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出会い

 翌日。アベルは朝鐘前(七時前)には目が覚めていた。時間の確認のために食堂の魔力時計を見に行ってみると、食堂では既に朝食を食べているグループが一組いた。ふと昨晩は何も食べずに寝てしまったことを思い出し、朝食はどうしようかとボーッと考えたが、特に何も思いつかなかった。

 時間を確認した後は、あてもなくふらふらと宿を後にした。宿の前でどちらに向かうか少し悩み、とりあえずは中央広場に向かうことにした。


 中央広場は屋台が結構出ていた。何か式典があるときのみ屋台が撤去され、広場として使われるらしいが、まだ普段の早朝といえる今は、開店準備をしている人をちらほらと見かける程度ではあったが。

 広場の北側にはちょっとした噴水があり、更にその北側に冒険者ギルド、ゲイル支部が門を構えていた。噴水の周りではトレーニングをしている、若い冒険者らしき人が何人かいた。

「お、新入りか?」

 アベルがトレーニングの様子を物珍しそうに眺めていると、ちょうどシャワーがわりに噴水を浴び終わった狼人ろうじん族と思われる若者に声をかけられた。黒目黒髪で、昨日の狼人族の戦士よりかなり若いようだった。

「あ、はい。今日ギルドの説明を受ける予定です」

 アベルは慌ててそう答えながらお辞儀をした。

「おお、本当に入りたてほやほやなんだな。俺はルイ。星は二つ。『鋭き牙』のリーダーをやっている。」

 ルイはそう言うと、右手を出してきた。アベルは慌てて右手を服で拭って、ルイと握手した。ルイの手のひらはとてもゴツゴツしていた。これが噂に聞く剣ダコか、とアベルは感心した。

「アベルです。よろしくお願いします」

 アベルが挨拶すると、ルイはニヤリと笑った。

「これも何かの縁だから、一つだけアドバイスしておく。冒険者で生き残りたかったら、まずは体力をつけておけ。大抵この時間にトレーニングしているから、気が向いたら俺達と一緒にしてもいいぞ。」

「は、はい。ありがとうございます」

 いきなりの提案にアベルは戸惑った。しかし、確かに冒険者は体力が要りそうなので、素直に混ぜてもらうのもいいかな、と考えた。

「俺も昔はこんなふうにアドバイスされてなぁ。それに従ったから生き残れたと思ってる」

 ルイは腕を組んで、ちょっと空を見上げてそう言った。

「あと、ここは早朝なら水が使い放題だから、便利だぜ」

「ルイー、朝ごはんに行くよー。」

 声のした方を見ると、ちょっと離れたところにいた犬人けんじん族の女性がルイを呼んでいた。金髪で少しぽっちゃり気味で、容姿はあまり冒険者ぽくはなかった。アベルがなんとなく見とれてしまうぐらいには美人だったが。

「おっと、朝ごはんか。それじゃな。」

 ルイはしゅたっという感じで右手を上げると、仲間に合流して去っていった。

 アベルはルイと犬人族の女性を見送った後、自分も朝食を食べるかと、店開きしている屋台を探し始めた。


 しばらくうろうろしてみると、早朝から開いていた屋台が見つかった。パンにちょっぴりのハムと野菜の簡素なサンドイッチを食べた後、アベルはとりあえず冒険者ギルドの様子を見ておくことにした。試験までまだ時間があり、他には特にすることが思いつかなかったからではあったが。

 冒険者ギルドの中は、思ったよりは静かだった。冒険者も、掲示板の前に少し人だかりができていたのと、ロビーの隅で飲み物を飲んでいる竜人りゅうじん族の男性がいるだけだった。竜人族はこの辺では珍しい気がと思って様子を見ていると、突然その竜人族の男性が立ち上がり、アベルの方へダッシュしてきた。よく見ると、モノクルを掛け、顎には白いひげが生えていた。

「お主、新人じゃな?」

 その男性はアベルの目の前で急停止すると、唐突に質問してきた。

「あ、はい。昨日...」

 アベルの返事が終わるのを待たずに、その男性はニヤリと笑い、更に早口で話しかけてきた。

「やはりな。わしの目に狂いはなかった。まあそれはいいとして、お主の名前は?」

「あ、アベルです。よろし...」

「おお、アベルか。わしはアンスガーじゃ。ここの創設から冒険者をやっておる。ここの生き字引と呼ばれてもおるな。まあこれもまた何かの縁じゃ。一つアドバイスをしておく。冒険者で生き残りたかったら、まずは知識を蓄えるのじゃ。わしは大抵この時間にここでお茶をしておるから、気が向いたらいろいろな話を聞かせてやれるぞ」

 早口でのいきなりの提案にアベルは戸惑った。確かに冒険者は知識が要りそうなのでいろいろ話を聞かせてもらうのもいいかな、と考えた。

「アンスガー、今日の仕事決まったよ。」

 声のした方を見ると、猫人びょうじん族の女性がアンスガーを呼んでいた。白と茶と黒が混ざった珍しい髪の色で、アベルはしばらく見とれてしまった。

「おっと、仕事じゃ。それではな。」

 アンスガーはしゅたっという感じで左手を上げると、仲間に合流して去っていった。

 アベルは猫人族の女性を見送った後、とりあえず自分も仕事を見ておくかと、掲示板を眺めてみることにした。


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