってしまった」


「お、親父のファッション業界は今、どうなっているのさ」


信号機が赤になり、親父はウインカーを右に点滅させた。


「今は時代の流れもあってか、目立つ色が大切だ。フランスは今、移民問題で治安が揺れて、現実の不安から目をそらすために、人は楽しい方へ向かう。その気持ちは衣装にも表れる。トレンドを抑えるのが大変でね」


右に曲がった。と思ったらすぐ左に曲がる。


「大和、世界は広いよ。フランスにいれば、日本が今、どんな問題にさらされているか。日本がどうみられているか。日本はどうして地震が頻繁に起きても、自分に自信がなくてチャンスを逃しているか。いろいろと気づかされる」


「地震と自信は関係ないでしょ」


「56だ語呂」


十字路が見えた。


「そうだ、お前、ぽえぽえ7のチケット、ほしくないか」


「どうしたんだよ、お父さん、まさか」


まっすぐ進む。


「チケット、もらったんだ。3枚もらってきた。お父さんとお母さんは仕事だから、お前たちで楽しんできなさい」


車は目的地にたどり着いた。もしかしたらこれも、アルムの世界で起きた合宿の効果なのかも。偶然なのか、必然なのか、わからない。神様が決めた脚本通りに動いているのか。それも分からない。いずれにしろ、うれしい事実に変わりはない。

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