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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
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恋人のように

「とても優しい良いお友達ですね!」


「出会いの海の大水槽」へと続く 少し照明が落とされた薄暗い通路を 

私は田口くんに手をひかれて ゆっくりとした歩調で歩きながら 

先程 撮影スタッフのお姉さんに言われた言葉を思い出していました。


私達くらいの年齢では仕方ないかも知れませんが 

やはり大人の人から見れば そういう風には見てもらえないようです。


「そんなに子供っぽいかな・・」と自分の姿を確認して見ることにします


アクアブルーのフレアスカートに練乳色のカーディガンを合わせて

髪留めもスカートに合わせた物を身に付けており 私の持っている

余所行きの服の中では それなりにシックなものを選んだつもりなのですが・・


これは多分・・彼が年齢にしては大柄なせいなのです。じゃあ違うか・・

私は多少・・年齢にしては背も低く彼の顎下辺りに私の頭の天辺があるのですが

これでも背の順では前から二番目なのですから・・・と考えて


やっぱりダメか・・・と思います 

私が子供っぽいから・・なのかと悲しくなります。


手は繋いでいるのに・・と思いますが 私達の年齢では学校行事の際も 

よく男女で手を繋ぐことはあるのでいまいち有り難みが薄いのです


まぁ彼の大きな手に包まれている自分の手の感触はとても心地よく

嬉しくもあるのですが。


私はそんなモヤモヤとした気持ちで 

自分達と同じように通路を歩く他の人達に視線を泳がせると 

私達の少し前を歩く高校生くらいのカップルの姿が目に入ります。


二人はとても仲良さげに腕を組みながら 楽しげにお喋りをしているのです

その姿を見て私は「あれだ!」と思いました「あれしかない!」でもありです


決心した私は横目で彼を伺うと 彼は周りの光景を楽しそうに見回しており

なんと声を掛ければ良いのか見当もつきません


「腕を組んでいいかな・・」や「腕を掴みたい・・」など考えるのですが

その言葉を口に出すのはどうにも気恥ずかしいのです


なので強引にいくことにしました


休憩用のソファーが置いてある部分は 通路から見るとへこんでいるように

見えるので まずは彼を強引に押し込むことにしました


彼の「なにっ・・なに・・お・お金なら・・」と言う

良く分からないセリフは この際スルーするのです


何やら怯えている感じの彼に 私だって頑張ってるんだからと

少しムッとしつつも なるべく可愛らしく聞こえる声で

「田口くん・・ちょっといい?」と呟くと

「ちょっとじゃなく ずっといいですよ!」と

彼は元気な笑顔と弾んだ声で答えを返してくれるのです


その言葉に可笑しくなって私はつい笑ってしまい「ちょっとごめんね」と

握っていた手を そっと手離すと「そ・・そのちょっとはちょっと・・・」と

悲しそうな声で嬉しくなる事を伝えてくれます


嬉しくてつい溢れてしまう笑顔のまま 彼の右腕にするっと

自分の左腕を絡めてぎゅっとした感じで腕を組むのです


胸元に当たる彼の腕に少しだけ気恥ずかしさを感じながら

恥ずかしさできっと真っ赤になってる自分の顔を見られないように

彼の肩口に顔を埋めるようにしながら「こうしてても・・・良い?」と

つい上ずってしまう声で囁きます。すると彼も私と同じくらい上ずった声で

「ずっと そうしていて下さい・・」と言ってくれるのです。


幸せで声が出ない私は 彼の肩に頬を擦りつけるように頷きつつ

今いる場所の反対側にある姿見に映る自分達の姿を見て

「こうしてると 恋人みたいだね・・」と 思わず呟いてしまいます


私の頭のちょこっと上の方から「恋人なんですけど・・・」と

彼の少し悲しげな声に また嬉しさが込み上げ顔をあげて

つい弾んでしまう声で「そうでした!」と明るく答えると


ほんの少し恋人らしい感じになれた私達は 通路に足を進めるのでした




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