二人になった晩御飯
夏休みに入り五日経った、八月まで数日の七月のある日の事
午前中は志保子さんと夏休みの宿題をこなし
午後からは前の日に二人で図書館で借りてきた
小野不由美さんの「十二国記」を、カーペットに並んで寝転び
あれこれ思った事を伝え合いながら読み過ごす。
切りの良い所で そろそろ夕方に迫ってきたので
晩御飯の買い出しに二人で手を繋いで
近所の大型スーパーである「かわねや」に向かう事にした
我が家の両親もそうだが 志保子さんのお家も和装が好きらしく
普段着に最近はお祭り以外は 余り他の皆が着ていない和服姿が多い
その日の僕は父親が買ってくれた
藍色しじら織りの甚平を身に付け 縄締め草履を履き
志保子さんも外出用の白地に金魚柄の涼やかな浴衣を身に纏う
学校以外で二人きりで会う時は
僕が彼女がとても大人っぽく見えるからとお願いした
髪留め無しの右側に前髪を流す髪型にしてもらうと
その出で立ちは とても美しく何時見ても何度見てもつい見惚れてしまう
日が沈んでも、まだまだ蒸し暑く
冷たくさっぱりしたものが良いというお互いの希望にそって
献立に合わせた買出しを済ませると 帰路は腕組みをし寄り添って家に帰る
そうして今は、二人で作り上げた晩御飯を食べながら
僕と志保子さんはテレビで「警察二十四時」を見ていた
志保子さんの味付けしてくれた
少し辛めの冷やし中華や紫蘇入りのだし巻き玉子は
勘弁してくれよと言いたくなる暑さにバテ気味な
この時期でも食欲を掻き立ててくれ とても美味しく頂くことが出来る
小学三年生の頃から家計の為と そして多分これから掛かる僕の学費の為に
共働きになった我が家で僕は何時も一人で晩御飯を食べていた
志保子さんとお付き合いをするようになり
一人じゃ無くなった晩御飯はとても美味しく
二人で献立を決めるのも料理を作るのも本当に楽しい
食べ終わって後片付けした後は
志保子さんの小柄で華奢な白く美しい肢体を「おさわり自由」よろしく
好き放題タッチ出来るのだから尚更である
されてる当人は「駄目だよ・・」と言ってるけど・・?の質問には
「嫌よ嫌よも好きのうちという 名セリフを知らないのかよ!」と
僕は胸を張って答えるだろう
まあそれなりにだが自制はしているので多分おそらく大丈夫・・
そう思いたいのだが・・なので多分きっと気のせいなのだ
先程から テレビに写る犯罪者達の 割としょーもない言い分が流れるたびに
何故か志保子さんは僕の方に顔を向けながら
ジト目と合わせて なかなか挑発的な声音と口調で でも充分可愛らしく
「相手に駄目!って言われてる事を しちゃ駄目だよね!」と
ドヤ顔で真っ平らな胸を張りつつ伝えてくるのである
もちろん悪い事や駄目と言われるような事を一切しない良い子の僕は
「本当だね!ウフフ」と
明るい口調で明後日の方向を見ながら軽やかにスルーする
そんな仲睦まじい幼いやり取りをしながら
食べ終わった食器を洗い終わり居間に戻ってくると
志保子さんは ごく自然に僕の腰を下ろしている前に座ると
背中で僕の胸元に寄り掛かって来ながら「文くん 抱っこ」と
頭を首筋に当てながら要求してくるのである
可愛い女の子の要求には自動反応してしまう素直な身体である
食べたばかりで一杯のお腹に寄り掛かったら中身が出ちゃうでしょ・・と
思いつつも すでに調教されている従順な僕は
志保子さんのお腹に手を回すと軽く抱きしめるのだった
志保子さんのリラックスした力の抜けた身体と満足気な吐息を聞きながら
これ抱っこじゃなくて椅子じゃね?と考えながらも
彼女の柔らかな肢体の感触に 僕らしくなく減らず口が一つも出て来ない
こうして居られる時間がとても好きなのだが あと二時間もすれば
家の両親も志保子さんのお母さんも帰宅して来て
離れてしまうのがわかっているので とても残念な気持ちにもなる
明日もあるじゃない とは思うのだけど名残惜しさが胸に溢れてくる
どうしたって養われる立場の僕達は
自分達の思い通りになる事の方が圧倒的に少ないのだ
でも仮に養う立場になればなったで 両親達がそうなように仕事仕事で
結局は思い通りにならない事はわかっている
なら今の内に少しでも明日までの一人に我慢できるようにと
僕は志保子さんの柔らかそうな太腿にダークな欲望に満ち溢れそうな
この手を伸ばすのだった