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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
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飯島先生からのミッション

「勝てる気がしない」   「出現した時点で終了です」


この二つの言葉で私がすぐに思い浮かぶのは 他の誰でもない志保子の事である

あの「万力のような」な握力は冗談にしても 彼女と過ごせた五年間ちょっとで

考えてみれば 私は彼女に対して文字通り「頭があがらなかった」ように思う


彼女の性格がキツイとか物理的にねじ伏せられていた訳では勿論なく

多分だが私は彼女が「嬉しそうなのが嬉しい」かったのだと思う。

ただ志保子の表情なら 何でも喜べる私である。

怒った顔も拗ねてる表情も最高ですね・・・と歪んだ性的趣向の赴くまま

ワザと怒らせたり拗ねさせたりさせる事も多かった様に思う


もし彼女が会社の社長になり社員がみんな私なら どんな激しい激務の

サービス残業の嵐と 毎日がデスマーチでも全然辛さを感じないだろう。

そういえば何時からそんな風に思ったのだろうと考える

最初からベタ惚れではあったが そこまで思うようになったのは・・


そして追憶へと思考が流されていく自分に私はほんの少し口元が緩む。


「志村は今日は体調を崩して休みだ」


飯島先生のその言葉を聞いた瞬間 僕は先生の襟首を掴みガクガクいわせながら

「そんなの許せない・・!」と片目を赤くして

赫子とかいう変な尻尾みたいなのが出てくるのを必死で我慢し

「僕は・・・人間なんだ!」と つい口に出てしまうのを堪える

「金なんとかくん」の小芝居を脳内でしていた。

そうでもしないと動転して ぶっ倒れそうだったからである。


「昨日も一昨日もあんなに元気だったのに・・」

そう思いながら多分その想いを顔に出したまま 僕が先生の顔を見ると 

飯島先生は「分かっている」みたいな表情で僕を見ながら

「今朝熱を出したとお母さんから連絡があった」と伝えてくる。


四組女子トロール達が口々に「お見舞いに行こう」とか言い出すのを

先生は片手で制して僕を見つめながら

「大勢で行くと気を使わせて 迷惑になるかも知れないから」と前置きしつつ 

「文 クラス代表でお見舞い頼めるか?」と 

うっかり惚れそうになるくらいグッジョブな事を言ってくれた。


四組女子トロールどもが「文 なんかが行ったら余計迷惑だよ!」と

飛び蹴り食らわせたくセリフを まぁまぁな感じで先生がおさめると

「文 頼めるか?」ともう一度聞いてきたので殿様に命じられた忍者のように

「この命に代えても・・・」と真剣な表情と口調で僕は答える。


飯島先生は「別に命は懸けなくても・・」と苦笑いつつ

「じゃあ頼む」と 僕の頭に手を置きながら言ってくれたのだった。

いつもは先生の言いつけを守らないことで 

先生との熱い師弟愛を育んでいる僕だが今日だけはちゃんと守ろうと思った 


明日は? 知らん!


「家の場所はわかるか?文」と尋ねてくる先生に

「とっくにリサーチ済みです!」と自信に満ちた表情と声で答えると

先生はえっもう?みたいな驚きの表情で僕を見ながら

「じゃあ頼んだ」と頼まれたのである。


そうして飯島先生から授かった最高難易度のミッション

「志保子さんのお宅にお見舞いゆく!」を成功させるために 

僕はその類まれな頭脳をスパークさせるのだった




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