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パーティ『赤き牙』

 アベルはとりあえずロビーに向かった。当然のことながら、猫人びょうじん族の女の子もついてきた。なんだか後頭部のあたりをじっと見つめられている気がして、アベルは居心地が悪かった。

「...あなた、名前は?」

 唐突に名前を尋ねられ、アベルはびっくりしてしまった。思わず振り返ったせいで目の前の柱に気がつかず、思いっきり側頭部をぶつけ、頭を抱えてうずくまる羽目になってしまった。

「何やってるの...」

 彼女はちょっと呆れつつ、アベルが復活するのを待ってくれた。

「...えっと、アベルと言います。」

 アベルは涙目になりつつも、何とかそう返事した。

「私はミルリーよ。よろしく。で、あなた、何で冒険者になったの?」

 ミルリーは唐突に、そして不思議そうにアベルに尋ねた。

「え? 何でって...」

「あなたみたいなのは、冒険者になってもすぐ死にそうだからよ。剣術も魔術も全然だし。」

 ミルリーは腕を組み、少し睨むような表情で、アベルを上から下へと見た。

「...別に僕が冒険者になるのは君には関係ないことだろう?」

「関係あるわよ。パーティメンバーが使えないやつじゃ困るでしょ?」

「へ?」

 アベルは困惑した。冒険者タグも受け取っていないというのに、いつの間にやらパーティメンバー扱いされていた。

「もしかして、知らないの? 普通冒険者になったら、そのとき試験で一緒だった人とパーティを組むものよ。新人をホイホイ入れてくれる既存パーティなんて、そうそうないのよ?」

 アベルは愕然とした。言われてみれば、そんなものかもしれない。

「普通試験は何人か集まってからやるものらしいけど、今回は私とあなただけみたいね。最近は冒険者のなり手は減っているのかしら?」

 ミルリーはそう言うと、まだ愕然としているアベルを追い越してロビーに向かった。アベルもまだ愕然としつつも、慌ててミルリーを追ってロビーに向かった。


 ロビーはだいぶ人が増えていて、空いている席は数えるほどしかなかったが、そんな中をミルリーは迷わず隅の方の席に向かった。アベルはとりあえずどうしたらわからなかったので、ミルリーについていった。

「お疲れ様です。」

 ミルリーが向かった席にいた犬人けんじん族の女性が、ミルリーに気づくと素早く立ち上がり、声をかけてきた。

「タリア、ただいま。試験は特に問題なかったわ。」

 ミルリーはそう言いながら、タリアと呼ばれた女性の向かいに座った。アベルはどうしようかと少し迷い、とりあえずミルリーの斜め後ろに立ってみた。

「で、彼が同期のアベル。試験は他には彼しかいなかったわ。」

 若干投げやりな感じで、ミルリーはアベルを紹介した。

「私はタリアと申します。よろしくお願いします。」

 タリアはアベルに向き直ると、自己紹介をした。

「あ、アベルと言います。よろしくお願いします。」

 アベルは戸惑いながらもそう答えた。

「タリアは私の魔術の師匠兼パーティ『赤き牙』のリーダーよ。星四つの実力者なんだから。」

 ミルリーは自慢げにタリアを紹介した。ちなみに、星とは冒険者の大まかなランクを表すもので、初心者は星なし、初級者が星一つ、中級者が二つから四つ、五つ以上は上級者という感じで、冒険者ギルドが認定しているものである。巷では星が一つ増えるごとになれる人はだいたい半分になると言われている。

「当面のポジションは、私が前衛でタリアとあなたが後衛ね。まあ、あなたは運び屋ね。戦闘以外は色々よろしく。」

 ミルリーはさっさと役割分担を決めてしまった。アベルは呆れながらも、今の自分は戦闘に向いていないのは何となく感じていたので、そのまま受け入れることにした。

「まあ、とりあえず座って。聞きたいことがあるから。」

 ミルリーは自分の隣の席をポンポン叩きながら、アベルにそこに座るよう言ってきた。アベルが座ると、

「さて、何から聞こうかしら。」

ミルリーはニヤリと笑って見据えてきた。そこから小一時間、アベルはミルリーの質問攻めに会い、ぐったりする羽目になったのだった。

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