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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
103/126

不安な眠りに落ちながら・・

志保子は薄暗いコンビニの事務所で

脚立を使って天井裏に通じる作業孔の板を外す。


動物が一番無防備な状態の睡眠を安心して取るために、彼の話で聞いた通り

天井裏を綺麗に掃除して居心地を少しでも良くしておいたのだ。

店舗と同じ広さの天井裏は横には広いのだが、高さはなく

まっすぐは立てず中腰なのは少しキツイが、この際仕方がない。


ここなら脚立を使わない限り、もし店内や事務所に侵入されても、

寝込みを襲われる前に気が付いて起きれるし、通気孔の柵も外し広げてあるので

そのまま屋上に上がり、用意してある渡り梯子で他所の建物に移る事も出来る。


脚立自体も紐を通してあるので天井裏に引き上げておくと

作業孔のそばに畳んで置いておく。


天井裏に敷き詰められたダンボールの上に敷かれた寝袋を触れて

これを使っていた人たちが、自分の目の前で化物に襲われていた光景を

思い出し、気分が少し悪くなったが、胸に手を当ててじっとしていると

少しずつ気持ちが落ち着いてきたので、少しほっとする。


従業員が仮眠用に使っていたのだろう、この寝袋があったのが助かる。

ダンボールを下に敷いてはいるものの、床に直に寝るのは少しキツイのだ。


水や食料品等も少しだが移して置いてある。あの化物が「巣」に帰る習性が

あるのなら、ここに隠れてやり過ごす事も出来る可能性もあるからだ。


作業孔を外していた板で塞ぐと、真っ暗になった天井裏で懐中電灯を点す。


横になる前に周囲を確認し、きちんと何かあった時の準備が出来てるのを見て

寝袋に入り電灯の明かりの中、持ってきた「女の子の食卓」の表紙を撫でる

彼との思い出を少し彷彿させるコレに手を触れていたかったのだ。


表紙を撫で、彼との記憶を思い出しながら少し時を過ごし

名残おしかったが単行本から手を離し電灯を消す。

そして暗くなった天井を見つめながら私は考える。


何時か私もあの化物に襲われて死ぬだろう。

いくら食料の備蓄がたくさんあっても無限では無いのだ

電気や水道も何時まで持つかすらわからない。


でも死ぬその前に、もう一度だけ彼に会って

傷つけてしまった事を謝りたいと思う。


そして叶うなら 

またあの優しい笑顔で笑いかけてもらい抱きしめてもらえるならば・・

そう考え諦めてしまいそうな心を何とか引き締める。


まだ死ねない・・出来る限り足掻いて

もう一度彼に会うまでは・・そう思いながら志保子は目を閉じる。


先への不安を抱え、しかし緊張で疲れきっていた彼女は

少しずつ眠りに落ちるのだった。



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