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wars world 自衛隊戦記  作者: ほわいと
19/24

逃亡

そして、話は真志達に戻ってくる。


日本時間 1月2日 4時54分 どこかのサービスエリア

「ぶぇくしゅん!」


と奇怪なくしゃみを上げながら荒川玲奈2等陸曹はとなりの男に話しかけた。


「永井さんいつになったら隊長たちは来るんですか?」


呼びかけられた永井陸曹長は二の腕を擦りながら返答する。


「分からんよ。隊長たちと合流しろと言われてここまで来てみたらいないじゃんか」

「ですよね~なんでこんな寒い中で30分以上待たされなきゃなんないんですか!」


そこからめっきり会話がなくなる二人。

寒さを紛らわすためにまた永井に話しかけた。


「永井さん前のシーミストでの戦闘って隊長、今でも話題にされることがあるんでしょう?」

「ああ、そうだな。陸幕長が弁明しなければどうなっていたことやら」


実はあの焼肉屋で真志の友人たちはあえてその事を言わないようにしていた。

あの国を救ったのは紛れもなく彼が率いた部隊だったのだから。


「そうですね・・・・ん?あれはなんですか?」


そう言われ永井は首を180度回転して高速を見る。

すると普通では出さないようなスピードで走る2台のバンがあった。


「永井さん、あれ・・・・・・?」

「ま、まさかな・・・・・」


二人が疑うのも無理はなかったが予想は的中していた。


「ふたりとも早く乗れ!詳しいことは後でだ!!」

「了解!!」


二人が乗り込むとそこには殺気を放つ先客が乗っていた。

早く戦いたくてうずうずしているように彼らには思えた。

話しかけないほうが良さそうだ。


「出せ!」


真志が一喝すると来た時と同じスピードでバンが走り出し、掴まるものを見つけられなかった二人はそのまま倒れこんだ。

それと同時にサービスエリアの入り口からSUVが数台走りこんでくる。


「もっととばせないのか!?」

「これが精いっぱいだ!!」


ハンドルを握る隊員が怒鳴り返す。


「玲奈ちゃん、武器は?俺の9㎜は弾がない」


マガジンを1つしか携帯していなかったのは今回の警護任務の最大の反省点だろう。


「はい、9㎜機関拳銃と9㎜拳銃しかないです」


玲奈は重たいバッグを降ろし、かかっていた鍵を外すとなじみの武器が目に飛び込んできた。


「十分だよ。ありがとう」


9㎜機関拳銃をバッグから取り出し、弾倉を入れ、槓桿を引き発射可能な状態にする。


「絶対に外すなよ。一応ここは高速で、一般車両も走ってる。モードは単射でいけ。いいな?」

「「了解」」


そして、一通り言った後、永井が真志に言った。


「隊長って心配性って言われませんか?」

「ん?言われないよ。ただ、ウザいとかいちいち言わなくてもわかってるとかは言われたことあるけど?」


そうゆうのを心配性って言うんだよ!と言いたい気持ちをグッとこらえて苦笑いをした。

真志は座っていたSEALsの隊長のところへ行き、状況開始を伝えてくれるように頼む。


「総員状況開始ッ!」


真志が静かに叫ぶのと同時にドアが開け放たれて、冷たい風が車内に流れ込んでくる。


「「撃てッ!!」」


SEALsの隊長と真志の号令が同時に放たれる。

SUVに無数の弾痕が刻まれる。

すべての隊員が顔から慈悲という表情が消えていた。

それはもちろん自衛隊員も例外ではなかった。


「徹底的に叩け!これ以上、追跡されるのはマズイ」


いっそう銃撃が激しくなり、その勢いに負けたSUVが後退を始めたがそこに入れ替わるように別の車両が入ってくる。


「おいおい。嘘だろ?」


そう呻かざるおえなかった。

中国の部隊は途中の街で追跡をまいたはずなのだがどうやら嗅ぎ付けてきたらしい。


「ぐはッ!?」


SEALs隊員の一人から驚きの声が上る。

被弾し、腹のあたりが赤く染まっていた。

敵も態勢を立て直し始めている。


「玲奈ちゃん治療を!!」

「はいっ!!」


被弾した隊員の傷を少し見て、銃弾が貫通していないことに気付く。


「隊長!銃弾が貫通していません。至急、手術が必要です!!」

「クソ!」


まったく最悪な新年だ。

ふぅ、と息を吐きだし気持ちを整える。


「隊長さん。ロケランはある?」


通訳を介してその言葉が彼の耳に入ると驚きに目を見開いていた。

この平和国家である日本の自衛官が高速道路上でロケットランチャーはあるかと聞いているのだから無理はない。

だが、あの数の敵を相手にすればいくら精鋭のアメリカ特殊部隊と3人の自衛官では話にならない。

足止めが必要だった。

いまもなお銃弾を敵に浴びせ続けている永井に真志は目で確認をとった。

しっかり永井は頷き返し、同意する。


「分かった。本当にいいんだな?」


頷き返すと知らないからな、と言いながら隅に置いてあったM72 LAWを担いで持ってくる。

真志は隊長に弾が当たらないように撃つ。

隊長が後方噴射(バックブラスト)対策としてルーフから体を出す。

敵の一台にしっかり照準を合わせ、引き金を引いた。


ドォオオオオオッ!!


