表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
8/126

土砂降りの雨の中で良い天気ですね!とご挨拶

少しだけ身嗜みを整えてから 玄関でサンダルを履き玄関扉の鍵を開けて

ノブに手を掛けるとゆっくりとノブを回し扉を開き外に出てみる。


周囲を見回すが夏の午後の何時もの町の風景が広がるばかりで

特に異変を感じる何かが起こっている様子はない


これが良くあるパニック映画よろしく 


火災に包まれた町並み あちらこちらからモクモクと上がる煙 

車のクラクションが鳴り響き 何処からか聞こえる爆発音 

逃げ惑い叫び声を上げる人々 そして巨大な怪獣の姿が!などあれば

私としても 渋谷のスクランブルでサッカーを応援している集団のように

道行く女性にお触りするなど それなりの立派な対応が取れるのだが

風は先程より強くなっているようで 鼻に付いていた悪臭も

かなりマシになっており普段通りすぎて少々拍子抜けしてしまう


気を取り直して203号室の前まで行くとチャイムを鳴らし声を掛けてみる。


「すいません 202号室の田口なのですがご在宅でしょうか!」

返事が無く部屋の中の様子に耳を澄ませて見るが 物音一つしない


居留守だろうか・・自分が良くする行動を前提として考える。


男性諸君ならば言わなくても分かって頂けると思うが

インターネットで良さそうな動画を探し出しヘッドホンを装着し

例のアレに耽っている最中にピンポンされても困るのである


もう少しの時など「空気よめよ!」と叫びたくなる


そういう時は息を殺し まるで敵地で身を隠すスパイのような気分で

嵐が過ぎ去るのを待つしかないのだ。


まぁ多分違うだろうと もう一度チャイムを鳴らし声を掛けてみるが 

やはり先程と変わらず何の反応も無い 留守のようだ。


「留守か・・」と思ったが気になる点があったので

きちんと確認をしておく事にする


門や玄関扉の所に「訪問販売お断り」とか「猛犬注意」などのシールが

貼られているお宅があるのをご存知だろうか 


それと同じように「無職お断り」などが貼られていた場合 

私は相手のメッセージを無視した事に なってしまうので失礼に当たる。

注意深く確認するが無いようなので少しほっとする。優しい世界


ちなみに私の部屋の玄関扉には「美少女以外お断り」のシールが貼ってある

失職して確か三ヶ月目 夜中の二時に何故か異常にやる気が溢れ出し

溢れたパワーで何かしなければと 身悶えていたのである


多分「はたらく魔王さま」というお仕事ラノベを読んだせいであり

やる気は満ち溢れているが時間も時間 何をしようかと思い悩んでいると

以前、百均で何でか分からんけど購入したシールセットが目に入った


それを使い何か新聞の文字を組み合わせて作った 昔のドラマで良く見た

犯罪の予告状みたいな感じではあったが 出来上がったシールに満足した私は

取り敢えず誰かに見て貰えるよう 玄関扉の目立つ所に貼っておくことにした。


そんなの作ってる暇があるならハロワいけよ!と思うかも知れないが

ハロワ行くような人間は そもそもそんな物を作ろうとすら思わないのである


シールを貼って多分二・三日後の土砂降りの雨の日


部屋でゴロゴロして漫画を読んで居ると ピンポンが鳴り顔を出す私

来客は何時も来るプロパンガスの集金のお兄ちゃんであった。

「良い天気ですね!」と 土砂降りの雨の中濡れまくってるお兄さんに

無職で外に出ないので 濡れる事も無い私が元気に挨拶をする


そして少し引きつった笑顔のお兄さんと 会計を済ませると何故か

「すいません・・俺で」と謝ってくる

以前アレを妨害された恨みを果たす為に 失礼な事を言った私がむしろ

謝罪する所なのに 何でだろうと不思議に思い

「えっ・・何でですか?」と尋ねると シールを指差し困った笑顔

「あー冗談ですよー!」と笑顔で別れた次の月の集金日 


現れたのは四十過ぎくらいのおばちゃんであった。


私は思う。きっと手持ちの最高のカードを切ったのだろうと

「美」も「少」も多少というか 大分欠けてはいるが 

出来る限りお客のニーズに応えるその姿勢と

サービス精神には敬服せざるえない。


そんな事を思い出し あのお兄ちゃんとおばちゃんは元気かなと考えながら


201号室へと足を向けた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