表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

残暑お見舞い申し上げます

作者: 羽崎さやり

まあね、もうお盆も終わったしね。だから、そろそろまあ、いいかな、って思ってさ。

…何が、って?

ああ、うん、まあその……ソウイウ話、ていうか?

ほら、お盆って「帰ってくる」って言うじゃない?で、ほら…送り火も済んだし?みたいな。

なんていうかさ、あの、見ちゃったんだけど、あんまり、相手が「いる」ときには言いたくなかったつーか。まあ……わかれ!

……ええと。で、どこから話すかな。

あのさ、アタシが、車で通勤してんのはもう知ってるよね。で、朝のラッシュの時間なんか、主幹道は混むから、いっぽん外れた裏道を使うのが好きなんだけどさ。

その裏道の通勤ルートの途中に、まあ、Tオート、ていう、中古車屋さんがあるのよ。…どこかって?あー…。ほら、アタシ、S新道、ていう地元民しか通らない裏道、使ってるじゃない。あそこの、ほら、S小学校のそばの、道の反対に農協があって……あ、いや。あんま詳しく説明しちゃうと悪いかな、まあ、……わかんなかったことにしといて。ね?

それで、その中古車屋さんだけど、まあやっぱりお盆期間中は休みだよね。アタシは接客業だから、お盆なんかフツーに出勤してたけどね!……ああ、話がそれた。

で、だ。その日もアタシはフツーに仕事して、午前勤務だったから15時くらいだったかな、ソコの前通ったのって。

そのTオートの隣にさ、たぶん、経営者さんの自宅なんだろね、一軒家があって、道路沿いに駐車スペースがとってあって、通りすがりに、軽四が二台、こっちにアタマ向けて駐まってるのが見えてたのね。

道路から見て奥っかわのクルマのまえで、オジサンがふたり、立ち話してたのが横目で見えて、別に信号もなにもないところだし、アタシもただフツーに通りすぎたんだけど、道路っかわに駐まってる軽四が視界にはいったとき、一瞬、あれ、て思ったんだよね。だけど、クルマは走ってるわけじゃない?あれ、とは思ったけどフツーに一瞬で通りすぎて、しばらく、自分がなんで「あれ?」て思ったのか、わかんなかった。…そりゃそうだ、運転中に、あんまりよけいな考えごとなんてする習慣はないし。

その20分後かな、家に帰ってさ、それでもまだ気にはなってたから、あのとき自分がなんで「あれ?」て思ったのか、あのとき通りすがりに見た光景を、じっくり思い出してみたんだけど。

……シャッターズアイ、て知ってる?見た光景をそのまま映像として記憶できる、ていう。アタシ、アレなんだよ。だから、一瞬しか見てなくても、ちゃんと思い出せたんだけどさ。

道路っかわの軽四の助手席に、人が乗ってたんだよ。この暑いのに締め切った車内でさ。…ああいや、そりゃエアコンかけてたらおかしくないよね、だから、そこを「あれ?」て思ったとしたら、これで「あれ?」の理由がわかってハイおしまい、だったんだけど、よーく考えて、気になったのがそこじゃないって気がついた。角度だよ。

なんの角度かって?………いや…、首の、さ。

ん、いや、角度ってより、位置、ていうほうがいいのかな…?

ほら、助手席にフツーに座ってるにしては、顔が、ね。なんか妙に、フロントガラスに近すぎた、つーか。あの位置まで顔を近づけようとしたら、こう…、座席から、前のめりにのりださないと無理なくらい、近かったんだよ、顔が、フロントガラスに。なのに、のりだしてるはずの首の角度が、まっすぐ…だったの。

そこまで気がついて、え?て思って、あれ、そういえば、アタシその首の持ち主の、首が乗っかってるはずの肩を、いや肩っつーか身体を、…見たっけ?て。

………うん、もうわかるよね。



その首、ボンネットから生えてたんだよ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして(・∀・)♪ 読ませていただきました* とても面白かったです\(^O^)/ これからも更新頑張ってください(*^-^*)
2012/08/22 12:58 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