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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
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形になった素敵なモノ

「そういえばお母さんが 志保子さん見たいから今度連れておいでって!」


その言葉を聞いて私は彼のご両親に会ってみたいとは思います

二人で歩くときには きちんと私の歩調に合わせゆっくり歩いてくれたり 

どこかに着いた時には まず周囲を見回し座れる所を探してくれたり

自転車の荷台の件でもそうですが 本当に気遣いが出来る優しい彼のご両親は

一体どんな方達なのだろうと思うからです


その反面・・自分の姿に少し引け目を感じている私が 

御二人に会うのは気が引けてしまう気持ちもあり返事に悩んでしまうのです


多分そんな気持ちでいる事が態度に出てしまっていたのか

彼は「えっと・・・志保子さんが 気が向いたらで良かったら・・」と

少し困った表情で口篭もりながら言うのです


その姿を見て私は彼の表情を曇らせてしまった事を後悔して

でもやっぱり自分で良いのか気になるので「私で良いの?」と小声で聞くと

「勿論だよ」と彼は優しい口調で言ってくれるのです


「じゃ・・じゃあ 近いうちに・・」と答えると

彼は嬉しそうに頷いてくれました。


その温かみのある言葉と表情に 私は嬉しくなり彼の手をひいて先を促し

そうして入場口でチケットを切ってもらうと「透明スタンプ」なるものを

手の甲に押してもらい 二人で「なんかすごいね!」とはしゃぎながら

入場ゲートを潜ったのです


ゲートを潜った先には 記念撮影用の綺麗に飾り付けられたモニュメントがあり

そこで入館者の写真を撮るサービスをしている スタッフさんの姿を見た彼が

「志保子さんと二人で写真が撮りたい」と

言うと私を見つめるので ほんの少し自分の右足と歩行杖に視線を泳がし

「その・・私で良ければ・・」と少しかすれ気味な声で返事します


彼は私の態度に少し考える仕草をすると 私の手をひきホールのソファーに

座らせてくれ「頼んでくるから 待ってて!」と告げてから

写真を撮るサービスをしているスタッフさんの所へと走って行きました


その後ろ姿を見ながらほんの少し薄いタメ息をついてしまいます


私は自分の立ち姿が余り好きでは無いのです。

右足に重心を掛ける事が出来ないので

姿勢がどうしても少し傾いた感じになってしまいますし 

良く使う左足の方が少しばかり右足より太くなっているのです


年頃の女性と云うにはまだ幼い私ですが それでも自分が好意を抱いている

男の子にあまり見目が良くない姿を見られるのは嬉しくはありません


「座り姿なら良いのだけど・・」と

撮影場所を見てみますが 腰を降ろす椅子などの用意は無いらしく

みんな立ち姿のまま撮影をしている様子なのです


どうすれば少しでもマシに見れるように 写真に写れるかで悩んでいた私が

彼の姿を目で追ってみると 彼が一番綺麗な女性スタッフさんに

声を掛けている姿が目に映り 私はほんの少しムッとしてしまうのでした


「私がこんな風に悩んでいるのに・・」と思うと 

つい恨みがましい気持ちになってしまいます 少しして戻ってきた彼を

ジト目で見ていると彼は少し困った表情と声でそんな私に


「あの・・余計なお世話だったかもだけど 椅子を用意してもらったから 

座って一緒に写真を撮ろう」と伝えてくれるではありませんか


彼の言葉に驚き 自分がそんな彼を恨みがましい気持ちで見ていた事に

恥ずかしくなり顔が羞恥で染まっているので 彼の手を取り

「気を遣ってくれて ありがとう」と彼の耳元で囁くのが精一杯なのです

とても今の顔を見せられません


そうして二人で用意してもらったソファーに場所を移し 

スタッフのお姉さんに何枚か写真を撮ってもらいお礼を伝え 

彼がデジカメを受け取りに行っているのを待っていると 

彼が話しかけていたスタッフのお姉さんに声を掛けられました


「とても優しい良いお友達ですね!」と

笑顔で言われたのですが もっと大事な人ですと つい伝えたくなり

「か・・彼氏です」と気恥ずかしさで口篭りつつも何とか伝えました


私の言葉にお姉さんは少し驚いた表情し でもすぐにニッコリ微笑むと耳元で

「すごく大切にしてもらっているんですね」と優しい声音で言ってもらえました


照れくささで さっきより口篭りつつでしたが 何とかお礼を伝えると

丁度戻ってきた田口くんに「何話してたの?」と尋ねられ

私は「内緒です!」と嬉しい気持ちを声に乗せて答えると 


彼の手を取って先を促したのでした





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