お見舞いに来た田口くんの方が 何故か病人状態に
先程より少し雨足が速くなった その雨音に耳を澄ませながら
僕は志保子さんの女の子らしく可愛らしい部屋で 何やら良い香りがするので
クンクン匂いを嗅ぎながら 凶暴な風貌の熊のぬいぐるみ達に囲まれていた
そして僕は 昭和のヤンキーのように「やんのかコラ!」なガンを
ぬいぐるみに飛ばしながら この熊達が「くまのパディントン」の
主役キャラクターだった事を思い出す
「熊のパディントン」とは イギリスの作家マイケル・ボンドの児童文学作品で
このクマがイギリスにあるパディントン駅で 鞄の上に座っている所を
ある夫妻が発見し クマのコートには「このくまをよろしくお願いします」と
書かれた札がついているのを見つける
そして名札に書かれていた 彼の名前が発音しにくいので 一家は彼の事を
出会った駅名をとってパディントンと呼ぶことにし 自宅へ連れて帰ると
仲良く一緒に暮らしながら マーマレードが大好きな「パディントン」との
ドタバタ騒動が綴られていくという お話だった事を思い浮かべる
確か沙智が大好きで四年生の時に 夏休み沙智の家に遊びにいった時に
五時間かけてシリーズ全巻読まされた事を思い出し 嫌な汗が背中に流れる
僕はただ夏休みの宿題で 苦手な算数を写しに行っただけだったのだが
沙智の読まないと写させないという 悪魔の取引に乗せられて
女子供には逆らえないを まんまそのままに読み続けていた気がする
まあ面白かったから良かったのだが・・
そんな事をつらつらと思い出していると
志保子さんは麦茶のグラスを 手持ちカゴに入れて運んで来てくれた
それを見て僕は あれなら両手が塞がらないから
片手で壁や家具を使って歩く事が出来るので 便利だな・・と考えていると
志保子さんがグラスを差し出してくれたので お礼をいって受け取り
彼女に促されて半分ほど飲むと テーブルにおいて一息つく
そこで僕は自分の隣でまだ座らずに立っている 志保子さんに気が付き
何で座らないんだろうと 不思議に思って彼女を見上げると
彼女は顔を真っ赤かにして 潤んだ目で俯いているのが目に入り
何かしちゃったかと思わずびっくりしてしまう
「ど・・どうしたの?」と恐る恐る尋ねると
彼女は潤んだ瞳をこちらに向けて 少し震えた声で
「見ないでね・・」と 小声で伝えてくるので慌ててしまうが
何が何だか分からない僕は どうしたら良いのかわからず黙っていると
彼女は僕の目の前に場所をかえて来るので 場所をあけるため
思わずソファーに深く腰を掛け直す
すると彼女は屈んで 自分の着ている旅館浴衣の裾を 両手で摘むと
少しずつ持ち上げていくのが分かり さらに慌ててしまう
身体が小柄な彼女には 少しサイズが大きいのか 足首まで隠していたそれを
少しずつ持ち上げていく彼女の姿に 僕はただ呆然としてしまい
何も言えずに見ている事しか出来ずにいたが
目はしっかりと 彼女の白いなめらかな肌を見つめる事を忘れない
薄橙色の旅館浴衣の下にも 白い少し透けている 確か湯着と呼ばれるものを
着ているようで それが更に彼女の浴衣姿を 艶めかしく感じさせており
僕は つい開いてしまいそうになる口を何とか閉じる
また彼女から「見ないでね・・」と 泣きそうな声で伝えられるが
そんなのは正直いって不可能である そしてそんな無茶なと思いつつ
「う・・うん」と返事はしたものの 僕は目を片時も彼女から離す事が出来ず
自分の飲んだ唾液のゴクリという その音に 自分で驚いてしまったくらいだ
ゆっくりと両手で摘まみあげられる裾は もうその可愛らしい膝小僧をすぎて
白く柔らかそうな太ももの 半分くらいまで上がっており
アニメなら そろそろ大量に湧き上がる湯気が仕事して隠すか
どこからともなく黒い〇が現れて その白く美しいふとももを隠しても
可笑しくない状態である。
ただ放送時間によっては もう少しいけそうだと思いながら
僕は一旦冷静になろうと 現状を正しく認識するために
今起こっている出来事を 頭の中でまとめてみる事にする
夏の夕暮れ迫る時間帯に 外から耳の届く雷の鳴る音と雨音に耳を澄まし
彼女のお家の彼女の部屋で 明るい色合いのソファーに腰を降ろしながら
とても品の良い旅館浴衣と長羽織を その小柄で華奢な肢体に纏っている
可愛いらしい自分の彼女が 両の手の細い指先で浴衣の裾を摘んで
ゆっくりとじらすように持ち上げ その白く柔らかそうな太ももを
自分の目の前で 顔を真っ赤にしながら少し震えて晒している
まとめて余計にやばくなった自分の正気を 何とか保とうとはするが
目が少しチカチカするし 頭はクラクラするしで お見舞いに来た僕の方が
何かもう病人みたいな状態になってしまっていると
「おじゃま・・します・・」と 彼女の震える声が聞こえてきたのだった