「愉悦部」の二人
一学期の終業式の帰りの会の後 まだクラスメイトで賑わう放課後の教室で
「今度の夏祭り 沙智と友美に一緒に行こうって誘われているんだけど」
そう前置きして良かったら二人も一緒にどうかなと誘った僕に
「文・・マジ感謝!」
「これからは兄貴と呼ばせてくれ・・文」
そう宮田くんと鹿島くんに感動しているのか涙目で伝えられて
そういえば二人は それぞれ沙智と友美が好きだった事を思い出す
僕と宮田くんと紗智は保育園からずっとクラスが一緒で
鹿嶋くんと友美とは小学一年生から一緒なのだが
五人とも一応は仲良しと呼んでも差し支えないくらい
あちこち遊びに行ったりと過ごしてきたのである
そして男子二人の幼い恋心の相談を 小さい頃から受けていた僕は
幼稚園からこれまでの長い間に 恋は盲目よろしく正気を失っている二人に
それはもう何度も何度も 奴ら二人の邪悪さと狡猾さを
言葉を尽くして訴えては 宮田くんと鹿嶋くんが
何とか真っ当な道に戻れるよう 僕なりの努力をしてきたのである
確かに紗智も友美も目鼻立ちは整っており 見てくれだけは大変良く
スポーツ万能で元気な女の子を絵に書いたような沙智と
成績優秀でおっとりした雰囲気のお姉さんタイプの友美は
同学年の男子の人気が非常に高く 教師受けも良い
ジャンル的には美少女と呼んでも差支えないのは確かだと思う
だが天は二物を与えずの言葉通り
その性格は何とかチャンネルの家族板で 嫁に晒される姑のようにドス黒く
自分達に他の男子のように好意を寄せない無愛想な僕に対しては
卑劣にも事あるごとに担任教師を召喚し学級会議に掛けるという奥の手を使って
僕が学校のルールを破り 人生を謳歌するのを阻止する事に喜びを見出す
どこぞの「愉悦部」の二人組のような存在なのである
まあそんな悪辣な二人組に正気とはとても思えない恋心を抱く
トリップ状態の宮田くんと鹿嶋くんだからこそ
志保子さんがいる今回のイベントの参加資格があるのだが・・
そう考えながら「愉悦部」から強制されたノルマである
僕を含めた男子五人の 残り二人は誰にするかクラスを見渡すと
黄色い帽子を被りランドセルを背負って
帰り支度をしている高久くんと目が合った
高久くんの素敵で格好良い浴衣姿が見れるかも知れないと
僕は、ほんの少しときめく胸の鼓動を抑えながら
高久くんに夏祭りの事を頬を赤く染めて伝えると
彼は「俺で良ければ」と はにかんだ笑顔で参加を了承してくれたのだった
そうして高久くんが一緒に夏祭りに行く予定だったという
隣のクラスの君島くんの了承も得て
「愉悦部」の二人に男子は五人揃ったと伝えにいくと
僕を待っていてくれた志保子さんが「愉悦部」二人組に捕獲されており
それを見た僕は この三人が一緒に居る所を傍から見ると
良いところのお嬢さんが悪党に誘拐された場面にしか見えないな
などと考えるのであった
男子の参加メンバーを告げると やはり格好良い高久くんの名前に
「愉悦部」二人は大喜びで「文 でかした!」と大いにはしゃぎ出し
何やら悪党の悪事に加担してしまった複雑な気分で
僕は志保子さんとの初めての夏祭りを体験するのだった




