大和様のきらめきを取り戻します(語り:愛良)
ここから語りは「愛良」になり、一人称は私です。
今日もお読みいただきありがとうございます。
「ふええええええええええんんんん」
由良が目をキラキラ輝かせ、のどちんこを見せて泣いている。マナテが「よしよし」甘やかしながら、彼女の頭を撫でていた。
「コンサートホールに男性を連れて行ったら、容赦なく追い出されるといったのに」
私はため息をはく。カナセが腕組みをした。
「ドーターズライブも急きょ中止。損害は生じないからいいけれど、由良の心にある違約金がかさんでいく」
由良は雲も避けるような声を出した。
「あの金髪女、怖い、鬼。どうして大和君をあっちの世界に追い出すの」
「あなたねえ」
由良の頬をつねった。
「規約にあるでしょ。男性は絶対に連れてきてはならない。男を連れて来るなら、女の子の姿として入れなさいって。だからホールに入る前に変身をしなさいって言ったのよ」
「忘れたもん、規約なんて少しくらい破っても、だ、大丈夫だと思ったもん」
反省しない態度に、イラつきはさらに増す。
「規約くらい読みなさいよ。みんなに迷惑をかけるのよ、由良」
「そのくらいにしてください、愛良」
優しい瞳で私を見るマナテ、私の手をつかむカナセ。
「愛良、由良はまだ何も知らない子供」
「し、失礼な。わ、私だって知っているよ、カナセ」
由良が目を充血させながら、手で涙をぬぐった。
「じゃあどうして大和様を変身させなかったの? 由良がきちんと言っていれば、浮かれていなければ、こうならなかった」
「だって、だって、だってえ~」
由良が大声を出して泣きだした。大和様が見たら、幻滅するだろう。頭が痛くなる。
「とりあえず、師匠に報告すべきではないかと」
マナテが由良の頭を撫でた。彼女は由良より2歳年下、しっかりしている。
「そうね。でないと私たちだけでなく、大和様も不幸な人生を歩んでしまう」
私がはっきり言うと、由良は軽くうなずいた。
「由良、とりあえず鼻水を拭いて」
私はティッシュを由良に渡した。ぐしゅぐしゅ鼻をかむ彼女に可愛さといら立ちを感じた。マナカナが魔法を唱え、スピカからアルムへと戻る。恵麻師匠が驚いたお顔で私たちを迎えます。
「……大和が覚めてしまったのか」
由良は泣き止んだものの、顔が真っ赤になり、氷魔法で頭を冷やしている。
「大変危険な状態だ。みんな、兆候がすでに出始めている」
師匠は魔法をかけ、画面をお出しになりました。大和様が胸のあたりをぎゅうっと押さえつけております。「現実の私」はぽえぽえ7の話で盛り上がっている。
「どうすればよいのですか」
「そうだねえ、この中で大和に声を届けられる子は由良だけだ。愛良、お前は現実の愛良に声を届けられる。かけてごらん」
私は右手人差し指で空間にひし形マークを作り、静かに祈る。ひし形から光が現れる。私は語る。
「大和様とお話をしてください」
しかし「現実の愛良」はぽえぽえ7の話で盛り上がっている。私の言葉に耳すら貸さない。
「ああ、私の声を聴きなさい、愛良」
けれど、彼女は「そうそう、そこでだーんす」バカ騒ぎをしている。大和様の瞳がどんどん濁っている。私は立ち上がり、ぐるぐる回る。師匠が私の肩をお叩きになった。
「焦っても仕方ない」
「みんな、ごめんね。大和君、ごめんなさい」
由良が頭を下げる。「現実」の映像をまばたきせずに見る。もし大和様の気持ちがずっと沈んだままだと、この世界にも影響を与える。いや、私や由良からキラメキの心が失われ、このままでは……と、電話音が激しくなる。師匠が応対なさる。
「お前たち、活動だよ」
私は背筋を伸ばした。
「場所は先ほど行ったスピカ、お前たちが歌うはずだった場所。そこで心が凍えてしまった子がいる。今すぐ彼女を温めてあげるんだ。もちろん、お前たちの踊りで。『キラメキの力』を最大限に高め、『希望』を出せば、大和の周りにも変化が現れる。由良」
由良は張り切った声をあげ、返事をした。
「今すぐライブ会場に行き、お前の中にある『キラメキの力』を高めるんだよ」
お読みいただきありがとうございます。
人間、誰でも取り返しのつかない失敗はするでしょう。
でも大失態を行ったから、人生も大きく変わるのです。
失敗は悪い結果ばかりじゃありません。
由良にはどのような影響を与えるのでしょう。
次の話>> で二人の活躍をお楽しみください。