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キラメキDaughters(ドーターズ)  作者: 千賢光太郎
4話:気持ちを由良ゆらさせないために特訓をしたら
16/55

合宿後のライブと、キラメキを奪うクスミ女、ヤナミ登場

■ 3日目から6日目まで


3日目から6日目まで、1日目と2日目の復習を行った。カエル先生のもとで歌い、崖のぼりなどの体力トレーニングを行い、ダンスもする。基礎トレーニングはきつい。食事はもっとつらい。辛いという言葉しが出ない。私はアルムの世界から出ていない。現実では今頃、姉や妹、友達は私、いや、大和に対して何を思っているのだろう。愛良ちゃんは私を忘れているの?


――そんなこと言わないで、頼むから。




■ 今度こそ乙女惑星スピカでライブを


アルムの世界で、とうとう6日がすぎた。恵麻さんは私たちを乙女惑星スピカに飛ばし、コンサートを開かせた。うげ、あのお姉さんだ。


「いらっしゃいませ。あら、今日はきちんと女の子なのね」


「いいでしょ、お姉さん」


「合格です」


お姉さんがにやりと微笑んだ。とても怖い。控室につき、部屋に入る。


「みんな、特訓の成果を出すよ」


アスナがぶんぶん腕を振り回す。


「ナデシコ、そして大和様」


ココアは私の胸を軽くたたいた。ぽよんと音を立てた。


「このライブがうまくいけば、大和様の運気も少し上がります。そうなると、大和様にとって良い未来が一つ訪れます」


「ええ、頑張りましょ」


私の中にいる彼は何かを言いたそうだが、耳に入らない。


「お前ら、頑張れよ。僕たちもバックできちんと踊るから」


「皆さま、成功させましょう」


マナテとカナセが手を握る。カナセの胸には恵麻さんが調達したスライムがいる。おかげでマナテよりも大きい。私たちもアスナ、ココアと手を握る。


控室から歩いて3メートル先に大きな扉があった。


「ではお入りください」


金髪のお姉さんが大きな扉を開けた。揺れる、大歓声が耳を体を揺らす。私の中にいる彼はとても騒いでいるが、声は聞こえない。


「いっせーの」


私が歌う。ココアとアスナが次に歌い、双子がポンポンをもってまわる。飛び跳ねると、大歓声が沸き上がった。完璧かどうかわからない。音程やリズムが少しずれた。踊って歌い終えると、「きゅああああ」みんなが叫んだ。


「ありがとう」


私たちは手を振った。なんかわからないけれど、最高。歌い終えて、私たちはサインをねだられる。一人、また一人とサイン色紙を渡す。うち、一人がとても印象に残っている。


「近いうちに、あなたたちと出会うかも。キラナデシコ」


全身、紫色に染まった化け物だった。あの子はいったい?


「ライブ、終わったね」


サイン会を終え、控室にいる私たち。


「ナデシコたちと歌えてよかった」


アスナは私の手を握る。


「あの、ドーターズ様」


金髪のお姉さんが勢いよくドアを開けた。汗をかいて頬が光っている。


「どうしたのですか」


「クスミが現れたのです、あなたたちの力でキラメキの力を満たしてあげてください」


「クスミ?」


私は聞いたことがない。どんな奴らなの。私たちはそのクスミとやらを追い出せるの? お姉さんが案内する。ピンクで花柄のドレスを着た女の子が、苦しんでいる。


「これは」


「クスミってやつよ」


女の子の後ろから、一人の少女が現れた。




■ ヤナミとクスミ


挿絵(By みてみん)


カナセと同じ背丈にマナテと同じ胸の大きさ、髪の毛の形はココアにそっくり、色はアスナと同じ。サングラスをかけている。太ももがちらりと見える、真っ赤なチャイナドレス。パンツは履いていないと思う。赤いハイヒールがまぶしく、彼女はくすっと微笑む。


「さあ、クスミよ、あいつらに怒りをぶつけなさい。キラメキなんて消えてしまえ」


「あなたは誰」


「私、ヤナミっていうの。ま、あんたたちの敵ってところかしら」


彼女は頭を下げた。瞳が見えないので、どんな感情で私たちを見下しているか、わからない。


「いいわよね。たいした特訓もせずに、ライブを成功させちゃうんだから。だから痛い目に会いな」


クスミと呼ばれる怪物はみるみる頭の悪そうな鳥人間に変わった。くちばしがメガホンになっている。


「おーい、ブスども、へったくそな歌だな」


クスミが大笑いする。腹の底が燃える。


「ねえねえ、アイドルを目指すつもりなの? のうのう、お前らプロをなめすぎていない? かあかあ、もう一回小学校からやり直せ、ブスブス、おおんおおん。あ、それは狂言のぶすだった、ぎゃはは」


