表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キラメキDaughters(ドーターズ)  作者: 千賢光太郎
3話:夢からいきなり現実に戻されたら、運気が落ちてひどい目にあった
13/55

一つの未来を取りこぼしても、次の未来がある

語り手は明日谷大和君、変身をする前の一人称は「俺」で、人前だと「僕」に、「キラナデシコ」に化けると「私」に代わります。

ではきらめく世界をお楽しみください。本日もお読みいただき、ありがとうございます。あなたに良きできごとが起こりますよう、心からお祈りします。

挿絵(By みてみん)


「大和君、大和君」


綺麗な月を見ていたら、由良がテレビから空間を割って入るように現れた。いつものように、ニコニコしておらず、涙を流して俺に抱き着く。


「由良」

「ごめんなさい、ごめんなさい。会いたかった」


由良は俺を抱きしめる。ぐるぐる回る。おっぱいが俺の顔を覆う。


「どうしたの、大和君、まだ怒っているの?」

「く、苦しい」


ごめん、正座をする由良。


「大和、どうしたの」


姉がやってくる。


「由良、隠れて」

「なんで」

「なんでって」


やばい、姉がすぐ近くに!


「大和、開けていい?」

「なんでもないよ、大丈夫だよ」

「……ふうん、何かあったらすぐ呼んでね」


俺は由良の口をふさぐ。何か話をしそうだったから。姉が自室に戻った。


「別に言ってもいいんだよ、大和君。あ、ごめん、師匠が呼んでいるんだ」


由良は俺の手を握り、アルムの世界へ飛んだ。アルムにたどり着くと、愛良が抱き着いた。ふんわりとした風が俺と愛良を包む。


「大和様、ごめんなさい。あの時、私が」

「い、いいよ」


愛良の顔を見て、俺は思い出す。週末のライブにて、ぽえぽえ7のチケットが取れるか?

当日券が出て、入れたらいいなあ。広や愛良ちゃんとはおそらく違う場所になるだろうけれど、それでもいい。


「大和さん」


マナテが手を振る。俺も答えた。


「大和、お前のだらしない姿、見ていたぞ。なんだい。ライブチケットが取れないからって、落ち込みやがって。それだから須田愛良も他の男に」

「カナセ、それ以上言って、大和さんを傷つけるのやめなさい」


マナテとカナセがにらみ合う。


「チケット一つ取れなかったからって、いじいじしてんじゃねえよ。次があるだろ、次が」


カナセの言葉が心臓にくる。


「大和君、私のせい」


由良が俺に抱き着いた。


「こら、カナセ、お仕置き」


マナテが姉の体をつねった。特に下半身をぎゅうっと握っている。むくむく膨らむ短パン。なんて幸せな顔をしているんだ、マナテの姉は。いや、そもそも「姉」なのか?


「大和」


恵麻はふふっと微笑んだ。


「カナセの言うことも一理ある。お前は一つがダメならすべてがダメとこだわりすぎだ。確かにチケットに行けず、悔しい思いをしているだろう。現実の愛良と一緒にイベントがいけない、行ったとしても席が離れている。いや、ほかの男に取られるかもしれない。焦る気持ちはわかる」


他の男という言葉に、俺の中にある心臓やかんが音を立てた。


「でも、一つの機会を逃したからといって、一生失うわけではない。今係いだめでも次がある。逃してはならないタイミングはここが知っている」


恵麻さんはおへそをさすった。


「ここらは丹田という。丹田が騒ぎ出したとき、お前は必ず言わねばならん。それを逃したら、しばらく大きなチャンスはなくなる。ま、いい勉強になったじゃないか。これも青春よ。ああ、懐かしい」


恵麻さんは空を見上げた。シアン色から少しずつ青色に向かおうとしていた。


「当日、ぽえぽえ7のチケットをとるのかい?」


恵麻さんが尋ねる。まさか彼女の口から「ぽえぽえ7」の名前が出るとは。心の中で笑いが起きる。


「はい。とれるかどうかわかりませんが」

「とれる。そう思いなさい。とれるかどうかでなく、取れると。取れなかったら、取れなかったとき。取れると考えなさい」


「師匠、強~い」


由良が俺の肩に手を当て、恵麻さんに目を向けた。キラキラ輝き、むふふと微笑む。


「人の幸運・不運を分ける体験根拠を述べたまで。いつどこで何がやってくるかわからない世の中だ。現実はもちろん、夢の世界でもそうだ。未来を考えても笑うのは鬼だけ。ただね、何かが起きてしまったとき、どう考えるかが今後を左右するのさ」


彼女がコンコンと杖で棒状の草を叩く。叩かれた彼はとても細く、折れたと思ったら、跳ね返して凛々しく立ち上がった。


「何かが起きたとき、もうだめだといえば、ダメな視点や考え方しか得られない。何とかなるといえば、何とかなる理由を探していく。チャンスといえばチャンスに気づく。自分にとって嫌なことが起きたとき、嫌だなあといえば嫌なことしか見ない。その気持ちが人生を大きく分けるのさ。大和、お前はぜひこの観方をつけてもらうから」


俺は足が震えている。嫉妬とは違う「清らかなマグマ」が沈んで情けない心を溶かしていく。恵麻さんは微笑んだ。


「覚えておきな、大和。それが大人になるってことだ。この草のように折れても学び、しぶとく生きな」


草は折れるたびに恵麻さんが持つ杖を叩き、立派に立った。俺、草に何を思っていたのだろう。詩人でもないのに。


3話が終わりました。次回は特訓になります。大和君が落ち込むと、アルムの世界にも影響を与える。困ったものですね。でもこれは私たちにも言えること。私やあなたが生きている裏で、誰かが頑張った結果が、あなたにも良い影響を与えようとしている、目に見えない、聞こえない存在の活躍に目を向けると、良いことが起きると考えていますよ。


次の話に入る前に、ブクマおよびランキングを押していただけるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