くまのパディントン
予定より志保子とのあれまでの前置きが長くなったので
修正後 投稿します
先程より少し近くで聞こえてくる雷の鳴る音と、
降り出した、まだ小ふりな雨の音に耳を傾けながら
志保子さんの手にひかれた僕は、彼女のうなじの白さに目のやり場に困り
俯くと僕の手を握る彼女の小さく華奢な手を見つめる。
こんな小さくて華奢な手なのに、あの握力は一体何事なんだろうと思い
あんなのが罷り通るなら「宇宙の法則が乱れる!」などと考える。
そんな風に自分に冗談でも飛ばさないと、玄関でした抱擁の感触が忘れられず
彼女を無理にでも抱きしめそうで、それで彼女に嫌がられたら嫌なので
何とか抑えられない気持ちを鎮めようとする。
そんな頑張ってモヤモヤする気持ちを我慢している僕に
今度は、彼女から香る鼻をくすぐる素敵な香りに目が回りそうになる。
あの手この手で、僕をメロメロにする彼女の女子力の高さに戦慄しながら
この香りは確か・・織部くんのお姉ちゃんが良い香りだからと
僕の鼻に近づけてきた 綺麗な形の小瓶に入れられた香水で名前は・・・。
痺れた頭で、そんな事を思い出しつつも、玄関口から台所を抜けて
更に居間を抜けて扉を開けようとする、彼女に気が付き思わず
「志保子さんどこいくの?」と尋ねてみる。
その僕の質問に、彼女は僕の方に振り向くと「わ・・私の部屋だよ・・」と
少し頬を赤くしながら小声で返してくる。「えっいいの!?」と
思わず叫びそうになり「はっ!」と気がついて頷くだけに留める。
下手なことをいって「じゃあやめとく」などと言われたら困るからだ。
ハンターハンターの質問ばーさんの答えが「沈黙」だった事を
思い出したからでもある。ハンター試験対策はバッチリである。等と
どーでも良い事に頭を使いながら、何とか保ててない正気を保ちつつ
彼女の後について扉をくぐり、彼女のお部屋にお邪魔する事になった。
そこは六畳間くらいの洋室の、女の子らしい可愛らしく飾られた部屋で
僕はキョロキョロと見回し、少しというか凄く気になった事を彼女に聞いてみた
「あの・・・何でこんなに熊だらけなの・・?」と
僕の言葉に、彼女はきょとんとした顔で、僕の顔を見直すと
「す・・好き・・で?」と、何故か疑問形の返しに僕は返答に困り
「そ・・そうなん・・だ?」と、こちらも負けじと疑問形で返答を返す。
そして彼女は二人掛けサイズの背もたれつきのソファーに僕を座らせると
お茶を入れてくると僕に伝え、手伝いをするという気が利く僕に
「座ってていいよ」と、お座りを命令して部屋から出ていった。
僕は、自分の周囲をその圧倒的な戦力で囲むクマたちを見渡し
これは一体全部で何匹いるんだと思い数えてみることにする。
壁一面ならば、壁の一方向に一杯だから、まだ可愛い方だが
壁四面すべてが熊のぬいぐるみで埋め尽くされており
その数も少なく見ても三百熊くらいは余裕であり
六畳の半分は熊のぬいぐるみで占拠されている。
大きさも手乗りサイズから、志保子さん当人と同じくらいのサイズのも
僕の真向かいで、その猛々しい瞳で僕を見詰めているのである。
たしかコレって「くまのパディントン」だっけと
真向かいのデカイ熊のぬいぐるみと、見つめ合いながら考えていると
「お・・おまたせです・・」と
志保子さんが戻ってきたのだった。
でわ次回で