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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
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「やり直せた」記憶

転校初日の緊張で校門を通った時には

上手くやっていけるか不安だった気持ちも

席がお隣になった「田口くん」のおかげで 楽しく過ごせた一日の終わり


帰りの会で声を掛けてきた飯島先生に促されて 職員室までついて来ると

「どうだ志村 クラスのみんなとは仲良くやっていけそうか?」との

先生からの質問に私は大丈夫ですと答えました 


そう答えつつも五時間目が終わってから「田口くん」と

全く会話もノート端っこでのメッセージのやり取りも 

なかった事を思い出し 少し落ちてしまった私の表情を見て 

先生はもう一度「本当に平気か?」と尋ねてきました


私は もう一度「大丈夫です。」と答えると 

先生はそんな私に少しだけいぶかしげな表情を向けながら

保護者に渡しておいて欲しいと数枚のプリントを手渡し

気をつけて帰るように伝えてきました


そして私は先生に帰りの挨拶をして職員室から下駄箱へと 

気持ちと同じくらい重くなった足で向かったのです


少し先生と話し込みすぎていたせいでしょうか 

職員室から下駄箱まで続く廊下には誰もおらず 

教室から職員室に向かうときには 

窓から入る太陽の光に廊下は 白い光で照らされていましたが 

今はそれよりも少し薄暗くなっており 

自分の気持ちと同じく暮れていく空を窓から見ながら

薄くため息をついてしまいます・・・


私には 人との仲を「やり直せた」記憶がまったく無いのです


そもそも最初から私を 敵視まではいかないまでも拒絶していた

祖父母や父はもちろんの事 入学式での辛い気持ちをなんとか誤魔化し 

少しでも人の輪に慣れるように 前の小学校でも私なりに努力をしてみました


自分には悪い所があり それで上手くいかないのは 理解してはいるのですが

ならどうすればいいのか?となると 余りにも私には人と接した経験が足らず

困惑し戸惑ってしまうばかりでした


何とか会話が出来るようになった子達とも 足に身障を抱える私では

彼女たちがしたがる鬼ごっこやかくれんぼでは 足でまといになり

私がいることで困った顔を見合わせる その姿に私は徐々に遠慮がちになります


そして自分が参加しない事に ほっとしている様子の彼女たちをみると

少しずつ人の輪に入っていく事に 恐怖を覚えるようになってしまいました


過去を振り返り やっぱりここでもダメなのかなと私は思ってしまいます


落ちた気持ちのまま 俯いたまま夕日に染まった床を眺めながら

歩行杖を突き軽く右足を引きずりつつ 下駄箱まで来た私の目の前に 

こちらに背を向けて一人 靴を履いている彼の姿がうつり 

その姿を見て嬉しくなった私は 話すことを考えないまま


「田口くん!まって」と思わず声を掛けてしまったのでした





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