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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
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オリンピック代表を目指す選手を見守る監督

写真撮影スタッフのお姉さんに 上手に撮っていただいた写真を

二人で仲良く見直しながら「なんか少し変な顔で写ってる・・」と 

落ち込んでいる志保子さんに 僕はちゃんと可愛らしく写ってるよと伝えると 

少し照れくさそうな表情をしている彼女に 現像したら手渡すねと約束をする。


そうして志保子さんに手を引かれ 促されるまま入場ゲートを潜り

「出会いの海ゾーン」に続く 少し薄暗く照明が落とされた通路を 

二人で手を繋いで歩いていくと 僕は彼女に途中の少しへこんだ部分に

軽く押し込まれるような感じで連れて行かれたのだった。


「えっ何!カツアゲ!?」と 慌ててしまった僕だが彼女に

「ちょっと飛んでみなさいよ!」と 可愛らしく脅される前に

気を利かせてジャンプをする準備をしていると 志保子さんが小声で

「田口くん・・ちょっといい?」と聞いてきたのである。


その可愛らしい彼女の言葉に僕は思わず

「ちょっとじゃなく ずっといいですよ!」と元気に答えると

彼女は僕の顔を見て可笑しそうに笑いながら 繋いでいた手を手放すので

また思わず「そ・・そのちょっとはちょっと・・・」と

名残惜しげな声で苦情申し立てをすると また可笑しそうに笑いながら

僕の右腕にするっと自分の左腕を絡めてきて ぎゅってな感じで腕を組み始める


「む・・胸が 当たってるー!」と思い 「はわわ・・」な感じで

僕は胸をときめかせるが そこは残念無念の小学五年生の女子である。 


ただでさえ小柄で華奢な志保子さんの胸元は

余りふくらみを感じさせる事はないのである。


「後 三年後いや・・四年後ならば彼女も・・」などと

オリンピック代表を目指す選手を見守る監督のような気持ちでいると 

志保子さんは「こうしてても・・・良い?」と

僕の右肩に小さく形のよいおつむを押し付けながら小声で聞いてくる。


「くふぅ~!」と漏れてしまいそうになる吐息を 僕は何とか堪えながら

「ずっとそうしていて下さい・・」と少し緊張気味に答えると 

志保子さんは僕の右肩に 頬を擦りつける様に頷きながら

「こうしてると なんか恋人みたいだね・・」と静かな声で呟くのである。


とっくに恋人同士だと思っていた僕は「えっ違ったの!?」と驚いて 

少し動揺しながら 自分の右腕に腕を回す志保子さんを引き寄せると

「恋人なんですけど・・・」と つい恨み声で呟いてしまった。


そんな僕の悲しみに満ちた言葉に 志保子さんは口元を綻ばせつつ顔をあげて

こちらを向くと 声を弾ませて「そうでした!」と明るく弾んだ声で答え


僕を促すように通路に足を進めるのだった。




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