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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
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素敵なモノを形に

今年一番の真夏日になると天気予報で 聞いていたので覚悟はしていたが

雲一つない夏の青空に浮かぶ太陽は「オラッくらえ!」と言わんばかりの

日差しを 水族館の駐輪所から入口に向かう僕たち二人に照らしつける。


僕と志保子さんは手を繋ぎゆっくりと歩きながら水族館の自動ドアをくぐると

館内はクーラで程良く冷やされており 入った瞬間お互いに「あ~涼しい」と

言ってしまい顔を見合わせ また少し笑い合う。


さっきの照れた表情も良いけれど この笑顔も堪らない 

その前に見せてくれた拗ねた表情も絶品だったし 

それより前のむくれた顔も最高だった。


今日ここまで来る間に見せてもらえた

志保子さんの色々な表情を思い出しつつ僕はこう考える。


「写真を取りたい!」


動画でも良いが 今この時を切り取る「写真」というのも 

なかなか素敵な物だと思う。


一瞬を撮り逃さない!でお馴染みの産経カメラマンの仕事ぶりを見ると

つくづくそう思う。


僕レベルのスーパー小学生(自称)なら脳内でいくらでも

画像を保存する事などお手の物だが 

やはり形として残るなにかが欲しい時がある。


ずっと彼女と一緒にいたいけれど夜が来ればお互い離れ離れになり

彼女のが居ない時間でも彼女を感じれる何かが僕は欲しかったのだ

別にそれで何やらアレな事をするつもりは一切ない・・多分


一応は父親から返す気は無いデジカメを借りていたのだが

どう言って写真を撮らせてもらえば良いのか考えてはみたのだが 

いまいち良く分からないのである。


大体僕らくらいの年齢だと撮られる事はあっても撮る事は滅多にないだ。

撮られた経験から考えてみるが 学校での集合写真などの

「並んで!並んで!」や「文 撮るよー!」と 両親や友達の親御さんから

言われるくらいで 言われたときは「撮られる」事に集中してしまい

どういう感じで言っていたのか思い出せないのである。


「盗撮か・・」

ナチュラルに犯罪方向に進む思考をなんとか押し留めると

僕のすぐ隣で 館内を嬉しそうにキョロキョロ見回している

志保子さんの整った横顔を見つめて こんな風に考える。


多分だが写真やその前段階の絵もそうだが なにか「素敵なもの」を見た人が 

それを忘れたりしない為や その「素敵なもの」を誰かに伝えたい時に

出来るだけ そのままの姿を見せられるように 何とか形として残して

置きたいという想いが始まりだったんだろうなと思う。


そう考えれば恥ずかしいとか言ってる場合じゃないな と思い

少し緊張で震えそうになる声を 勇気を出して振り絞ると 


彼女の名を呼び 僕の声に振り向いた彼女に

「志保子さんと二人で写真が撮りたい」と


僕は伝えるのだった




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