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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
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耳に聞こえが良いパッケージ

陽が昇り朝焼けがダンボールで目張りした窓を

少しだけ透かして溢れた薄明かりの差し込む部屋の中で

雀が鳴く声に私は目を覚ます


かなりヘトヘトに疲れきった身体を何とか起こし 

夕べは志保子に出会ったら アレしてコレしてと妄想し耽りすぎた行為で 

起きた時にはもう既に 格闘ゲームなら体力ゲージが真っ赤になった状態の

自分に思わず自嘲的な笑いが浮かんでくる


それでも志保子に対して当時は「出来なかった事 思いつかなかった事」を

うっかり忘れないようにと ノートに詳細を書き記す事は忘れない


もう志保子を助けにいくのか 押し倒しにいくのか良く分からない状態とはいえ

準備は万全であるといっても過言ではない


いや・・そっちの準備じゃなくってさ・・と思う方もいるかも知れないが

これ以外の準備など 私の頭脳がスパークすれば何とでもなるのである


こういう風に考えてると助けに行く理由は性欲だけかよ?と思われそうだが

異性を救いに行く 殆どの勇者だろうが拳法家だろうが口に出さないだけで

根っこは私と大して変わらないと思う


「性欲」を「愛」とか「結婚」の耳に聞こえが良いパッケージに変えてるだけで

男と女が最終的にくっつく理由と居られる理由はソコが大きいと思う


例えばの話だが「北斗の拳」でシンに攫われたユリアが

ケンシロウがシンの手下とボロボロになって戦い助けにいったところ

何だかんだでシンと二人で仲睦まじく暮らしていたら

それを見たケンシロウはどうしたのかと考えてしまう


胸にヘンテコな傷跡をつけられ 大事に思ってた女性を寝取られて

それでもユリアが幸せなら俺は・・とでも言って去るのだろうか

もしそうなら道化過ぎて見てられないと思うが・・


そんな事を考えながらも私は フラつく足取りで何とか立ち上がり

寝起きで何一つしていないのに 既にアニメや漫画なら

「俺の事は良いから・・先に行け・・・」と云いたくなる

ヘロヘロ状態なのだが 伝える相手も頼める相手も居ないので 

仕方なく何とか自分で頑張るために浴室に向かう


熱いシャワーを浴びて少しだけスッキリすると服を着替えて 

目張りしたダンボールの覗き穴から外の景色を眺めてみる


雨は夜中に少し降っただけで もうすっかりと上がったようだ

雨の降る中を視界も悪く 周囲の音も聞こえづらい状態で

濡れてアレコレ作業をしないで済んで少しホッとする


出で立ちは半袖Tシャツに半ズボンで相変わらず「ぬののふく」だが

半ズボンは昨日のとは違って隠しの裏ポケットがついてあるものを履いて行く


そうして非常時に一番の助けになり そして一番の邪魔になるであろう

自分と同じ人間に対処する為に 寝る前に裁縫セットとゴムテープで

作っておいた鉄パイプ入れを 腰の横の部分に固定してあるベルトを装着する

そして作った時にも試したように鉄パイプを一度抜いてみる


鉄パイプ持ち手には包帯を巻いて滑り止めはしてあるし 

パイプ入れに戻しておけば よっぽど飛んだり跳ねたり

激しく動かなければ抜けたりせずに済む事を確認する 


さすがに刃物は奪われた時のリスクが大きすぎるのと 相手を刺すという

そこまでの覚悟が出来てはいないので もう少しだけ事情が判明するまでは

コレくらいで充分だと考える


鉄パイプ自体は大きめのTシャツの裾でぱっと見は分からないように隠すと

必要そうな物が色々と詰まったリックサックを背負う 


そうして外に出る準備を整えると 

玄関とは反対側のベランダのガラス戸とシャッターを開けて

ベランダに出てからシャッターとガラス戸を閉め直す。

ガラス戸の鍵は開けておく


そして避難用の縄梯子を垂らしてそれを使って一階に降り立つと

電動の巻上機が付いた電動リールという釣竿の部品と釣り糸で作った機器で

縄梯子を二階のベランダに戻すと 電動リールはクーラーの室外機の下の隙間に

濡れない様にペットボトルで作った入れ物にしまって隠しておく


避難用梯子にはもう一本 釣り糸を寄り合わせて作った紐が付いてるので

それを排水パイプの後ろに隠しておいて縛り付けておく事で 

部屋に戻るときは紐を引いて梯子を降ろせば良く

障害物を置いた玄関方面は弄らずに済んで楽チンである


一応は念の為に重ねればベランダに手が届く足場になる物も

バラしてあちこちに隠してあるので もしもの場合も大丈夫だろう


一階の庭で同じアパートの住人の気配を探るが やはり変わらず留守のようだ

必要ならベランダのガラス戸の鍵穴の部分をガムテープを張って

音が響かないように かつガラスの破片が飛ばないようにしてから

ハンマーで叩いて割って 室内に侵入し利用する事も念頭に置く事にする


私は細かな確認を終わらせてアパートの駐輪場に移動すると愛車である

「ジャイロキャノピー」を被せてある雨よけシートを外して道路に運ぶ


ちなみに「ジャイロキャノピー」とはピザ屋さんが良く配達で使ってる

タイプのバイクを想像して頂ければ良いと思う


雨の日も快適な大型ルーフ(雨よけ)を装備し スリーター(三輪)ならではの

安定性と静音性があり 荷台部分にはかなり大きな収納BOXが付いているので

四輪の車よりは流石に落ちるが荷物を運ぶのにも便利である


就職して初めてのボーナスを貰った時に 一括で買える値段で売っていたので

中古車を買うか迷ったのだが そもそも車を使うほど遠くに行く用事も無いので

必要な時はレンタカーで済ませれば良いと購入を決意したのである


こういう災害だか非常時には道路が昨日見たように封鎖されてる事もあるので 

歩道も楽に走れる中型バイクの方が有利である


オフロードタイプのバイクも調達出来たらしたいのだが・・と考えながら


私はバイクに跨ると 

今日の予定ルートの第一目標である「スーパー元長」を目指して

既に疲れた身体に何とか気合を入れながら


アクセルを回すのであった





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