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無職くんと薬剤師さん  作者: 町歩き
するまでが とても長すぎる決意
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リア充爆破成功とスター状態とは

目的の寮のあるビルまでの間の家々でも 同じ作業を繰り返しながら

到着したビルの前で私は以前 近所のコンビニの店長に聞いた話を思い出す


何かの会社の寮だと聞いていた 五階建てのビルの一階部分は

コンビニの入口のように 両開きのガラス製の自動ドアになっており

夜など外から見ると下駄箱の先にある ホールのような所で楽しそうに

卓球に興じている男性達の姿や それをビールを片手に笑いながら眺めている

女性達の姿を良く見掛けたものだった


「リア充爆発しろ・・・」という呪いを掛けたくなる光景を見ながら

楽しそうだな と少し羨ましく思いつつガラス戸越しに見ていたものである


暖かな暖色系の明かりの下で笑い合う男女の住人達と

それを外側から眺めている自分を省みて 同じくらいの年齢みたいなのに

自分はどうして・・・と居た堪れなくなったものである


そのガラス扉が粉々に砕け散っている。呪いが効いたようだ効果抜群と呟くと

思わず私の表情は明るくなる。胸の奥底から沸き起こる歓喜に震えながら

一応は状況をきちんと確認する。外側から内側に向かってガラス扉が外れたのか

ホールの方にまで破片が飛び散っており 足の踏み場もない状態である。


ホールの先にあった卓球台も 玄関の反対側のガラス戸を突き抜けており

昨日の夜の雨で濡れたのだろうポタポタと雫を垂らしている


「何か・・すっごい事になってる・・・」


不穏な内容の防災放送やら 近隣の住人が誰一人居ない事 

電話が何処にも繋がら無い等 異常な事態というのは分かってはいたのだが

何というかそれっぽさがいまいち足らなかったので

緊迫感が無かったのは否めない


確かこうゆうのを「正常性バイアス」と呼ばれている事を思い出す


「正常性バイアス」とは外界の強烈すぎる刺激に対して

人間がそれを心理で抑制して 慌てないようにしてしまう事である


日常性を保護するために必要な措置だが度が過ぎると「本当の危険」に対しても

反応が鈍くなり すごい大爆発を見ても「煙はやがて収まるだろう」と考えたり

これは地震の多い日本に住む私達には 良くある事だと思うが 地震があっても

「今の小さな地震は本震であって もっと大きな地震への予震ではない」と

都合よく思い込むように 暴風雨被害や津波などの自然災害やテロなどの

あらゆる事態に対して「きっと大丈夫」という判断をしてしまう事である


なので場合によっては正常性バイアスが原因で 被害が甚大化することもある

分かり易く言えばマリオのスター状態(気持ちだけ)である


東日本大震災が発生し大地震の後の 大津波が迫って来ているのに

ニコニコ動画を実況していたり Twitterで「地震なう」等と呟いている間に 

津波に飲み込まれて それが遺言になった人の話を聞いて 

余りにもアホ過ぎて ちょっと笑ってしまったものだが 

今なら少しだけその気持ちが分かる気がする


私もマリオのスター状態(気持ちだけ)だったようである

そしてマリオもスター状態でも死ぬことはある 


穴に落ちた時である。それ以外も確かBOSSにはスター状態は

効果が無かったと思う。


気持ちだけのスター状態でスーパーでもマリオでもない

ただの無職な私では事が起きれば あっという間にあの世行きかも知れない


残数もなければコンテニューもない 

ましてや「強くてニューゲーム」もない現実では

「まだいける!」は「もう死んでた・・」と同義である。


そう考えて改めて自分の姿を見ると 暑いのもあるが半袖Tシャツに半ズボン姿

持っているのはペンとメモ帳とセロハンテープである


「これではスライムにも勝てない・・」


実際何かやばそうなものに出会ったら「たたかう」という選択肢はなく

「にげる」の連打なのだが それにしても無防備極まりなく 

何か武器がわりになるような物がないかと周りを見回す


何もそれを使って戦う訳ではない 私はガテン系では無いのである

威嚇したり相手との距離を取れれば充分なのだ


そして周囲を見渡しホールの壁に備え付けのロッカーから

掃除用具が散らばっているのを見つける


丁度良い感じの手頃な長さと重さの モップを手に取り軽く振ってみる

「ひのきの棒」を手に入れた。頭の中でドラクエ風に考えると

ちょっと楽しい気持ちになってくる。


このビルを少し探索して見ようと思う。

ガラス片が無い所でシューズを脱ごうとしたが 

もしもの時の事を考えて履いたまま先に進むことにした。


床にはガラス片の他にも 先程の一軒家のように濡れた足跡が

そこかしこにあるからというのもあるが

もし誰かに出会って 怒られたら謝罪をして掃除すれば良いのだ

モップを持っている事だし。そう考えてモップを構え直すと


私はホール横の管理人室に目を向けた




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