鳥人間は飛んだ。私たちから逃げるように飛び去る。


「早く追いかけたら?」


ヤナミが手を叩くと、クスミが彼女の前に立った。


「お前もなかなかのブスだな、厚化粧してもどうどうとブスには変わりないな」


「なんで私の悪口まで言うんだい。お前はクスミとして仕事をしていればいいんだよ」


「へ、お菓子を食べすぎてぶくぶく太った関取の分際で、よく言うわ」


「黙れ」


ヤナミが顔を真っ赤に染め、蹴っ飛ばした。やっぱり履いていない。


「は、早く追いかけな、じゃないとあんたたちの悪口を言いまくるんだよ」


「追いかけるよ、ナデシコ、ココア。マナカナ、あいつをお願い」


マナテとカナセはヤナミの前に立つ。


「お前、本当に嫌な奴だな」


ちらりと後ろを振り返ると、双子とヤナミはどこにいるかわからなかった。


「いたわ」


ココアが指をさすと、あちこちで真っ黒い煙が現れた。


「せっかくライブでキラメキを広めたのに、このままじゃ現実世界にも影響を与えてしまいますわ」


「こらあああああ」


アスナがツッコミ、クスミに膝けりを入れる。


「いてええ、パンツは白か。黒だったら色っぽかったのに」


「み、見るなあ」


アスナがスカートを手で覆った。かわいい。


「ココア、あいつをどうしたらいいの?」


「キラメキの力を与えるのです。いつものように歌って踊って、あのクスミに別な考えを与えるのです」


「別な考えって?」


「へえ、お前はふんどしなのか」


いつの間にか、クスミは私のパンツ、いや、ふんどしを見ていたようだ。


「いやあ、気持ち悪い」


思わず出た言葉。クスミは大声で叫んだ。


「キラメキドーターズはね、ファンを気持ち悪いブスばっかりだってよ、みんな、もう一回聞いて」


「やめて」


「今、言ったよな、気持ち悪いって。お前、ファンを気持ち悪いって見ているんだろ。だから広めてやった」




■ アンチに癒しを


あのクスミ、なんでそんなことを言うの? 私たちはただ、頑張っているのに、どうして、嫌なことを広めて笑っているの?


「ナデシコ、怒ったらあいつの思う通りよ。私たちの役割は怒ることでない、元気を与えることだから」


ココアが私の手を握る。アスナの手も握った。


「で、でもあいつ」


「気持ちはわかる。わかるわ。私だって、苦しい。でもカエル先生もおっしゃっていた。ファンもアンチも結局は人。あのクスミだって斜めに見ているだけ。さあ、みんな、心を入れ替え、盛り上がりましょ。これは生きたライブよ」


ココアが鳴子に命を吹き込んだ。カシャンと響きの良い音が世界中に伝わる。扇子を持つ手に力が入る。


「アスナ、ココア、新曲を歌おう。私たち三人で力を合わせ、くすんだ闇を追っ払うよ」


「わかった。みんな、ついてきてね、トッキメッキ ココロにファー」


「ファー、隣の席で ちらりと見る 可愛い女の子」


私たちは歌いだす。声があっている。ライブじゃ少しずれたのに。


「ほら、手をつなごう、アイスクリームを一緒に食べよう♪」


アスナは私から見て右、ココアは私から見て左、私はその場に立ち止まり、三角形を作った。新曲を歌い終え、私たちはそれぞれ扇子、マイク、鳴子をクスミに向けた。


「「「キラ・ホーピングスター」」」


無数のきらめく星が奴に降り注ぐ。


「いい歌だな、感動すらしたよ。だが、全く響かない」


クスミが天に上った。黒い煙も消えた。


「あ、浄化したのですか」


マナテがカナセの手を握り、飛んできた。


「あいつは」


「逃げました。言葉だけは達者なくせに、弱いのです。今度会ったら、たっぷりいじってあげますわ」


マナテが不気味にほほ笑んだ。カナセは顔を真っ赤に染め、目がうつろになっている。




■ 合宿が終わって


「合宿を終えて、どうだった」


恵麻さんの家にて、彼女が私に尋ねる。


「うーん、きついというか、何がなんだかわからなかった」


「そうだね、色々ありすぎて、頭の整理が追いつかないもんね」


アスナたちは桃色のジュースを飲んでいた。緑色の空がまぶしく輝く。


「それでいいのさ。どうして合宿をしているのだろう。そもそも何をやっているのだろう。思っただろ、大和」


私は無理やり変身を解かれた。俺に戻り、一気に疑問と気持ち悪さが押し寄せ、頭が痛くなる。


「はい、どうしてアイドル活動をしているのか。そもそも何が何だか、よくわかりませんでした」


「まあ、この世界に来た時点で、お前はそういう運命を(あた)わっている。覚悟しておきな」


パチンと、恵麻さんが指を鳴らした。ああ、目の前が真っ暗になる――。


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