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キラメキDaughters(ドーターズ)  作者: 千賢光太郎
4話:気持ちを由良ゆらさせないために特訓をしたら
14/55

いきなり特訓、現実世界に帰れない

語り手は明日谷大和君です。

一人称は「俺」で人前だと「僕」になります。


前回、由良の手違いによって「ついていない」状態を味わった大和君。

落ち込みに耐えうるよう、トレーニングをするそうです。

「さて、大和。今後起きるである、辛い出来事に耐えてもらうため、居間から特訓をしてもらう」


恵麻さんが杖で草を叩くと、筆に変わった。愛良が筆を持ち、半紙に文章を書いて、俺たちに見せる。


「今回の特訓目的は三つあります。

1 キラメキDaughtersとして新曲を出す

2 多くの人に感動を与えるため、感性と技術を鍛える

3 少々の不安に動じない心」


「加えて大和の運気も上げる」


カナセがくいくいっと俺の胸をひじでたたく。


「お前、愛良ちゃんとなるべく近い場所でコンサートを見たいだろ」


ドクン。


「運気が上がると、ありえない現実を手繰り寄せる。現実だと『ありえない』の一言で済むが、夢の世界でトレーニングを積むと、ありえないことがあり得る。お前の将来にもかかっているんだからな」


ドクンドクン。


「お前の気分は由良に愛良、マナテや僕にも影響を与える。この世界はお前ひとりで成り立っているんじゃない。お前の運気が落ちると、みんなに響く」


カナセが鋭い瞳で俺を見る。


「大和さんはあちらの世界で嫌な現実を味わいました。大和さんが暗くなると、それを見ている私たちも嫌な気分になります。すると、由良や愛良にも響き、私はますますカナセをいじりたくなるのです」


マナテがカナセの後ろに立った。


「後半は違うだろ、マナテ。馬鹿じゃないの」

「可愛い妹に向かってバカって、カナセのくせに」


マナテがカナセを足払いし、下半身を優しく踏んづけている。カナセは嫌がっているように見えて、微笑んでいる。唾液とろとろ、あそこムクムク。


「マナカナ、喧嘩は後でしなさい」

「「ご、ごめん」」


双子は恵麻さんに頭を下げた。あれは本当に喧嘩だったのか?


「さあ、変身しなさい」


恵麻さんに言われ、俺たちは変身した。男として抱いた気持ちが、どこかへ吹っ飛んでしまう。


挿絵(By みてみん)


「由良、今の空を見なさい」


私も空を見る。エメラルドグリーン色だ。


「現在の色は時色相(じしきそう)180だ。これが7度回るまでに新しい歌を作りなさい。

じゃあはじめ。今時色相181になったよ」


今、ここを読んでいるあなた。時色相は時間だと思ってちょうだい。地球では午前、午後と決まっているけれど、アルムの世界にて、「時間」は乱れるもの、カチカチ予定異通りに進むわけでない。そこで、色を用いて時を決めている。1日の始まりは赤、終わりも赤。赤→黄→緑→青→紫→赤と回る。今、時色相180は地球の時間に直すと、午後12時でよかったはず。


――どうして知っているのって?


わからない、私の口から勝手に出た。私も誰から教えてもらったのだろう。まあいいか、この世界は現実とはまた違う異世界なのだから。


「崖のぼりをはじめるよ」


恵麻さんは指をならした。目の前から音もなく「崖」が現れる。魔法の力を使って、岩をきっちりつかむ。


「よーし、上っちゃうぞ」


アスナは魔法を使わず、岩をつかむ、上る、つかむ、上る。


「ね、ねえ、ココア。崖のぼりって、アイドルの歌の修業に必要なの?」


私は尋ねた。アイドルの修業として崖のぼりって、冷静に考えたらおかしいのではないか?


「必要よ、崖を登るとき、体力を使うもの。それに崖を上るほど腕、脚の力を鍛える。息も思い切り吸わないと、力が出ない。他にも……」


「もういいわ、魔法を使って飛べばいいのに」


私は飛ぼうとしたが、ココアが止めた。


「ダメよ、そんなことしたら修行にならない。痛い思いをして崖を登る。間違って落ちたら飛んで回避する。一つずつ上ることに意味があるの。ナデシコ、もし、ずるをしたら、愛良ちゃん、悲しむだろうなあ」


その言葉に私の足、言葉は抑えられる。女が女に惹かれるなんて、ありえないのに。いや、変身する前の「大和」が彼女を好きなのだろう。


――え、変身前の自分がどんな記憶を抱いているのかわからないのかって?

うん、わからない。感じてはいるんだけれど、彼の言葉は私に聞こえないの。


「ほら、上りましょ、ナデシコ。愛良ちゃんはあなたの頑張りを見届けていますよ」


体が反応し、私は登る、早い、こんな力があったのかしら?


