故郷 前編
「自衛隊が侵攻作戦を行ったとは本当ですか!」
記者たちが狂ったように政治家たちに向けてこの質問を繰り返していた。
「あくまで自衛隊は帝国に虐げられた人々を救うためシーミスト王国の要請を受けただけであって、トュレン王国に侵攻したわけではありません」
どの政治家たちも口を並べてそう言った。
だが、国民はそうは思っていなかった。
ニュースでも大きく取り上げられ、ネットでも様々な陰謀論が囁かれていた。
日本時間 12月28日 7時39分 自衛隊基地
「え、ええええ!俺が要人警護役ですってぇーーー」
「仕方ないだろ、お前以外に現地人と多く接した人間はいないんだから」
岡崎陸将はあたりまえだ、と言わんばかりの態度でさらりと言い放った。
この事件の発端は数日前のことであった。
砦で連行し、頑なに口を閉ざしていたあの少年が突然、自分は帝国の皇子だ、と名乗りだしたためであった。
そして、日本と交渉したいと言ったためで真志がその警護をすることとなったのだ。
「まあ、なんだ国会議事堂まで連れて行ったらそこでお役御免だ。彼の滞在する2週間の間、地元に帰ったらどうだ?」
それも一理あった。
何年ぶりに帰る実家だろう、と真志が考えるていると、岡崎陸将が忘れてたとばかりに言った。
「そうそう、あの...なんて言ったけ...シ、シェ....」
「シェリーです」
真志が補足する。
「そうそう、シェリーって子とパティって子が一緒に行きたいと言っているぞ」
なんでパティの事は覚えているんだ、と真志は心の中でツッコミをした。
「モテる男は違うな」
岡崎陸将がからかう。
真志が建物がから出るとすぐに日本とここを繋ぐ『門』を通る定期便に乗る。
いつも見かけるの違っているのは物騒な船が2隻、定期便を挟むように浮かんでいることと、どう見ても不釣り合いな少年が黒服の人々に守られていることだ。
「失礼します。警護を務めさせていただく真志2等陸尉であります」
一応戦争している国ではあるが、礼節として敬礼をする。
少年は嘲笑ったような目を一瞬向けただけで一言もしゃべらなかった。
特に目立ったトラブルもなく一行は国会議事堂に到着し、真志はお役御免となった。
「おーいマサシ」
自分を呼ぶ声がすると思って後ろを振り返ってみると門のところでシェリーが手を振っていた。
その背中には隠れるように立っているのはパティであった。
二人とも現代人のような格好に着替えており、そこらの女の子とあまり大差なかった。
「ねえ、どこに行くの?」
「空港だよ」
きょとんとした表情を二人ともした。
慌てて説明する。
「え、えーと空飛ぶ乗り物にのれるとこだよ」
自分自身この説明絶対あってないなーと思いながら、アクセルを踏み羽田空港を目指した。
そのあと、空港に着いた後二人ははしゃぎまわりなだめるのにとても苦労した。
飛行機に乗り、岡山を目指した。
パティが酔い、トイレに駆け込んでしまうというトラブルこそあれ、特別警戒する事案もなかった。
待ち合わせ通り彼はいた。
あまり故郷として描かれない岡山をあえて書いてみました。