志保子クッキング
鈴虫の鳴く音が闇に響く 七月最後の週のある日の夜
我が家の居間にて志保子さんは 僕の胸元に小柄な身体を背中で預けて
ちょこんと表現して良いくらい可愛らしくお座りをしている
その華奢で柔らかな肢体は力が抜けて とてもリラックスしており
涼やかな色合いの浴衣越しから伝わってくる 彼女の暖かな温もりの
余りの心地よさに 僕はつい微睡みそうになってしまう
しかしこのまま何もしないで大人達の帰宅まで過ごしてしまえば
彼女をお見舞いに行った あの日からこれまで
僕が一生懸命に言葉を尽くし宥めすかしながら
彼女の肢体を日課のように 念入りかつ丁寧に撫でまわす事で
徐々に彼女の中の いけない事をしているという感覚を
当たり前の行為に すり替えてきた努力が水の泡になってしまう
初めにドカーン!となかなかハードな撫で方をしたおかげで
その後はワザと控えめに触れたり 頭を撫でる程度に留めたりしながら
ほんの少し物足りなさそうな表情をしている彼女を見て
小学生の頃 日立港で海釣りをした時に釣り人のおじさんに聞いた
「押しては引いて」作戦が功を奏した事に僕は満足していた
最近では 少し戸惑いがちにではあるものの
彼女の方から身体を預けてくるようになったのである
この調子でいけば
僕が撫でる事を彼女自身に「おねだり」させる日も近いかも知れない
その日を夢見て高鳴る鼓動を何とか抑えながら 彼女の柔らかい温もりの
その心地よさに飲み込まれそうになる自分の軟弱さを叱咤激励すると
今日は「志保子ウィークポイントナンバー2(僕調べ)」の太股の内側を
念入りに撫で回そうと右の手を伸ばしながら
僕は壁に掛かった時計をチェックする
僕の両親もしくは志保子ママ帰宅まで後二時間弱・・
それが本日の「志保子クッキング」に使用出来る制限時間である
下手に大人達に僕の行いがバレて 危険が危ないと判断され
志保子さんと引き離されても大変なので綿密に稼働時間を計算する
浴衣を少しずつ捲り肌けさせるのに三十分 直に肌に触れる時間は四十分程度
彼女の乱れた浴衣を一旦は整えてから 浴衣の上から軽く触るのを二十分弱と
計算し 余った時間は元々露出している うなじや首筋に軽く唇を這わせペロンと
しながら耳朶とか甘噛みをして・・等と脳内で緻密なロードマップの作成をする
色々したいが制限時間が厳しすぎると 涙ながらに取捨選択していく
少し前半の捲り肌けさせるペースを上げる事も検討するが
でも時間が勿体無いからって一気に脱がしていくのも味気ないんだよなぁ・・
等と更に思考をアレな方向に加速させる
何故なら少しずつ衣服を捲り肌けさせながら 気恥ずかしげな反応を楽しみ
ときたま彼女に彼女自身の今の乱れた格好を言葉を尽くして伝えたり
もしくは彼女の小さな舌を僕の指で挟みながら 舌足らずな彼女の言葉で
今現在、自分がどんなに乱れた格好をしているか伝えさせたりして
更に恥ずからしがらせるというレベルの高いプレイが僕好みだからだ
また他にも今いる我が家の居間には 姿見用の鏡が無いので出来ないのだが
これが僕の部屋や志保子さんの部屋なら大きめの姿見があるので更に捗る
念入りかつ丁寧な言葉責めを中心としたプレイも 毎日の様に繰り返せば
残念ではあるものの何時かは彼女を慣れさせてしまい飽きられてしまう
どうしても何時かはそうなるにしても なるべく長く楽しみたい気持ちは
健全かつ真っ当な男子諸君にはご理解頂けると思う
そこで僕は二日か三日おきの適度な間隔をあけて
姿見用の大きめの鏡を利用している訳だが これが大変効果的なのである
人間は外部の情報を得る手段として用いている五感の中で
特に視覚に大いに頼っているのは 賢明な皆様は ご存知だと思う
真っ暗な闇の中でも背後からの物音に思わず振り向いてしまうのは
良い例だと思う
姿見に写る あられもない姿の自分を 目の前で晒された時の彼女の反応は
僕を越後屋や悪代官を超えた「良いではないか お殿様」状態にしてくれる
ワンダフルと叫びたくなるような素晴しいものがある
一生懸命に鏡に写る自分の恥ずかしい姿から 顔を逸らそうとする彼女に
「ちゃんと見ないと・・もっといやらしくしちゃうよ?」と
赤く染まった耳朶や白く滑らかな首筋に甘噛みしたり舌を這わせ
その小さなお口に僕の左手の人差し指をくわえさせると
ゆっくりと意地悪っぽく伝えながら彼女の表情をじっくりと鑑賞する
鏡越しや視線を落として間近で見る 彼女の顔を真っ赤に染めて涙目の
いじましく嗜虐心をそそる表情を見た僕の脳内では
レベルアップの音が鳴り止まず 更にレベルの高いプレイに走らせるのである
しかし今日は晩御飯を調理する時に 彼女に拗ねた口調でねだられて
大根の桂剥きのやり方や美味しい味噌汁の作り方を教えていたので
思わぬ手間が掛かり 志保子さん自身を料理する時間が足らなすぎる・・
昼間も「志保子クッキング」が出来れば本当に良いのだけど
「こんな明るいうちからはダメ!」と割と真顔で伝えられたので
「じゃあ夜なら良いの?」と尋ねると「す・・少しなら」と思わず
「フィッシュオン!」とポーズを取って叫びたくなる事を伝えてくれたので
流石に僕も自重するのである 急がば回れである
まあ夜だからこそ 電気を消してと困った声音で伝えてくる彼女に
「電気消してて真っ暗だったら 何してたのかって両親に怪しまれるでしょ?」
と上手に誑かしては アニメを見る時に出るテロップの
「テレビを見るときは明るい部屋で~」の感覚で
明るい蛍光灯の光の下で照らされた彼女の白く美しい肢体を
鑑賞し撫で回せるのだから痛し痒しではある
あちらを立てればこちらが立たずの諺通りだが
今日は軽めに済ませ 彼女を物足りない気分にさせて
その分 明日は手早く晩御飯を片付けて僕の部屋に連れ込み
縄跳びを使って久しぶりに緊縛しようと考える
まあ縛っても何する訳でもなく
恥ずかしがる彼女を眺めて楽しむだけで我慢するのだが
そうして黒い欲望に満ちた僕の手が
顧客満足度ナンバーワンの彼女の太腿に触れようとした その時
僕の手の甲に彼女の涙が一滴落ちてきたのだった




