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wars world 自衛隊戦記  作者: ほわいと
20/24

森の中のエルフ1

日本時間 1月2日 午後 3時39分 特区基地


眠い目を擦りながら真志はベッドの中で目を覚ました。


「ふぁー今、何時だ?」


腕時計を目をやると起きるはずだった時間から30分近く寝坊していた。


「うわっ!やばっ」


陸将から来るように言われていた時間まであと1分しかない。

慌ててベッドから飛び起き部屋まで急ぐ。


「遅れてすいませんでしたぁ!」


遅かった。

完璧に遅かった。

陸将の睨むような視線が突き刺さるように注がれている。+


「10分遅刻だな?真志」


陸将は楽しそうに笑っていた。

真志はこんな笑みをする人を2人しか知らない。


「(ああ、絶対にどっか行けと言うんだろうな・・・・・・)」


だが、意外にも陸将はため息をついた後にお優しい言葉を投げかけてくれた。


「まあ、一晩逃げ回ったんだからしかたないか・・・真志2等陸尉!」

「はっ!」


急に真剣な口調になり、真志も姿勢を正す。


「君の小隊にトュレン王国内陸部の偵察を命じる!」


日本時間 1月3日 午前11時9分 トュレン王国活動拠点


「暑いなぁーやっぱり」


服の袖を捲りあげながら真志がぼやく。


「隊長、出発準備整いました」

「おっけー分かった」


真志は報告してくれた永井に軽い口調で返し、整列している隊員達の前に出る。


「これより我々は内陸部の偵察を行う。万が一敵と接触した場合は自分で判断し発砲しろ。いいか?間違っても民間人は撃つなよ。以上、全員乗車!!」


事前に要請しておいた高機動車2台と軽装甲機動車にそれぞれ乗り込んで行く。

全員の乗車を確認すると無線のテストもかねて各車に連絡する。


「小隊、出発!」


真志はこの時、気づいていなかった。

後ろで何か物音がしていることに。

これが良くも悪くも一行の運命を決めたのだった。


日本時間 1月3日 午後13時54分 トュレン王国内 現在地不明


「うーし、全車、止まれ。一回ここらで飯としよう」


魔獣などの危険があるためなるべく見通しがきく場所に移動する必要があったため昼食が遅くなっていた。

実際、何も考えずに休憩を取っていた部隊が襲われたという話もあるくらいだ。

車両を盾にし、綺麗な川が流れる川原で昼食をとる。


「まったくいくら長期任務だからといってカンメシかよ」


カンメシは自衛隊が創設された1954年から採用された缶詰タイプの糧食で、レトルトパウチ包装タイプの戦闘糧食 II型が出た現在でも耐久性や保存性の面で優れているとされ、陸海空三自衛隊で使用され続けている。


「隊長、文句いわないでくださいよ。俺だってカレー食べたいんですから」

「わりぃわりぃ」


まあ、言っても自然と糧食が尽きてくると豪華なラインナップが出てくるのでそれまでの辛抱だった。

だが、彼がとり飯に夢中になっている間、彼の後ろの高機動車のバックドアが開き、中から白髪の17才くらいの少女が降り立つ。

その光景を見ていた小隊メンバーはその美しさと非現実的な光景にとり飯をぶつぶつ言いながら喰らう真志以外、固まった。

その光景をまったく気付かない真志は訝しんだ。


「おいみんなどうした?」


その場を代表して一人が答える。


「た、た、隊長。あれ!あれ!」

「あれ?」


彼が指さし、真志が振り向くのと少女の顔が真志の前に突き出されたのはほぼ同時であった。


「よ、ようシェリー。どうやってここまで来たんだ?」

「あら?見てわかんないかしら。あなた達のクルマとかいうのに乗ってきたんだけど?」

「え・・・・・いや、まさか、お前!荷物に紛れてたな!」


シェリーを咎めるがシェリーはどこ吹く風だ。


「ねえ、私にもそれ頂戴」


ご丁寧にカンメシまで要求してくる始末である。


「まあ、一応多めに持ってきたからまだあるが・・・・」


付属の缶切りで缶を開ける。


「おーすごいわねこれ」


こちらには箸の概念がないため、一応なにかの拍子に住んでいる住民に糧食を分け与える時のためにスプーンを用意していたためシェリーはそのスプーンを使ってとり飯をすくってしばし観察した後、口にいれる。


「ッ!?おふぅいわ!」


何を言っているのか大半は分からないがおいしいと言っていることだけは理解できた。


「やっぱりニホンの食べ物はおいしいわ!これが一兵士の糧食だなんて信じられない」

「そりゃあ良かった。そういえばお前たちは何を食べてるんだ?」


真志は自分たちの糧食が普通であるのでこの世界の糧食など気にしたこともなかったが、この後聞く機会もないだろうからと思い、聞いてみただけだった。


「うーん、干した肉とか果物が普通。おいしいと思えるのはチーズぐらいかしら」


話している内にとり飯の缶の中身は空になっていた。


「よーし、みんな食事は済ませたな。んじゃ出発・・・・?」


言葉を紡ごうとした真志の言葉が途中で切れる。


「?どうされました隊長」


その様子を訝しんだ永井が訪ねる。


「あ、あれ?おーい誰か、俺の小銃を持って行ったか?」


全員が揃って首を横に振る。

え?それじゃあ・・・・・・


「いただき~!」


近くの茂みの向こうで誰かの声がし、ガサガサ、という音まで聞こえてきた。

少しだけ姿が見える。

手には89式小銃、耳が長い。


「え?耳が長い?」


その非現実さに驚き、思わず呟いてしまう。

だが、目先の緊急事態を優先し、考えを頭から振り落とす。


「待て!」


真志の近くにいた隊員達も駈け出す。

だが、生い茂った枝などが邪魔でまったく進めない。

しかも、少年は当たり前であるかのように木から木へと渡り、悠々と引き離していく。


「ああもう!どこの悪ガキだクソッたれ」


この状況の悪さに悪態をつく。

もう、追い付くどころの話ではなくなり始め、ついに追いかけていた隊員達の視界から少年の姿が消える。

だが、真志は違和感を覚えた。


「(どうして、森の向こうから光が差し込んでくる?ここは何百キロにかけて森林地帯のはず・・・・)」


だが、その疑問はすぐに解消されることになった。


「ッ!?ストップ!ストーーーープ!!」


追いかけていた隊員達を含めた全員がその光景に絶句した。


「ここを・・・・飛び降りたのか・・・・?」


隊員の一人が呟く。

そう彼らの目の前にあったのは、飛び降りればまず即死間違いなしの断崖絶壁だったのだ。


「だれか双眼鏡持ってないか?」


真志は双眼鏡を他の隊員から受け取り、覗く。

すると、崖下をさっきの少年が走っている姿が見えた。

そのことに驚きながら、彼の行く方向をしばらく眺めてみる。

すると、森の中から煙がたっている事に気付く。


「見ーつけた」


彼が向かっていたのはまず分からないように偽装された小さな村だった。


「仕方ない。予定を少し変更してあの村に立ち寄るぞ。全員、装備をまとめて5分で出発!」

「「了解」」


無線で永井にも連絡をする。

真志は心の中で事態をややこしくしてくれた少年に対して罵倒を浴びせかけた。

そして、草木が生い茂った道をまた戻り始めた。



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