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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
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黄色い帽子とランドセル

太陽が中天に差し掛かる少し前 時計の針が午前十時を指す頃


スーパー元長での物資の調達と そのすぐ近所に避難拠点を作り上げた私は

次の探索予定地である「久慈小学校」に向かう事にする


生活道路でも二車線幅の通りならば 車は無理でもバイクなら歩道を使い 

車道も何とか通れそうな箇所を探せば 遠回りせずとも大丈夫そうなので安心し

徐々に増す蒸し暑さに毒づきながらも私は志保子の事を考える


自分を助けに来る人間が 

まさか自分をデコレーションする目的で向かっているとは

さすがの志保子も夢にも思うまいと口元に悪い笑みがこぼれる


彼女が困難な状況に置かれているとして そこから助け出してくれた元彼と

その流れや場の雰囲気で また身体を重ねる事までは予想が付くにしても

その相手が自分をベットに拘束して生クリームやハチミツを使って己の身体に

トッピングする事を考えているとは普通の人には予想も付かないはずである


サプライズ精神に満ち溢れた私だからこそ考え出せるプレゼントである


そこまで考えて少しだけ気になる点がある 

まさかそれは無いとは思うが 彼女は嫌がるだろうかと・・

まあ実際に大喜びされても それはそれで少し引いてしまうが

すごく嫌がられたらどうしようかと思案し想像してみるが 

私は女性では無いので そういった場合の女性の心理はわからないのである


なので立場を逆にして考えてみる事にする


志保子が私を助けに来てくれたとして 当時のように身体を重ねようとした時に

彼女が何処からともなく生クリームやハチミツを取り出して

ベットに拘束した私をトッピングしだしたら自分はどう感じるか・・


最初は少しだけ驚くかも知れないが それはそれで悪くない 

むしろ大歓迎だと判断した私は 幼い頃の私の数々の羞恥プレイを

何だかんだで受け入れてくれた志保子もきっとそうに違いないと考え 

その素晴らしい光景を夢見て 浮き立つ気持ちで先を急ぐと

想像の中 志保子の無事じゃないあられもない姿とは逆に

久慈小学校に問題なく無事に到着したのだった


小学校の正面門近くの一軒家の敷地にジャイロを隠して駐車すると

門の外から校内を探るが 相変わらず人の気配は全く無くとても静かである


仕方なく私は強い力が掛かったのか内側に押し倒され破壊された門を潜ると 

周囲を警戒しながら校庭を横切り校舎を横目に体育館を目指す


久慈小学校は海に近いため 震災の時は避難場所には指定されていなかったが

近隣への給水や支援物資の配布 移動が困難な老人や病人の為の救助施設

そして各種支援に携わる自衛隊の方達の一時的な駐屯地として使われていたので

一応は立ち寄ってみたのだが この様子では徒労だったようだ


そして到着した体育館の扉も校門と同じ感じで内側に押し倒され壊れており

恐る恐ると館内を覗くと むせ返るような血の臭いが鼻腔を刺激して

吐き気が込み上げてくる


何とか吐き気を堪えて鼻をつまみながら館内に入り周囲を確認すると 

壊れた備品や残された荷物の他に 壁や床のあちらこちらに

飛び散った血飛沫や血溜りが目に入るのだが

傷つき呻いてる人や亡くなって死体になっている人は一人もおらず

この惨劇の後を見れば何かが起きたのは分かるが何が起きたのか

相変わらずさっぱりな現状に 思わず溜息を漏らしてしまう


仕方なく体育館から出て防災地図に記載された

体育館裏の防災倉庫を確認をする事にする


倉庫の頑丈な扉は手持ちの道具では開けるのに時間が掛かりそうなので

倉庫の窓枠に掴まり中を覗くと数々の物資はそのまま残っている


ひとまず安心すると物資の移動を考えるがスーパー元長で回収した物資だけで

当分は平気そうなので回収は後回しにして探索を続ける事にした


校舎の方に移動し壊れた扉から校内に入ると こちらも大分荒れており

体育館に比べれば少ないとはいえ あちこちに血飛沫や血溜りが目に入る


私は三階建ての校舎を周囲に気を配りつつ探索しながら 

その途中の教室で目に付いたサイズの小さな学習机や椅子を眺めて 

こんな小さなサイズの机や椅子を使っていた幼い時期から

志保子に対してあれこれ破廉恥なプレイを毎日のように繰り広げていた

当時の自分の野性味溢れる逞しさに思わず苦笑を漏らしてしまう


少し疲れたので休憩がてらに机のサイズを確認して 

自分が五年生の頃に使っていたJIS企規格の旧三号の机と

それに合った椅子に腰を降ろすと その滑稽な見た目は 

都内に住んでいた頃 高校に通学するバスの中でたまに見かけた 

大柄の外人さんが窮屈そうに座席に腰を降ろしている様な感じになり 

自分はこんなに小さかったんだなと改めて実感する


そうやって身体を休めながら自分が腰を降ろす机より

隣の机のサイズが かなり小さな事に気になって表示を見ると 

それは当時の志保子が使っていた旧六号サイズの机で 

机横のフックには被り忘れて帰ってしまったのか黄色い帽子が掛かっている


持って帰り志保子に出会えたら 今の彼女に被せるのも良いかも知れないと

周囲を見渡して帽子を被らせるならランドセルも・・と考えたが

さすがにランドセルの置き忘れは無いようで少し残念に感じる


手に取ったとても小さな黄色い帽子をしげしげと眺めながら

考えている事の卑猥さと邪悪さに反比例して 純粋な懐かしさが込み上げ

まるで・・そうあの頃に戻ったようなそんな気持ちになる


そんな気持ちに浸りながら目を瞑ると

ほんの少しだけ当時の追憶に私は耽るのだった



旧三号の机は165cmから152cmの適合身長サイズで

旧六号の机は144cmから131cmの適合身長サイズとなります

以前、姪っ子の授業参観に両親の都合で私がかわりに行った時に

机を見たら笑ってしまうくらい小さく 作中の様な懐かしさが込み上げた事を

思い出し取り入れてみました。それでは次回で 

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