僕の心はバーストリンク!
飯島先生が黒板にチョークで板書した算数の公式を
僕は肩肘をつきながら だらだらとノートに書き写しつつ
どうしたらスーパーレア素材である「志保子ボイス」を入手出来るかと
その小学五年生とは 並みの人間には想像する事さえ不可能な頭脳を
スパークさせ思考をさらに加速させる
もし僕が太っちょの運動苦手で ゲームが得意で「ハルユキ」という名前なら
「もっと先へ、加速したくはないか?少年。」と言う
お姉さんボイスな声に誘われて 変なプログラムを脳内に導入し
「バーストリンク!」の掛け声と共に
よくわからん世界でよくわからんやつらと対戦格闘に励んだり
羽を生やして大空を飛び回り 幼馴染の少年をぶっ飛ばしたり
これまたキツネのお面を頭に装着した 結構可愛い女の子の幼馴染と
その子のベットで「直結」したり出来るのだが
太っちょでも「ハルユキ」でも無い僕には その世界に誘ってくれる
黒い蝶ちょの羽を背中に付け 薄い胸元をギリギリのラインで晒している
中学生の女の子の姿は見えないのである
なので方向を変えて もし僕が「ハルユキ」ならどうなるかで考える
口が悪いけどホントは良い子の 髪が赤い女の子と一緒にお風呂に入ったり
なんか感じの悪い下級生に自慢の羽を奪われて 地べたに倒れて悔しげに
「僕の翼を返せ!」と泣きながら叫んだり
そうかと思えば義足を着けた巨乳のお姉さんに 崖から落とされて
何か登ってる途中で おかしな方向に覚醒して変な技を身につけ
崖を登りきったら 巨乳のお姉さんに ご褒美として
空飛ぶランドセルを貰ったり 出来るんだろうなと考える
あらぬ方向に加速していく思考と アニメしか見てないので
この後どうなったんだろうと気になる思いで
その幼い胸をメラメラと燃やしつつ
「私は震えたよ 人はこれほど速くなれるのかと」
という声が聞こえたように感じていたとき
僕は自分の半袖Tシャツの袖口を 軽く引かれている事に気がついた。
何かしらと引かれている方を見てみると 隣に座っている志保子さんが
その細い指先で僕の袖口を軽くつかみ 肌の白い整った顔をほんの少し赤くし
奥目がちな瞳を少し潤ませながら こちらを見ている事に気がついた
「カメラさんこっち 早く早く急いで!」
と言いたくなるような 素敵な光景が僕の目に飛び込んできた。
いきなりの展開に思わず椅子を引いて 腰を浮かせて立ち上がってしまうと
びっくりした僕を見て さらにびっくりした志保子さんは
僕の袖口を掴んでいたその白い手を ぱっと手放すと
これまた白い柔らかそうな太ももに 華奢なその手を行儀よく揃え
小さく形の良い頭を下げて俯いてしまったのだ。
「3カメ そっち回り込んで!」と言いたくなる
そんなビューテフルな光景にドギマギしていると
急に立ち上がって隣に座る志保子さんを 見つめている僕の事を
飯島先生やクラスメイトが驚いて見ている事に気が付く。
「なにやってんだ・・文?」と
聞いてくる飯島先生のあきれた声と
「また文だよ」や「これだから文は」
クラスメイトという笑い声に
お前ら今の見てないからそういうんだよ!と思いつつも
まさか「バーストリンク!」してましたとも
隣に座る転校生の太ももを ガン見してましたとも言えず愛想笑いで誤魔化す
そんな僕に 呆れた声音で
「ちゃんと座って授業を聞いてなさいよ 文」と言う
飯島先生の声に空返事しながら
飯島先生の顔をみて 汚染された僕の目の浄化のために
すぐ隣に並んで座っている リアル天使こと
志保子さんに視線を向けるのだった。