ダーウィン賞を受賞しないために
「生々しい」現実を見せられて それまで何処か他人事だった気分を一新し
一気に覚醒した私は 身体が虹色に輝くと 空を飛び回り火力も装甲もアップし
必殺ゲージが溜まると凄い技が使えるようになったのだった
もちろんそんな能力は覚醒する事はない
相変わらず「ひのきのぼう」と「ぬののふく」を装備して
夕方なのに全然涼しくならない気温と 割とどうしようもない現状に
少々嫌気が差してきていた
人間慣れとは恐ろしいもので 建物から外に出てから十字路を目指すあいだに
さっき見たような人間の身体の一部分が 転がっているのを見つけても
近くで見ないようにしているのもあるが 多少は平気になってくる
手足の一部分というのが まだ救いなのかもしれないが
そのまま死体がバーン!中身がドーン!と漏れ出している状態で
見るよりはかなり大分マシではある
もちろん私はこんな事に平気になりたくはないが
なっておかないと吐きながら歩く事になるので致し方ないのである
こういうのも「正常性バイアス」なのか・・と考える
「正常性バイアス」とは外界の強烈すぎる刺激に対して
人間がそれを心理で抑制して慌てないようにしてしまう事で
多分だが物事に慣れるというのも 広い意味ではそれの範疇のように思う
人間は落ち着いて行動してもミスをするのに
慌ててたらもっとする訳で そうならないために必要な能力のように感じる
まあ余りにも危機感を失くし落ち着いてしまい油断して死ぬと
私も「ダーウィン賞」を受賞してしまうので注意が必要と考える
知らない人もいるかも知れないので説明すると
ダーウィン賞とは馬鹿に授与される最高位の栄誉として考え出され
その受賞資格は自業自得としか言いようが無い 頭の悪い行動を実行する事で
自らの遺伝子を絶ち 馬鹿の遺伝子を後世に残さない事で人類の進化に
貢献した者に贈られるというブラックユーモアに基づいた云うならば
「馬鹿な事をした馬鹿を みんなで死んでも馬鹿にする」という
なかなかハイセンスな紳士の催しである
人が死んでるのに不謹慎と考える方もいるとは思うが
馬鹿が馬鹿にされない もしくはしちゃいけない世の中は
それこそ大変な事だと思う
飲酒運転が良い例である。
酒は云ってみれば 有機溶剤であり人間の体にあるものを何でも溶かすので
例えば飲みながら食べると食物に含まれる脂肪を溶かし 酒と一緒に体に吸収し
それによって体内により多く脂肪を取り込んでしまい太るのである
そしてそれを踏まえて考えると酔っ払っているというのは 頭の中の伝達物質を
酒が溶かすから酔うわけで まともな状況判断が出来るはずがないのに
そんな状態で鉄の塊である車を運転すればどうなるか馬鹿以外には明らかである
お酒自体が悪いのではなく 飲み方を知らないのが悪いのであり
なのでみんなで馬鹿を馬鹿にしまくって 恥ずかしいと思わせて
馬鹿な事をしないようにしようという 毒をもって毒を制すの精神なのだ
まあ馬鹿は馬鹿だからそれでもするのだが・・
そして有名な「ダーウィン賞」受賞例をあげると
超高層ビルの窓ガラスの強度と安全性を証明しようとビル24階の窓ガラスに
体当たりをかましガラスを突き破ってそのまま転落死したエリート弁護士
ハリケーンが到来した事を知ると仲間を集めハリケーンが目前まで迫った湾岸で
「ハリケーン歓迎パーティー」を開催し 警察や消防の人が警告するも
無視して続行して そのままハリケーンに吹き飛ばされて死亡
鉄道橋からバンジージャンプを行ったが ゴム紐が伸びる事に気がつかずに
思っていたより紐が長すぎたため地面に激突して死亡
コンビニだかスーパーに設置されていたATMを爆破しようとして
思ったより火薬の量が多すぎて 爆風に巻き込まれて死んだ強盗二人組
あなたは彼らを同情できるだろうか?私にはとても無理である
ちなみに一人だけ私が可哀想に思った人はいる
受賞はしなかったがエントリーされた記事を思い出す
確かアメリカか何処かで山火事があり 近くに川や湖などの水源がなかったので
州の消防は軍隊と協力して ヘリコプターにデカイバケツを釣るし
それで海から海水を何度も運んで消火したのだが
鎮火した後の状況を見るために 現地に向かった調査員は山の中で
何故かダイビングスーツとスノーケルを装着した男性の死体を発見し
もしかしなくてもバケツで男性まで汲み上げてしまい
空から叩き落としたかも知れないという話であり 彼だけは冥福を祈りたくなる
必要以上に恐怖や緊張を抱え込まず でも不抜けた考えはなるべく辞めて
何が起きても出来るだけ冷静に対処しようと気を引き締めると
私は目的の十字路へと向かうのであった