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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
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何が起きたか分からないけど 何か起きてる世界へ

つらつらと志保子と会った当時の事を思い出していると 

足の指先に当たる水の冷たさに気が付き 

すでに浴槽から水があふれ出てる事に 慌てて蛇口を閉め水を止める


その後どうしたんだっけ・・と また追憶に耽りそうになる頭を一つ振ると

気を取り直し 浴室から出て足を拭きつつ 更なる水の確保のために

プラスチックのゴミの日に出すように まとめておいたゴミ袋から

大きめのペットボトルを取り出し 洗浄してから水を詰めていく。


水を詰め終わり 少し迷ったが小さいボトルも 洗浄し詰めておくことにする

多いに越した事はないし捨てるのは簡単だ。


ある程度だが水の確保が済むと 

ビルの屋上で見た渋滞の場所に向かおうとし 玄関に向かい掛けたが

少し思案した後 あの状態なら急がなくとも大丈夫と判断し

出来るだけ出来る範囲の準備や用意をしてから 向かおうと考える


何も起きなければそのままだし もし何か起きるとしたら 

何かを起こす原因がある訳だから それが実はちゃんと人が居て

ただの渋滞でしたなら良いが そうじゃなかった場合には困るからである


「町の外はモンスターで一杯です 準備してからお出かけ下さい!」


ドラクエの始まりの街で聞いた 街の人のセリフが私に賢い判断をさせてくれた


なので他のインフラも確認する事にした

外の太陽光発電の充電メーターは ほぼ満タンのようだが 

それでどのくらい持つのか考えてみれば よく分からない事に気が付く。


むむ どうしよう・・と思ったが 常に使用する冷蔵庫以外は 

日によって使用量が変わるので 上手く調整しながらやっていこうと考える


次にプロパンガスだが 外のボンベを見てもメーターが付いてないので

残量が分からず困ってしまう。そこで私は頭を捻り 確か夏の暑い時期に

外で作業していた汗だくなガス屋さんに 無職で暇だった私が部屋から出ると

暇つぶしがてらにアイスを舐めながら 聞いた話を思い出す。


「液状で入ってるんですよ」と 私が舐めるアイスを物欲しげに見つめながら

答えたガス屋さんの顔を思い出し ボンベに手を添えて軽く振ってはみるが

とても重い上に よく考えてみれば 満タンと確定しているボンベを振った事も

無いので 手にして振っているボンベが どのくらい減っているのか

分からないんじゃないか?という事が 分かっただけであった。


そこで震災の後 ガス屋さんに渡された「ガスレベル」なる道具があった事を

思い出し部屋に戻って探してみると 渡されてからそのままの箱に入っており

説明書を読みながら使用してみると ほぼ満杯な事が確認できて安心する。


ちなみに「ガスレベル」とは ガス圧式の残量計と違い 面倒な取付けもなく

超音波による正確なレベル測定が 非常に手軽に行える道具である。


まず百円ライターくらいの大きさの「ガスレベル」を ボンベの上部に

くっつけながら 真ん中に付いてるボタンを押すと 赤いランプが点くので 

そのまま下にスライドしていくと 赤ランプが緑になる所があり 

そこまで入ってるとわかる素敵アイテムである


それにしてもと思う 普段当たり前に使っているものが 

どういう仕組みで管理と運用がされているのかすら 

まともに分からないというのも考えものだと思う。


なにも学校で教えろとは言わないけれど 成人になるまでくらいに 

どこかしらで学ぶ機会があっても 不都合はないように思うのだが・・と考え


「いやあったのかも・・無職が常識に通じてないだけで・・」と思うと

少し気分が落ちてくる 何とか気を取り直し 素人に付け焼刃で知識を与えると

ロクなことが起きないからかも知れないと 納得する事にした

YouTubeやニコニコ動画を見れば 素人ほど危ないのは良くわかる


