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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
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今までの私の話

田口くんの膝の上で頭をその大きな手で優しく撫でられながら

自分の太腿に残る温かい感触の余韻にぼんやりとしてしまいます。


そして彼に優しく抱っこされつつも、急激に湧いてきた凄くいけない事を

してしまったようなそんな気持ちに、私は思わず泣き出してしまいました


彼に頭を撫でられながら謝罪され

何となく上手い事、言いくるめられてる感じもありましたが

それでも彼に女の子として扱われることは嬉しいのもあり

つい泣き出してしまった事を謝ると、嫌なのでは決して無く 

もう少しだけ時間が欲しいと伝える事が出来ました。


彼に触れられた箇所は、今も痺れたような感覚は残っていますが

それは不快な気持ちや感覚では全く無くて

眠い時のお布団のように、とても気持ち良く心地良いものなのです。


その心地良さにこのまま流されてしまえば、自分自身が本当にどうしようもないくらい、彼のものになってしまいそうで怖いのです。


今でさえ彼に優しく抱っこされて二人の頬が触れ合うだけで

このまま眠りに落ちてしまいそうな微睡みに包まれているのですから。


まだ彼に隠している自分の暗い過去を、黙ったままの私を受け入れて貰うのは

彼の優しさに対する不誠実な気がして、私には出来ませんでした。


彼が話してくれる、彼の小さい頃の楽しかった事や失敗話に

感じた事や思った事を伝えながら、彼の後に自分も話す事になる 

自分自身の過去の余り人に聞かれることが芳しくない内容に

私はつい溜息が漏れそうになります。


彼の予想した通りの聴いてるだけで楽しくなる過去の思い出話が終わり


「志保子さんの小さい頃は どんな風だったの?」と尋ねてくるであろう

彼の言葉を思い浮かべて、過去の彼を知れて嬉しかった気持ちが、落ちて

しまいそうになっていた私は、話しを終えた彼の言葉に本当に驚いたのです。


「志保子さん」と何時もの優しい声音と口調で

「何時か志保子さんが話せる時が来たら・・」と

言葉を切ると、私の頭を丁寧な手つきで撫でてくれながら

暗い気持ちで彼と目を合わせることが出来ない私に


「志保子さんの僕と会う前の事を聞かせて欲しいです」と

温かい言葉を掛けてくれたのでした。


そういえば・・彼は他のクラスメイトとは違って、彼から私の以前住んでいた

場所や、学校での出来事、どんな友人達と、どんな事をして遊んだかなど

一度も聞いてこなかった事に気がつきました。


彼はまず自分の話をしてくれ、それに応えた私の言葉を広げる感じで

話を進めていてくれたので、今の今まで全くその事に気がつかなかったのです。


よく考えてみれば、あれだけ心配りが出来る彼が、今のクラスメイトの

その質問に口篭っている私の姿に、気が付かない訳が無いのです。


全部なのかは・・分かりませんがある程度は察していてくれて

それで気を使って聞かずにいてくれたのなら、例えそれで彼にもし・・

幻滅されたとしても、きちんと私から私の言葉で彼に伝えなくてはと思い


自分の誰にも話したことがない過去の話を


私は彼に伝えたのでした。



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