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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
14/126

他人の不幸は心地よい と 大人としてやるべき事

レクレーションルームの扉を 少し開けて手鏡で部屋の中を覗いてみる

動くものが見当たらないので もう少し広く開けて角度的に見え無かった部分も

手鏡で覗いてみる。


かなり広い部屋のようで 調理室と食堂を足したくらいの広さがある

奥の方には我が家のテレビの 二倍の大きさはある液晶テレビがあり 

その手前にはUの字にソファーが並べられている。

窓際の壁には 一人用ソファータイプの椅子が二脚置いてあり

床には毛足の長いカーペットが敷かれている。


土足でカーペットに上がる事に ほんの少し躊躇したが 

この際は仕方が無いと割り切り静かに扉を閉めると

足音を立てないように部屋に入る。


私の居る位置からはソファーに もし誰かが寝転んで居ても見えないので 

そのまま窓際まで進みとソファー椅子の一つを手に取り運ぶと 

上にそっと乗りソファーに 誰か寝そべっていないか確認してみる。


誰も居ないようだ。見えないからと むやみに近づいたり棒でつついては

藪ヘビになるかもしれないから注意が必要だ


まあこんな時に寝ているのは私くらいなものだろ・・・

また少し自嘲的な気持ちになるのを 抑えて室内の確認に移る

液晶テレビの横には キャスター付きのホワイトボードが置いてあるのが見える


そこには日立港花火大会参加者募集と カラフルな文字で書かれており

その左下には青ペンで「達也」「雅史」「俊也」など男性の名前が

右下には赤ペンで「明美」「麻里子」「優子」など女性の名前が

可愛らしい絵文字付きで書かれている。


「うわぁ・・うぜえ・・・」と思わず小声で呟くと 

そういえばと・・・記憶を辿る。

日立港花火大会は毎年七月の月末辺りに開催されるのだが

今年は多分まだやってなかったよなと考える。


もう一度ホワイトボードに目をやると右上の隅の方に

花枠に囲まれて7/26(日)開催!!と書かれており

その下には「みんなで楽しもう!」とか「花火なう」とか書かれている


今日は7/25である。


胸の奥から湧き上がる謎の高揚感に 思わず緩む表情を何とか抑える。

湧き上がる高揚感に 踊り出しそうな体を頑張って鎮めると

「落ちつけ落ちつくんだ俺 こういう時こそクールに だ!」と 

前にみたアニメの主人公のセリフを頭の中で復唱する。


自分も現状不幸だが(確実)コイツらも不幸だ(多分)と考えると

「胸一杯に喜びが広がります!」みたいな気持ちになる。

何か作詞作曲してオリジナルソングでも 歌い出したくもなり

今なら無職から詩人にJOBチェンジ出来るかも知れない


やはり他人の不幸は心地よいと思いながら そんな気持ちを切り替えるように

深呼吸一つすると呼吸を整え そんな浮き足だつ気持ちを何とか抑えながら 

室内にあるものを一つ一つチェックしていく


液晶テレビがある方を教室で云う所の黒板がある前の方とすると 

いま私が立っているのは後ろの席の方になる。

学校にもよるだろうがロッカーがある方だ。


この部屋にはロッカーはなく 書類の詰まったダンボール箱があるくらいで

壁には かなり大きい目のコルクボードが吊るされている。


人間がテルテル坊主のように プラプラしながら首吊っている以外なら

何が吊られていても 他人の家なので どうでも良いのだが

そこに貼られている 幸せそうな写真やコメント用の色紙の数々に

幸せではない私は怒りで 目の前が真っ暗になりそうになる。


「達也&明美 交際三ヶ月記念に 毎日笑顔♥」だの

「重大発表!祐也&弘子 この度婚約しました 愛してる♥」とか

「今日からお付き合い始めます。直広&麻里子 もう離さない♥」などの 


俺達ハッピーセットです!みたいな感じの写真や

その写真への感想のつもりなのか 他のメンバーからの

おめでとうコメントや 冷やかしコメントなどの

リア充コメントが色紙に書き込まれているのである


しかもボード中に所狭しと・・・


怒りで我を忘れ掛けた私だが呼吸を整えると

ここは「大人な対応」をと 考えて誠意と真心を込めた対応を施す


「毎日笑顔」の達也君と明美さんの顔に 余っていた画鋲を全力で突き刺し

「もう離さない」の直広君と麻里子さんの写真は

裁縫セットから鋏を取りだし 半分に切って離れ離れにしてあげると 

コルクボードの端と端に きちんと離して貼り付け直しておく(親切)


大人としてやるべき事するべき事すると 他の物もきちんとチェックしようと 


私は液晶テレビの方に足を向けたのだった




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