そんな事を思案しつつ 次に食料の在庫を見てみる

戦利品を合わせて自分の一日の消費量だと 二週間前後はいけそうである

これなら少し余裕をもって動けるが 無職に余裕は禁物なのだ

まず動かなくなるから。「まだ余裕!」は死亡フラグである


今度はもしインフラが止まった時のために

必要なものがきちんとあるかを 確認する事にする。


何か起こってもある程度は 自動でインフラ関連は稼働するとは聞いていたが

それが何時までかは分からないのと 震災の時も地震発生から三十分後くらいに

電気も水も止まった事を思い出したからだ


いつまで今のまま使えるかわからないのだから その為の用意はしておこうと

そう考えて棚を漁って一つ一つと 必要そうな物を取り出していく


百円ライターは五個あるので火種には困らない 懐中電灯もある。

電池もアルカリ単四が十本あり 他のサイズも少しだがある

一応ちゃんと使えるかスイッチを入れて確認もする


大丈夫なようだ。懐中電灯は二本あるので 片方の電球が切れても平気である

他にもロウソクが 震災の時に二本使ったが残り八本ある。

光源は大事なのだ 夜はもちろん昼間でも明かりのない室内は

案外薄暗いので この先いつ使用するか分からないからである


昔の話だが 友達の兄貴が持っていた初代ドラクエで遊んだ時に

「たいまつ」を持たずにダンジョンに入ったら 周りが見えないどころではなく

自分以外全く見えず 入った入口にすら戻ることが出来ずに

泣く泣くリセットした事を 思い出したからだ


ゲームはリセット出来るが 人生はリセット出来ないのだ


次に水や食料だが 震災後一年くらいは 災害用にきちんと避難用リックに

乾パンなど入れておいたのだが、賞味期限が切れそうだと食べてしまい

その後は そのままおざなりになってしまっていた。

こちらには持ちの良いカロリーメイトなど 補充して置く事にする。


後は・・と少し考える。普段 当たり前に使っている物は

当たり前すぎて無くならないと 気が付きにくいものだ。


なので思いつく限り書き出していく事にする。

そうやって記入していくと、あれもだこれもだと

次々と必要なものが思い浮かぶもので その度に確認と記入をする。


貴重品(銀行の通帳とカード 健康保険証 印鑑と現金)や

救急用品(絆創膏 包帯 消毒薬、マスク)を置いていき 

他にも衛生用品とでも呼ぶのだろうか 爪切りや耳かき 歯ブラシや歯磨き粉 

ついでに缶切りなどがついた十得ナイフも テーブルの上に用意し

トイレットペーパー テッシュペーパーなどを床に並べていく


こうして荷物を並べていると 旅行に行く時の用意のようで そう思うと

もし部屋にも居れなくなった時が来る事も考えて 先ほどの避難用リュックに

下着や着替え 洗面用具など必要な物を詰めておく


こうやって何かを集中してやっていると 不安だった心も少しだけ落ち着く

今している事が単なる杞憂なら良いのだが テレビは相変わらず砂嵐だし

ネットにもやはり繋がらない 電話の方も何処にも繋がらず 

期待していた留守電もメモも無く いい加減そろそろ現れて欲しい

中ボスみたいなキャラによる状況説明も勿論ない


まだ暗くなるまで時間はある

そう思い立ち上がると モップの頭の部分をドライバーで取り外し

使いやすい形にすると 持ち手の所に滑らないように包帯を巻いておく


「武器や防具はちゃんと装備しないと効果がないぜ!」


ドラクエの武器屋や防具屋の親父のセリフを思い出し

武器はあるが何か防具がないかと部屋を見回してみる


我が家には西洋のフルプレートアーマーはもちろん

武士の大鎧や当世具足などもないので どうしようと考えるが

あんなもの この暑さで着てたら その方が危ないと気が付き

今のままのスタイルで向かう事に決める


そうして私は「ひのきのぼう」を片手に「ぬののふく」を装備し

「何が起きたか分からないけど 何か起きてる世界」と云う


むしろ世界を救うどころか 私を救って欲しいくらいの世界へと


足を踏み出すのだった



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