オペレーションPORT TOWN 中編
日本時間 11月19日 7時13分 シーミスト沖 自衛隊基地
「整列!」
「これから、トュレン王国奪還作戦を開始するために我々は『ひゅうが』に乗り込む」
現在、駐屯地では奪還作戦に向けた準備が慌ただしく行われていた。
その中の一つである、真志の小隊はブリーフィングの真っ最中であった。
「我々は特に重要な任務を任される」
隊員たちがぐっと強張るのを真志は見た。
「上陸した後、我々は港町を占領している帝国軍の砦を第一空挺団とともに攻略する」
「かなりの抵抗が予想される、だが....」
この最後の言葉で部下の士気の上がり方が違ってくるだろう。
あえて定番であるこのセリフを言った。
「君たちならできると俺は思っているよ」
その時、後ろから、冷たい視線が注がれた。
真志は、あ、と思った。
「ご、ごめん忘れていたよ」
そう、彼の後ろにいたのはシェリーであった。
「ホント忘れないでほしいわ、マサシ」
カンカンに怒っていた。
それから逃げるようになぜ彼女がいるのか説明を始めた。
「あーシェリーは帝国兵の戦術をよく知っているそうだから、助言をもらうため同行してもらう」
隊員たちが、おー、と歓声をあげた。
それを必死に押さえつけ、黙らせるのに数分間を要した。
隊員たちが興奮するのも無理はないだろう。
見た目は17歳くらいの美少女がいれば当然のことだろう。
だが、見た目で判断してはいけない。
「お前ら勘違いしているかもしれないが、彼女はもう25歳だぞ」
隊員たちがさらに歓声をあげた。
お前ら、少しは落ち着けよ。
この事実を伝えたのは失敗だったな。
「それでは、全員『ひゅうが』行きのヘリに乗り込むぞ、全員搭乗開始!」
イージス艦『みかづき』艦橋
「艦長、指定されたポイントに到着しました」
「攻撃開始まで、あと20分か」
時計を見ながら、龍雅が言った。
「全武器の発射準備をさせろ」
「了解」
りん、と鈴がなったような音を龍雅は聞いた。
「ん?」
慌てて見渡してみるが鈴などどこにもなかった。
「どうされました?」
中村3等海佐が聞いてくる。
「いや、なんでもないよ」
笑って誤魔化した。
トュレン王国
「おらおら、貴様らさっさと働かんか!」
帝国兵が威張り散らす。
「奴隷の貴様らが休む暇などないのだ!」
その時、子供が荷物を落としてしまう。
帝国兵が鞭を子供に無慈悲に打つ。
「なぁに落としてんだきさまぁ!?それは皇帝陛下に献上する品々だろうがぁ!」
鞭を打つたび、子供がうめく。
「もうやめてぇ!」
女性の声が帝国兵の動きを止めた。
「おやおや、ピルス夫人ではありませんか、こんなところでなにを?」
割って入ったのはこの国の有力貴族であるウィクルス家のピルス夫人であった。
「この子たちに罪はないわ、私がこの子の代わりにやるからもうやめてちょうだい」
まるで、挑発するかのような言葉を帝国兵が言った。
「あなたのような外で動いていない人ができるとは思えませんが?」
それにキレたピルスが言う。
「あなたたちを倒すものが必ず現れるわ!その時になって後悔しなさい!!」
その言葉を受けて帝国兵がニヤリと笑った。
「その言葉、皇帝陛下への侮辱と受取ろう。ここで斬り捨ててやる」
そう彼が挑発的な言動をしていたのは、最初からこの言葉を言わせるためだったのだ。
「死ねぇええええ」
帝国兵が叫ぶ。
ピルスは目を瞑った。
その時、爆音がした。
「な、なんだ?」
どうやら、海岸にある防御用の魔導兵器が爆散していた。
遠くに灰色の船が見えた。
「ま、まさか...」
噂で聞いたことがあった。
同盟国であるシーミストが帝国に襲われた時、異界から現れた軍勢により撃退されたと、、、、。
この国の運命が変わろうとしているのをピルスは感じた。