魔海戦 中編
日本時間 1月1日 午後 2時8分 シーミスト王国
「では、あれは゛魔物゛と呼ばれるものだと?」
港を出港した『みかづき』は湾内に停泊し、現場を目撃した商人のところへ赴いていた。
「あ、ああ、ありゃ並大抵の魔物じゃねぇ。海の悪魔゛クラーケン゛だ」
思い出すだけでも嫌そうに商人は身を震わせた。
「クラーケン?」
直接話を聞きに来た龍雅が聞いたことがあるような名前だと記憶のタンスを探る。
「あいつか!」
と、一人で納得した。
「艦長なんなんですか。そのくらーけんってのは?」
「ああ、中世から近世にかけて、ノルウェー近海やアイスランド沖に出現したとされている大きなタコのことだ」
商人が訝しそうな顔をしていたので慌てて取り繕う。
「すいません、こちらの話です」
「で、続きを」
商人は震えながら話始める。
「ありゃあ、俺がこの辺では珍しい商品を手に入れて別の街に売りに行こうとした時だった・・・・・俺の船の横をでけぇ商船が通ったんだ」
そこで商人は話を切ると、待女が持ってきていた酒を飲む。
「すると追い抜いて行った商船にいきなり触手が巻きついて、船が真っ二つになったんだ。落ちたやつも海に引き込まれていった・・・・・」
「それで・・・・それで・・・・」
豪気な商人と聞いていたのだが、わなわなと震える商人はそんな人には見えなかった。
「もう、結構です」
そう言い龍雅たちは商人の屋敷を出た。
「もう、救出活動って話じゃなくなって来ましたね」
「ああ、最悪戦闘になる可能性もある」
戦闘行為だけはなんとしても避けたかった。
龍雅は復興途中の街と不釣り合いな自衛隊の車両を見る。
「しかたねぇか。陸さんの岡崎陸将に報告してくれ」
「了解」
日本時間 1月1日 午後 3時21分 シーミスト王国 王室
「で、私になんの用で?」
クレアは久しぶりに来た客人におおいに驚いた。
それが、先の戦いで攻撃した船の艦長だと、罪悪感が胸をよぎった。
「害獣駆除の許可を頂きたく参りました」
国家元首なので、龍雅と何人かの隊員達は頭を下げる。
「がいじゅうくじょ?」
「はい、クラーケン駆除の許可を」
「すでに、日本国政府は許可を出しています」
隊員の一人が補足説明をする。
だが、クレアはそんなことよりその内容に驚いていた。
「くらぁーけぇん!?」
何百年前から王国を悩ませている海の悪魔を倒すならうれしい限りだが、あの怪物を倒せるのか疑問でもあった。
「ええ、そうです」
「それは・・・べつに私たちとしてもうれしい限りだわ」
「分かりました。許可していただき、ありがとうございます」
「それでは、我々はこれで」
「その代わり、観戦武官を数人つけたいのだけど、いいかしら?」
龍雅は少し悩んだ後、龍雅は言った。
「分かりました。本部に相談してみます」
クレアからは龍雅が独り言をいっているようだったが、どうやら手にしている箱のような魔法具で話ているようだった。
「まあいいんでしょう。ですが、武装はしないようにお願いします」
「承知したわ」
1日後 日本時間 1月2日 午前7時 シーミスト王国
「なんかドキドキするな」
「そうね、異界の船に乗れるなんてね」
まだ若い、二人の騎士―グレノとアリスだった。
そんな二人を老兵のガルべスがたしなめる。
「二人ともはしゃぐな」
その時、空の向こうからバタバタと鳥が羽ばたくような音が聞こえた。
「何?」
そして、彼らの前に白の虫のような物体が降りてきた。
「お待たせしました。どうぞ、お乗りください」
中から青の奇妙な服を着た者たちが降りてきて乗るように促す。
おそるおそると言った様子で騎士たちは乗り込む。
「おたがい早い時間からなので、眠いですね」
若い隊員がわらいかけながら言う。
3人はお人好しだと思った。
「それで、どこに行くんだ?」
「我々の船ですよ」
ヘリは『みかづき』へと戻っていく。
太陽が昇りヘリを赤く染め上げた。
またもや待たせてしまいすいません。次はかなり遅れそうです。感想待ってます。