爆音と炎を撒き散らしながら敵車両は回転し、後続の部隊の道を塞いでいた。


「これで足止めになるだろう。あとどのくらいで着く?」

「およそ30分程かと・・・・・」


隊員が答えるのと同時にポケットにスマホと一緒に入れていた゛PDA゛にメールが届いた事を知らせる音が鳴った。

この最新式PDAは特区で活動する部隊の隊長が持つことを義務付けられてられている物だった。

現在判明している地理情報や現地情報などに限らず、中継器の範囲内であれば通信も可能という優れものなので愛用されている。

だが、無線があるので本当に緊急時にしか通信は入ってこない。

それが鳴るということは緊急の用件なのだろう、と思いPDAを開く。

メールなどではなく、通信が入っていた。

相手は―――陸幕長。


「こちら真志、用件を」

「真志二尉、今から送る座標に向かえ。我々が゛歓迎゛の準備をしている」

「歓迎・・・・ですか・・・?」

「そうだ。通信終わり」


一方的に会話を打ち切られそれと同時にメールで座標が送られてくる。


「これは・・・・!?」



日本時間 1月2日 6時30分 横須賀市


「敵はどこだ・・・・?」

「かなり回り道をしてきましたからね。追跡を諦めてくれると嬉しいんですが」

「それはないだろう。シェリー達が来ていることすら機密だったんだぞ?それを知っているということはかなりの情報収集能力だ。ちょっと撒いたくらいでくらいで諦めるとは思えない」


真志はここで少し油断していたのかもしれない。

目的地がすぐ近くであることに安堵し注意が散漫になっていたのだ。

その油断が命取りとなり、真志は横からこちらに突っ込んでくる大型トレーラーに気付くことはなかった。


日本時間 1月2日 6時38分 横須賀市


「全員拘束しました。少尉」


羅少尉は優越感に浸っていた。

彼の目の前には大破したバンと拘束されたアメリカ人と日本人がいた。

彼はこの世の中で最も嫌いな言語で目の前の日本人に話しかけた。


「ふむ、残念だ。せっかくここまで来たのにな」


嫌味たっぷりに言う。

時間が許す限りこの男に屈辱を与える気でいた。


「この゛来賓゛は我々が貰っていく。君たちが持っていても有効活用できないだろう?こちらではこうゆうのを宝の持ち腐れと言うのかな」


そして、思いっきり腹を蹴る。

何度も何度も蹴りつづける。


「少尉、時間です」


部下が歯止めをかける。


「そうか。では失礼するよ」

「まさしぃいいいいいいい!!」


シェリーが抵抗するが首に手刀を落とされ昏倒する。

もう彼らを止めるすべはないとこの場の誰もが思っていた。


だが――――



「クククククク」


笑いを噛み殺している笑い声がその場に聞こえだした。


「なにがおかしい?」


羅少尉が歩みを止めた。

そして、真志は重大な勘違いをしていることを諭すように語り始めた。


「お前ら本当に勝ったと思っているのか?そうだとしたらとんだ間違いだ」

「隊長なにを・・・・」


永井が正気ではないという目で真志を見た。

それに気づかず真志は話を先に進める。


「ここはどこの国だ言ってみろ」

「何を言っている?ここはお前たちの祖国だろ」

「そうだ。だからお前たちは勝ってなどいない」


真志は気付いていた建物の上にいる人影に。

そして結論を告げた。



「お前らは包囲されているんだよ」



刹那、拘束されていた者達の見張り番をしていた兵士二人が胸から血を噴き出しながら倒れた。


「何が起こったんだ!?」


羅少尉はパニックになっていた。


「敵の襲撃です!」


彼の部下たちが慌てて応戦の構えをとる。

その隙を突き、SEALs隊員達がロープを断ち、反撃をする。


「まったく気付いてたんなら教えてくださいよ」


9㎜機関拳銃を取り戻した真志は敵のSUVに隠れて単発で敵に攻撃しながら永井の質問に答える。


「仕方ないだろう。あんな状況で言えるかってんだ」


真志はあんなセリフが言えたことがうれしく敵の攻撃にも熱が入っていた。


数分後には、敵は制圧されさっきと役回りが逆になってる。


「救援感謝します。゛SAT゛の皆さん」

「ええ、ですが我々は名目上は゛凶悪犯゛の制圧ですから」


するとPDAに通信が入ってきた。


「こちら真志です」

「大丈夫かね?真志二尉」

「はい、結局歓迎準備は無駄になりましたね」

「そうだな。来賓護衛ご苦労だった」


そう言い残し通信は切れる。


「じゃあ帰りますか、と、その前に」


何かを忘れていたような口調だった。


「隊長さんの名前は?」


SEALsの隊長は微笑みながら返した。


「機密にあたるが・・・まあ、同僚ならいいだろう。俺の名はジャックだ。あんたの名は?」

「真志だ」

「そうか・・・君たちとはまた会えそうな気がするな」


そこに彼の部下がやってきて、時間です、と告げる。


「アディオス、Mr.マサシ」

「アディオス、ジャック」


そして、ジャックの姿は夜の暗闇へと消えていき、真志達もまたそれぞれの場所へと帰って行った。

こうして、逃亡劇は幕を閉じ、残りの休暇を東京で過ごした。






皆様はいかがお過ごしでしょうか?前回の投稿から早くも一ヶ月、早いもんですよね。明日には話の始まりである故郷 前編の日になりますね。まあ、長話も難なんで最後に結論を述べます。


皆様、良いお年を!!!

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