ダンス教室のDJラム先生(語り:大和へ)
語りは愛良から大和へ戻りますl
一人称は俺、人前だと僕になります。
ではお楽しみください。
午後4時になった。俺は自転車に乗って、海沿い近くのダンス教室に向かう。ペダルが重たい。小学校4年生から週2回のダンス講習を受けている。元から踊るのが大好きで、母が勧めた。何度かダンス大会やイベントにも出場し、いろんな人と知り合いになった。2週間後、大きなショッピングモールでダンスイベントがある。入会者およびダンスイベントの集客を兼ねているんだ。
「YO,ヤマトゥ」
「Hey、Djラム」
ダンスの先生DJ(Dance Joyの略)ラムが声をかける。本名、向井楽太郎。赤い髪の毛を炎のようにツンツンたて、ゴツい肉体に焼けた肌。いつもサングラスをかけており、目玉から赤い炎が見える。火の中で踊り、炎を出して聴衆者を魅了させる。DJラムの熱意だ。なので、手を握るだけで、俺も一気に汗ばんでしまう。ラム先生から熱意をもらい、気分が高まる。
「先生」
「お前、煩悩たまっているな。そういう時は適当に踊るんだな、1234(イチニサンシ)ーング、燃えろ、バーニング」
先生が腰をキレッキレに動かし、「ヒョオオオ」声を出して、回る。彼が動くと、俺も体を動かしてしまう。理由は今でもわからない。
「DJラムが踊っている。早く参加しようぜ」
「先生、私たちも混ぜて」
「オーケーカッケー風呂オーケー、コイヤ ソイヤ セイントセイヤァ」
先生に合わせ、俺を含む生徒たちが自由に踊る。俺は激しく回る。忘れたい。自分が不幸だという事実から忘れたい。ぽえぽえ7のチケットが取れなかった現実。愛良ちゃんが他の男子と仲よく話をしていたような、自分の嫉妬。醜く燃える炎を熱で溶かし、天井を突き抜けて、炎龍を呼び出しそうだ。ああ、高く舞い上がりたい、太陽を食らいつくしてやりたい。
「みんな、燃え上がったな、さあ、レッスタート」
先生の指導にそって、俺たちはダンスを学び、イベントまでの微調整を行った。
「ダンスは魂だ。心を燃やせば体も自然とついていく。ダンスは生きざまだ。全身全霊を込めて命を懸ければ、音楽はお前を支援する。ダンスは明日への希望だ。命を懸けて表現しろ。そうすれば、きらめく力も発し、人々に愛されるダンサーとなる。いっけええええええ」
巻き舌でラム先生は激しく回った。俺たちもその後に従う。
「ヤマツゥ、忘れちまえ、未来への不安、恨み、嫉妬、すべてダンスに昇華しろくろ首。高く回って天まで届け」
……すっきりした。レッスンが終わり、帰ろうとすると、ラム先生が俺の肩を叩いた。
「ヤマトゥ、お前、今日は消し炭になっていたから、燃やしてやったジェイ。何があったか知らないが、くすんだ気持ちは踊って大声を出セイヤング。俺がお前にアツキ魂をやったからよぅ、後はお前の情熱だけだ。燃えろ。燃えてお前の好きな女の子に告白をしち前田のあっちゃん。されば望む未来をゲッツ星人。俺の知り合いのおばさんが言ってたヨースケサンタマリナ」
ラム先生の言葉、あんたには笑い話、頭のおかしい人としか感じないだろう。でも俺は昔からこういう形で熱き魂を受け取っている。だから心が今、感動して泣いている。
「ヤマトゥ、家に帰ったらお前がどんなことをしたいのか。どうなりたいのか、誰も聞いていなくていいから言葉に出しナン。自分が思っている言葉を声に出すかどうかで、現実は変わるのサブサップ。待ってるぜ、待ってるジェイ、お前の天使が泣きながら待っているシェイ、8時だJ(昔、あったんだよ、そういうタイトルのテレビ番組が)」
俺は返事をした。さっきより声が高くなった気がする。
「いいねえ、いいねえ、その笑顔、さあもう一度ダンシーング」
ラム先生と二人で踊って30分後。ダンス教室から外に出る。お月様がきれいだ。虹が現れないが、気にしていない。ラム先生に気合を入れてもらったせいか、俺はもう一度、今度こそ、絶対、行く。当日、ぽえぽえ7のチケットを取って愛良ちゃんと、愛良ちゃんと出会えたら、いいな。その前に、告白、で、できる。た。たぶん。できなかったらごめん。
お読みいただきありがとうございます。
運気が下がるとき、どんなことがあっても「斜め」に構えてみてしまいます。
そういう時、ラム先生のように踊りながら、何も考えないことで、
余計な思考が省かれ、楽しいことに気づくでしょう。
あなたに良き運があらんことを。
気分がよくなった後、次の話>> では由良が飛んできます。