「私も負けないよ」


アスナが私より早く上る。


「アスナごときに負けていられない」


ココアも負けず、私たちは三人、並んで上る。崖の色が茶色から黒へと近づく。ふっと空に目をやると、青くなってきた。


「皆さん、頑張ってください」


マナテとカナセがポンポンを持ち、私たちを応援する。


「ほら、みんな。がんばれ、えいえいおー」

「カナセ、棒読みしない」

「マナテ、応援しないで、僕たちで修業をしようよ」


マナテはポンポンをカナセに向ける。


「応援も立派な修行。応援はドーターズの気力を回復させるために行うの。それにカナセ、後でご褒美としてベッドで……してあげるから」

「う、うん、頑張れお前ら、ほらほら気合を入れて上れえええ」


カナセは笑顔になり、動きも激しくなった。マナテは何をささやいたのだろう。双子が応援すると、私たちに気合が入ったのか、疲れがなくなった。早く、早く、すぐに登り切った。


「みんな、よく頑張った、次は――」


空が青から赤に変わり、トレーニング1日目が終わる。夢の世界でたくさんの運動をするとは。


「ナデシコ、お風呂に入りましょ」


ココアはタオルを持ち、素っ裸になっていた。赤身のあるお肌に私の胸は動かされる。


「ココア、変身を解かなくていいの?」


「ええ、1週間ほどキラメキドーターズとして活躍しますから。大和様として何か、やりたいことはありますの?」


特にない、と答える。ココアは私の手を握る。後ろからアスナが大きな胸を背中に当てた。弾力があって気持ちいい。


「早く入ろうよ」


由良が手をつなぐと、さらに胸が動き出した。風呂場は露天だ。赤い空が風呂のお湯をシアン色に染める。風呂は丸みを帯びた岩で囲まれ、すべすべした床、ラベンダーの匂い。湯船につかると、私にとってはちょうど良い温度だった。熱くもぬるくもない。


「ナデシコ、あの星空を見て」


アスナが空を指さした。キラキラ輝く星ばかりで、どれを指さしたのかわからない。


「私たちはあの星空から、キラメキの力を受け取っているんだよ。それをいろんな惑星に届けるんだ」


私は感心する。赤い空と対をなすように、星空は青白く輝いている。


「キラメキの力を届けると、お星さまがより強く輝ける。あの光を私たちは受け取って、力を得ていく」


「星空が消えたら、この世界は大変な目に合うもんね」


「そう、大和様が一度、気持ちを静めたとき、少しだけ星空に光がなくなった。その後、地球にいる『キラメキに似た力』を持つ人が、大和様に力を与えたから、この世界にいられるのですよ。といっても、ナデシコには伝わらないか」


ココアはじっと私を見る。そしておっぱいに手を当てる。


「ちょっと」

「大きいですね、ナデシコ。アスナや私よりも大きいのではないですか」


「だからって、さ、触られるとだ、だめ、くすぐったいの」

「へえ、くすぐったいんだ。だったらいじっちゃえ」


アスナも私の胸をもむ。


「あら、仲がよろしいこと。私も混ぜてください」

「あ、マナテ」


マナテとカナセが風呂場にやってくる。二人ともタオルで体を包んでおらず、むき出しの肌があった。マナテの胸はココアやアスナに比べると少しだけ小さい。成長したらより大きくなるだろう。12歳と聞いたとき、とても驚いた。一方カナセ、胸は平板だ。それもそう。彼女の下半身にはむき出しのかたつむりがあるのだ。彼は今、殻に閉じこもっている。


「な、何をじろじろ見ているんだよ」

「胸をみていらっしゃるのですよ」


マナテがニヤニヤしながら、自分の大きさを姉に見せつける。


「ふん、どうせ僕の胸は膨らみませんよ。馬鹿にしやがって」

「カナセ、胸を膨らませるなら女性ホルモンを入れないと無理だと思うの」


双子が喧嘩するのを見たくない。


「女性ホルモン、何それ?」


カナセが尋ねる。私はどう答えていいかわからなかった。ホルモンという言葉はよく聞く。しかし何を意味するかなど分からない。


「体を変える薬みたいなものよ」

「体を変えるかあ。変えたらマナテよりおっぱい、大きくなるかな」

「無理」


マナテが明るい声で答え、カナセに抱き着いた。カタツムリが目を覚まし、背伸びをする。


「カナセの胸はおそらくこのまま。膨らんでも私にはかなわないって」

「そ、そんなことない。絶対お前より膨らんで、僕は素敵な人になる。そうなれば、そうなればかっこいい人が」


「カナセの好きな人ってどんなタイプ?」


アスナとココアが声を合わせ、尋ねる。どうしてだろう、私の胸がものすごく早く動いている。うらやましいのだろうか。それとも恥ずかしいのだろうか。言葉が出てこない。


「いざという時に僕を守ってくれて、可愛さのある子かな。僕より可愛かったらこ、困るかも」


ちらりとマナテを見るお姉ちゃん。かわいいなと思った。あれ、風呂の温度、上がっていないよね。さっきからどんどん温かくなってくるんだけど、気のせいかな。あ、頭も痛いし。


「じゃあ私だね」

「馬鹿言うな、お前なんか一番嫌いなタイプだ。お仕置きって言いながら、い、いじるし。僕はそういうことをされるのが一番だ、大嫌いなの」


「へえ、その割にいっつも喜んでいるじゃない。ほら、みんなこうして見ている。カナセったら……」


マナテは私たちに見せつけるように、カタツムリの首をつかみ、耳元で何かをささやく。私にも何か聞こえた。体がますます熱くなる。視界は真っ黒く染まる。


「やめろ、それだけはやめろ」

「どうしようかなあ~ナデシコ、教えてあげますか。あ、大和さんのほうがよろしい……ナデシコ、大丈夫?」


「ほら、ナデシコがのぼせて、大和様に戻……」


俺、また死ぬのかな。

お読みいただきありがとうございます。

トレーニングは色々ありますが、やっている時は大変です。

次の話>> ではどうなっているのでしょう。

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